夏の色
この作品はとても短い作品です。好きな読み方で読んでみてください。
夏がもう近くまで来ていると思うと、わくわくが止まらない。胸が弾み、心はどんどん遠くの方に行ってしまう。魔力があるのか空はシャッキとした青、雲はアイスクリームのように美味しそうだ。
私は1人、電車に揺られて夏を味わっている。今まで来たこともなかった場所を平日に訪れている。何となく背徳感があるがそれが嬉しい。路線はただの一直線、周りの客はスマホしか見ていない。でも私は窓を観る。ハッキリとした色のコントラストは私を何処かに連れて行ってくれる。今日学校は午後から休みだった。現地集合の演劇鑑賞で普段は行かないような場所に家族に連れてきてもらうか自分で来るように言われていたのだ。演劇はまあまあ面白かったと思う。アイドルも出ると聞いていたから、どうなるのかと心配したけどそんなことは無かった。そんなことを考えていると、景色は段々深い緑の山と、光が照って反射している水田を通り過ぎてしまった。やがて景色は、ビルが立ち並び灰色の景色と化した。電車のアナウンスもデパートの宣伝に変わった。
ここで私は乗り換えをした。観光が目的じゃないからしょうがない。来たことのある路線に変わった。乗り換えると、どっと人が減った。私と同じ高校生は街の子が多いみたいだ。電車はまた、緑が見えるようになった。でも、さっき程じゃない。山や水田に囲まれた美しい景色は完全に無くなり、少し街から離れた、ただの郊外になった。建物の置いている範囲がぎゅっと狭くなって、小さな土地に大きな建物が無数に湧いている。そんな中でも空は変わらない。でも少し青の色が薄くなった。ぼやけて雲もただそこにいるだけそんな感じだ。目的地の駅はもう着く。また煩悩に帰る。
読んでくださってありがとうございました。
電車は乗っていると色んなことが分かってとても楽しいですよね。