因縁の始まり
「やめろ!!返せ・・・・・・返せ!!」と叫ぶ声が部屋中に山彦のように響き渡って共鳴していた。ゼルスは自分の叫び声と共に夢から目覚めた。あれからゼルスは魔王になる為の修行を続けていた。今日もまたあの時の夢を見てうなされて辺りに響くほどの叫び声で夢から覚めていた。悪夢を見なくなる日がいつか来るのだろうか・・・・・・あの時のあいつらと対峙する事を考えながら修行を始める為に修行所に向かう事にした。
ゼルスは悪夢を見ていた場所から魔王になる為に魔王城にある修行所へと向かっていた。毎日毎日悪夢を見た後に進み道だった。ゼルスの心の中はあの時から変わらずぽっかり穴が開いたままでそんな状態でも歩き続けて修行所に辿り着いた。修行所の中に入るとそこにはある人間がどっしりと仁王立ちをして待ち受けていた。どっしりと仁王立ちしていた人間はサタスンと言って少し前からゼルスの教育係として魔王から指名された人間だった。サタスンはゼルスが修行所に来ているのが見えるとこちらに話しかけてきた。「よく来たな」とサタスンは一言いうとゼルスに修行の準備をするように指示をしてきた。ゼルスは気持ちを切り替えてサタスンの指示通りに修行の準備を始めた。修行の準備が終わるとサタスンはゼルスに攻撃を仕掛けてきた。ゼルスはサタスンの動きに合わせてサタスンの攻撃を受け止めていた。実践的な修行は厳しいものだったが悪夢を見た後ではその悪夢の事を一時的に忘れる事が出来てよかった。修行が始まって数時間後には疲労が溜まっていき体力の限界になるとサタスンとの修行が終わった。
厳しい修行が終わり修行所を後にしたゼルスは修行終わりにいつも行っている景色のいい場所へと向かう事にした。修行所からいつもの景色のいい場所に向かっていると魔王城にいた魔物達が挨拶をしてきた。ゼルスはその魔物達に挨拶をしながらも景色のいい場所に辿り着いた。辿り着いた景色のいい場所には先客がいてその景色がいい場所にあった木の陰に幼馴染のタリスタが座っていた。タリスタはゼルスが来ると笑顔になってこっちに向かって歩いてきた、タリスタはゼルスが魔王になった時に片腕になれる為の教育を先ほどまで受けた後にこの場所に来ていた。ゼルスとタリスタは厳しい修行が終わった後の時間をこの景色のいい場所で過ごしていて今日の修行は終わって時間があったので少し魔王城から出て近くにある人間の町に行く事にした。その為に一度ゼルスとタリスタは自分達の部屋へと戻りしっかりと準備をした後人間の姿になって魔王城の入口に向かって歩きだした。
ゼルス達が魔王城の入口に辿り着くと一緒に魔王城の入口から一番近くにある人間の町へと歩きだした。歩いていたゼルス達は周りからは魔族だという事がわからないようにしっかりと人間の姿に変わっていた。魔王城からしばらく歩いているとアースリーの町へとやって来た。アースリーの町は少しだけ大きく町の中に入ると賑わっていた。ゼルス達は町の中を歩きながら見回っているとある一角でどこかに雇われている女性が雇用主から責められていた。ゼルスがその光景を見た時、何故か七年前から夢に出てくるあの出来事を思ってしまった。ゼルスはあの出来事のトラウマから体が震えて胸が苦しく気分が悪くなっていった。その様子を静かに見ていたタリスタがゼルスの苦しみを思い町で楽しむ事を止めて魔王城へと帰る事にした。
魔王所に向かって来る謎の二人がいた。魔王城の見張りが仕事をしていると遠くから二人組の人間が向かってきていた。見張りは遠くから近づいてくる二人組に最大限の警戒をしていた。謎の二人組がさらに門の近くにやってくると見張りはさらに警戒をしていたが謎の二人はパレット様の名前を出してきた。見張りは謎の二人組がパレット様の名前を出した事に驚きしばらく固まってしまった。謎の二人は見張りの戸惑いを感じつつも洞窟の情報をゼルスに伝えるように見張りに言ってきて紙を渡してきた。見張りは紙を受け取るとゼルスに報告をしにいった。謎の二人は魔王城を後にしていった。
ゼルスはアースリーの町で気分が悪くなって魔王城に戻って来てからしばらく部屋でゆっくりと過ごしていた。あれからしばらく穏やかな時間だった。その穏やかな時間が終わりを告げる事が起こった。部屋に近づく足音が聞こえてきた。そして部屋の扉が開くとタリスタが慌てながら入ってきた。入ってきたタリスタの手には紙が握られていた。タリスタは手に握っていた紙をゼルスに渡してきて謎の二人が見張りにこの紙を渡してきた事も伝えてきた。ゼルスは手渡された手紙に書いてある文書を見た。そこには七年間ずっと探していた情報でパレットの情報が書かれていた。ゼルスはこの情報に書かれている場所に一刻も早く向かいたいと思ってゼルス達はその場所へと急ぐ事にした。
ゼルス達は準備をする時間すら勿体ないとそのまま魔王城の入口まで走り続けた。そして魔王城の入口に来るとそのままの勢いで手渡された紙に書かれていた場所へと向かっていた。その場所は魔王城からかなり遠く何日もかかる場所だったがゼルスにはそんな事は全く関係がなかった。『会いたい』その一つの思いの方が強かった。ゼルス達はもう少しでその場所に着く所までやって来ていた。エリザレス山脈を越えた後に目的の場所であるメイロー樹海までやって来た。あの情報によるとパレットはこの樹海の中の洞窟にいるはずだと思っていた。メイロー樹海に出ている霧の中をゼルス達はパレットのいる洞窟を探し続けた。しばらく探し続けてようやくその洞窟らしいものを見つけ出した。ゼルス達は洞窟の中に入り奥へと進んでいった。しかし洞窟の中にいるはずのパレットの姿が見当たらなかった。つい最近までいた痕跡はあるのでゼルス達が来る事をあの集団が察知して移動させたようだった。ようやく会えるそう思っていたのに悔しかった。ゼルス達は洞窟の中を探し何か痕跡がないか探したが見つからずに戻る事にした。
パレットと会えなかったゼルス達はパレットがいたはずのメイロー樹海の洞窟から魔王城の近くまで帰って来ていた。もうすぐ魔王城だという所で魔王城から出ていく人影を見かけた。ゼルス達がその人影を見るとサタスンでゼルス達はサタスンに近づいた。するとサタスンはゼルス達に気づき話しかけてきた。サタスンはある任務に行くので付いてくるように言ってきた。サタスンが行く任務とは魔物が何者かによって操られているようなので調査するらしかった。ゼルス達はサタスンと一緒に調査に行く事に決めて操られた魔物が向かう場所へと歩きだした。その場所はここから北にあるという神殿で普通は魔物が寄り付かない場所だった。サタスンと一緒に歩きだして二日ほど歩いて神殿へと辿り着いた。
神殿に辿り着いた三人は少し様子を見る事にした。辿り着いた神殿は遠目から見るとそこに神殿があるという事がわからないようになっていた。しばらくすると魔物の群れが神殿に向かっていた。サタスンは遠目から神殿に向かう魔物の状況を見ているとサタスンが見た魔物には普通の状況では無い事だけは分かった。サタスンが見た魔物の目は赤く変色していた。ゼルス達三人はその場で考えた。魔物を操っている人間はどんな方法で魔物を操っているのか?そのヒントがあの神殿にあると思い神殿の内部へと入っていった。
三人は操られている魔物の後を追って神殿の内部へと入って行くと中はとても複雑な構造になっていた。ゼルスはその複雑な構造をしている神殿の内部を調べながら奥へと進んで行った。奥へと進んでいると下に大きく開けた場所が見えてきた。上からその場所を覗いてみるとそこには操られた魔物とそれを操っている集団がいた。魔物の集団とあの時パレットを連れて行ったフードを被った集団がたくさんいてその集団が何かを叫んでいた。耳を澄まして聞いてみると混沌と絶望を世界にもたらせと何回も叫んでいた。その叫びに魔物の集団も同調していてフードを被った集団が叫んでいたその叫び声はその場所を覆い包んでいた。三人はその叫び声が鳴り響く中で集団の中に突っ込んでいった。
三人が集団に突っ込んでいくと集団は突然現れた三人に一瞬驚きを示していたがフードを被った集団は操っている魔物の集団に対して突っ込んできた三人を攻撃するように指示を出していた。操られた魔物の集団は三人に攻撃を仕掛けてきた。魔物の集団は普段以上の力を出していて強かった。最初は魔物の集団とゼルス達は攻撃の応酬を繰り広げていたが時間が経つにつれてゼルス達の力だけでは勝てないほどで勝てる可能性も低くなっていった。ゼルス達が魔物の集団と戦っているうちにフードを被った集団に意識がいくことはなく気づいたらいつの間にかフードを被った集団は姿を消していた。魔物の攻撃を躱しながらも追い詰められた三人は魔物の攻撃を少しずつではあるが受けて行く事が多くなった。この状況がまずいと思ったサタスンはゼルスとタリスタに逃げるように指示をしたがゼルスとタリスタはその指示には従う事が出来ずに拒否をし続けた。それもそのはずでパレットが連れて去られたあの時にいたフードを被った集団が目の前にいたのだからパレットの場所の情報を得る為に逃げるわけにはいかなかった。サタスンはゼルス達が拒否し続ける様子を見て何かの術の詠唱始めた。ゼルスとタリスタは魔物との戦いを続けてサタスンは術の詠唱をしながら魔物と戦い続けた。しばらくしてサタスンが詠唱していた術の詠唱が終わったと同時にサタスンはゼルス達に向けて「お前達だけでも逃げのびろ」と叫び術の効果が発動してゼルスとタリスタは神殿の外まで飛ばされた。神殿の外に飛ばされたゼルス達はサタスンが戻ってくるのをしばらく待ち続けたがサタスンは戻って来なかった。
ゼルスとタリスタがいなくなったアルカット神殿の内部ではサタスンが魔物とまだ戦っていた。複数の魔物達とサタスンの戦いは明らかにサタスンが不利な状況だったがサタスンは体力が続く限り魔物と戦っていた。ゼルス達が逃げ切れる時間を少しでも作ろうとして・・・・・・三人でも不利だった戦いがより圧倒的不利な状況で戦うサタスンも数の多さには勝てなかった。体力が尽きて魔物達の攻撃を受け続けて意識がなくなってしまった。動けなくなったサタスンを魔物達は神殿にある隠し部屋へと運んでいった。
ゼルス達はしばらくアルカット神殿の外でサタスンが戻って来るのを待っていたがサタスンが戻って来ることはなかった。ゼルス達はその状況にサタスンの死を感じ取って神殿の片隅に墓標を建てた。時間はすっかり陽が落ちようとしていた。陽が落ちてきたその色とゼルスの体から溢れてきた漆黒のオーラが混じり合っていたが徐々にゼルスのオーラが漆黒から暗黒へと変わっていく。一緒にいたタリスタはそのオーラの変化に気づいたがその時暗黒のオーラが見えたのは一瞬だった。ゼルス達はまだ悲しんでいるわけにはいかない理由があって今の魔王にサタスンの事を報告しなければならなかった。その為に急いで魔王城に帰る事にした。暗黒のオーラが見えなくなった背中を見ていたタリスタはゼルスの体から出るオーラの強さから少し離れてついてくる事しか出来なかった。
ゼルス達はアルカット神殿から魔王城へと帰ってきた。魔王城へと帰ってきたゼルス達は今の魔王の元へと向かい辿り着くと今の魔王にサタスンの事を報告した。魔王はただ一言「わかった」と言うとゼルスをさがらせた。ゼルスはその場所から自分の部屋に戻ろうとすると微かにすすり泣く声が聞こえていた。部屋に戻ったゼルスはタリスタと共にサタスンの事を探るように他の者に伝えた。もういないとわかっていても心の中ではまだ信じる事が出来なかった。




