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三題噺もどき2

正当防衛?

作者: 狐彪

三題噺もどき―さんびゃくよん。

 


 じりじりと、肌を焼くような日差しが降り注ぐ。

 ここ最近は、毎日こんな日が続いている。

 まだ7月半ばでこれでは、8月半ばとかどうなってしまうんだろう。

 今はまだ梅雨明けもしていなくて、湿気もあったりするが、これが無くなってからの、熱だけとの闘いが少々怖くなってきたなぁ。

 ―まぁ、今は目の前のやつと戦っている最中なので、そんなことはどうでもいいんだが。

「……」

 あーでも、ほとんど終わったと言えば、終わったんだが。

 ―こちらの勝ちという形で。無事に、終わった。

 ま、嬉しくもなんともない勝ちではあるし、あっけないと言えばあっけない終わりだったので、少し消化不良気味だ。

「……」

 正直、もうここから立ち去ってもいいところだと思うんだけど。

 まだ、どうにも気は抜けないような気もするので、どうにか呼吸を抑えて、震えそうになる体を押さえている。

「……」

 ビルとビルの隙間。

 誰も通らないような、小さな隙間にある狭い道。

 猫ぐらいしかやってこないだろうと言う、人には知られていなさそうな道。

 ―人に知られたくないことをするには持って来いの道。

「……」

 まさか、アニメや漫画のような、こんな場所で、こんなことになるとは、自分でも思っていなかった。

 こんなことになると、誰が予想できた。

 全く、未来とか人生の先とか、こんなにも思うようにはいかないんだな。

 もっと平和に、何を起こすこともなく、どこにでもいるような一般人と同じような、これからを歩めると思っていたんだが。

 ―あれもこれも、コイツのせいなんだけど。ねぇ。

「……」

 小さな狭い道の上に、力なく寝転がっている1人。

 その上にまたがるようにして立つ1人。

「……」

 力なくとは言ったが、別段動いていないわけではない。

 息はしている、多分。

 見た限り、肺のあたりは上下に動いているし、口もまぁ開いているし、指先も痙攣しているようには見える。

 生きてはいる。多分。

 顔も近づけたくないし、触れたくもないので、確信は持てないが。これだけ視覚情報があればいいだろう、十分だ。

「……」

 確か、もう1人いたはずなんだが、どこだろう……。

 どこかいったかな。

 だとしたら、やっぱりさっさとここから離れた方がいいんだけど……。

 正当防衛とはいえ、この状況はまぁ、どう見てもこちらが不利だ。

 もう、コイツの事は放置してもよさそうだし、もう1人……。

「……ぁ」

 いたいた。

 真っ先にこっちを叩いたが、大丈夫だろうか。とっさだったから、多分加減も何もしてない。あいつに対しても加減はしていないが、これは意図的になので気にしない。

 顔を見たことがなかったと思うから、あれから新しく作ったお仲間なんだろう。巻き込みもいいところだなぁ、可愛そうに。

 こちらはちゃんと確認をしてあげよう。

 正直、自分自身も脈拍が上がっているので、正確さは欠くかもしれないが。

 最悪、口元に掌でもかざせばわかるだろう。

「……」

 通路の奥。

 丁度壁になっていたようで、そこにもたれかかり、うなだれるような形で静止している。

 なんだ……うん。申し訳なさはあるが、自業自得だろう。こんな奴とつるんでるから、こうなったんだから。

 ……というか、なんか。

「……いやだなぁ」

 昔の、あの日の。

 思いだしたくもない自分の姿を見せられているようで、嫌な気分になる。

 なんというか……気持ちの悪い感情が内に生まれてくる。

 忘れもしない。

 忘れたくても、忘れられない。

 あの日。

「……」

 あそこで倒れている、アイツの。楽しそうな顔。

 学校の図書館の奥であった出来事。

 何もできずに、ただ受け入れるままでしかいられなかったあの日。

 今目の前でうなだれているコイツのように、なった自分。

「……」

 思いだしたくもないことを思い出した。

 忘れられない記憶とは言え、ある程度蓋をできるようになってきたのに。

 嫌な顔に見つかって、こんな所まで引っ張られて。

 まったくもう……。

「……」

 話がしたいだけなら、別によかったのに。それを受け入れる余裕ぐらいは出来たのに。

 問答無用でつかんできて、手を出されてしまった以上、抵抗はしてしまうもんだろう。

 あーでも、話は聞くには聞けた……というか、一方的に叫ばれた。

「……」

 なんだったけ。

 あの日の、問題のせいで、アイツは、学校を追われたらしい、確か。自分自身も離れたから、詳しいことはしらない。忘れるようにしていたから興味もないからなぁ。

 それでまぁ、その逃げた先で。

 どうやら、私にしたことと同じような目に遭ったらしく。

 なんか……贖罪は済ませたとか何とか言っていた。贖罪の意味を知らんのだろうかコイツはと思いつつ、何を言っているのか分かんないなぁと言うのが正直なところだった。

「……よし」

 このお仲間さんも、息はしているようだ。

 先に手を上げたのは、この人らではあるが、この状況はやはり良くないだろう。

 さっさとどこかに行くとしよう。

 幸い服も汚れていないし。

 ……というか、買い物に行こうと思っていたのにもう。

 念の為電話を、と思ったが。

 別に良いか。

 アイツの方は完全に伸びているわけでもないだろうし。


「……かえろ」





 お題:忘れられない・図書館・贖罪

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