表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/173

3/地竜窟 -2 ハバラ湿原

 山道は待ち伏せに有利な地形だ。

 歴戦の勇であり、かなりの高精度で敵の気配を看破できるルインラインでさえ、数が多ければ取りこぼすこともあるし、長距離からの射撃には反応が遅れることもある。

 ルインラインひとりであればなんとでもなるのだろうが、守るべきはプルなのだ。

 そのため、ヘレジナがプルの護衛に回るのだが、先程のように数を頼みに来られると守り切るのは至難の業だ。

 だが、俺がいる。

 俺の[羅針盤]は、待ち伏せに対し、一方的に有利を取れる能力だ。

 相手がどこに隠れ、どのタイミングで奇襲を行うかがわかってしまえば、先手で遠当てを叩き込み、散り散りになった敵を各個撃破するだけでいい。

 パラキストリの襲撃は昼に夜にと続いたが、山道を下る頃には人数もまばらとなり、地竜窟のある湿地帯へと至るころには完全に途切れた。

 当然だろう。

 俺がパラキストリの指揮官でも、こんなところで待ち伏せはさせない。

 見通しの良い湿地帯に、身を隠す場所などないのだから。




 歩を進めるたび、じわりと滲み出る水に足を取られながら、道なき湿原を行く。

 革靴に染み込むぬるい水の感触が不快だった。

「──はあッ、は、はっ……」

「ほら、カタナ。しっかりしろ」

「流転の、……森とッ、はっ、どっちがマシだったか、……なッ」

「軽口が叩けるのであれば、まだ余裕だな。ほら、地竜窟はもう目の前だ」

 ヘレジナに手を引かれながら、なんとか顔を上げる。

 遥か彼方の丘陵と重なって見えるあの岩山が、地竜窟の入口なのだろう。

 もうすぐだ。

 もうすぐ辿り着く。

 旅路の終わりを喜ぶと共に、帰りも同じ道筋を辿らなければならないことに辟易していると、選択肢が現れた。



【白】そのまま歩く


【白】ヘレジナに礼を言う


【青】後ろを振り返る


【白】プルの様子を窺う



 プルの様子は気に掛かるが、青枠があるときは青枠を優先すべきだ。

 振り返ると、遠くの空に十数個ほどの点が穿たれていた。

「──なんだ、あれ」

 俺の言葉に反応し、全員が背後を振り返る。

「飛竜だ」

「飛竜……」

「まあ、空を飛ぶ騎竜のようなものだ。軍事用に調練されたものだろう」

「そんなことまでわかるのか」

「パラキストリの飛竜騎団と言えば、有名だからな」

「なるほど」

「弓術や魔術の射程外の高度から一方的に攻撃を行う。理に適った戦術だ。……もっとも、私たちに対しては、あまり意味はないのだが」

 そうだろうな。

 ルインラインが、大儀そうに、折れた神剣を抜き放つ。

「この距離は、ちとつらい──のうッ!」

 真一文字に放たれた不可視の剣閃が、数秒後にほとんどの飛竜を撃ち落とす。

「ふむ。二体ほどかすめたか」

 この数日で麻痺してたけど、とんでもないことしやがる。

「ヘレジナ、儂は腰が痛い。あと頼む」

「はい、師匠!」

 ヘレジナが銀琴を構え、奏でるように光矢を連射する。

 青空に二つの花火が上がり、一瞬ののち、爆発音が響いた。

「よし!」

 弟子は弟子でとんでもないんだよな、この師弟。

「あれで全部──じゃあ、さすがにないだろうな。他にもいると仮定して動いたほうがいい」

「その通りだ。だが、先遣隊であれ、本隊であれ、以降も無策で突っ込んでくる阿呆揃いではあるまい。次があるとしても、しばし時を空くだろう」

 神剣を鞘に収め、ルインラインが俺の腰を叩いた。

「──ほァだッ!」

 馬鹿力に思わず仰け反る。

「ほれ行くぞ、やれ行くぞ。地竜窟はすぐそこだ」

 叩かれた腰をさすりながら、溜め息を吐く。

 相変わらず元気なオッサンだな。

広告下の評価欄より【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると、執筆速度が上がります

どうか、筆者のモチベーション維持にご協力ください

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ