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腹時計が奏でるメロディ

作者: ウォーカー

腹時計。

人間が空腹を感じた時に腹が鳴って知らせる現象。

正常に機能するには、体調面などの条件が整っていることが必要。

近年の研究で遺伝性のものである可能性が明らかになった。

一説によると、腹時計が知らせるのは空腹だけではないという。



 その男の腹時計は特別だった。

規則正しい生活をしていれば、

毎日決まった時間に腹時計が食事の時間を知らせてくれる。

時間が多少ずれたとしても、絶対に聞き逃すことはない。

何故なら、その男の腹時計は、

目覚まし時計のベルのような音がするから。

ジリリリリリ。

今日もその男の腹の中で腹時計が鳴り響いた。


 腹時計が目覚まし時計のベルのような音として聞こえる。

決してその男の頭がおかしいわけではない。

少なくとも、その男にとっては事実だった。

そのことに気がついたのは、その男が中学生になった頃で、

心配になったその男は、親や友人などに相談したものだった。

「ねぇ、ちょっと聞きたいんだけど、

 お腹が空くと、目覚まし時計のベルみたいな音がしない?

 ちょうど今、腹時計が鳴ってるところなんだけど。」

その男の質問は、しかし誰にも伝わらず、

友人たちからは怪訝な顔をされるだけだった。

「目覚まし時計?どういうこと?

 何も聞こえないけど。」

「ポケットに入れた時計のアラームが鳴っているってことかい?」

「いや、腹時計のことなんだけど・・・」

「腹時計って、お腹が減るとぐぅと鳴るあれ?

 君のお腹も今まさに鳴ってるようだけど、

 それが目覚まし時計のベルの音って、どういうこと?」

「い、いや。やっぱりいいや。

 なんでもないよ。」

どうやら他人には、その男の腹時計の音は、

ただの腹の音としか聞こえていないらしい。

そうだとすれば、これ以上は何を話しても無駄だろう。

妙なことを話して、友人たちに不審に思われたくない。

そうしてその男は、

腹時計が目覚まし時計のベルのような音に聞こえることを、

誰にも相談すること無く、胸の内にしまい込むようになっていった。

子供の頃はそれでもよかったのだが、

困ったことに腹時計の音は時を経るに伴って少しずつ大きくなっていった。

中学生の頃は、遠くで微かに音が聞こえる程度。

それが高校生になる頃には、

寝ていても目が覚める程度の大きな音になっていた。

夜、寝ている時に空腹になると、

目覚まし時計のベルのような腹時計の音が聞こえてくる。

とても眠っていられるものではなく、睡眠不足の元になっていた。

先日、その男はとうとう我慢できず医者に相談してみた。

しかし、検査の結果、

体にも精神にも異常は見つからず原因はわからなかった。

腹時計が正確なのは健康な証拠。

おそらく耳鳴りの一種で、神経質になっているだけだろう。

医者からはそう言われてしまった。

病気ではないとすると、この妙な腹時計の音の原因は何だろう。

困り果てたその男は親戚に相談し、先祖にまつわる話を聞くことになった。


実は、その男の父方は先祖代々、

超能力の持ち主だったと伝えられている。

祖父は、呼吸を長時間にわたって止めることができる水泳の名人だった。

曽祖父そうそふは、自分の死期をも直前に予言した預言者だった。

高祖父こうそふは、薬草などの毒を見分けることができる薬師だった。

父親は、目立った超能力は持っていないようだが、

子供の頃から病気一つせず、こうして家族を養って息子を育て上げた。


そんな偉人揃いの先祖たち。

一方、その男はというと、取り立てて特技もなく、

超能力らしいものといえば、

腹時計が目覚まし時計のベルのように聞こえる、ということだけ。

そんな超能力は何の役にも立たず、

その男は立身出世からは縁遠い、その日暮らしの生活を送っていた。

「腹時計がちょっと正確で、

 目覚まし時計のベルのように聞こえるからって、

 だから何だっていうんだ。

 そんな能力、どう使えばいいのかわからないよ。」

腹時計のことについて相談したはずだったが、

わかったのは、どうやらそれが超能力かもしれないということだけ。

代わりに無用な劣等感を掻き立てられることになって、

その男は頭を抱えたのだった。


 腹時計の音が目覚まし時計のベルの音のように聞こえる。

どうやらそれは超能力の一種かもしれない。

そんなことがわかっても、

どう対応すればいいのかもわからず、

その男は腹時計の音に悩まされる生活を続けていた。

何かの拍子に腹時計の音が正常に戻ってくれないか。

そんな希望も虚しく、腹時計の音はむしろどんどん大きくなっていった。

その副産物と言うべきか、腹時計の音が繊細に聞き取れるようにもなった。

以前は、ボワッと籠もったような音だったのが、

今はベルの金属音までもが繊細に聞き取れる。

しかも、ありがたくないことに、

空腹ではない時間にも何かの音が腹から聞こえることがあった。

何かを叩くような音だったり、あるいは弾くような音だったり。

やはりその腹時計の音も他人には聞こえず、

その男にだけ聞こえているようだった。

そうしてその男は、腹の中から聞こえる腹時計の音にますます悩まされていった。


 ある日の夜。

その男は布団に横になりながら、

自身の体に起こっている変化についておぼろげに考えていた。

「目覚まし時計のベルだけじゃなくて、

 他の音まで聞こえてくるようになるだなんて、

 僕の体はどうなってるんだろう。

 医者に相談しても異常はないって言われるし。」

ごろっと寝返りを打って、さらに考える。

「目覚まし時計のベルの音は昔からだとして、

 他の音は最近になってから聞こえるようになったんだよな。

 きっかけは何だったかな。

 何かを叩くような音は、友達たちと海に行った時かな。

 あの時、みんなで遠泳をしようってことになって、

 遠くまで行き過ぎて溺れかけたんだったかな。

 幸い、大事には至らなかったんだけど、

 それからたまに腹から叩くような音が聞こえるようになった気がする。

 弾くような音の方は、あの時かな。

 家に古い食材が余ってて、それを使って料理をして腹を下したんだ。

 あの前後から、弾くような音が聞こえるようになったと思う。

 こう考えてみると、何か普段と違うことがあった時に、

 腹から違う音が聞こえるようになったような気がする。」

記憶を頼りにきっかけらしいものには行き着くのだが、

それが腹時計の音に繋がる理由がわからない。

結論を出せずにもやもやと考えていると、

やがて腹時計が目覚まし時計のベルのような音を鳴り響かせはじめたのだった。


 それからその男は、明日に備えて眠ろうと布団の中で悪戦苦闘していた。

早く眠りたいのに、先ほどから腹時計が鳴り響いて邪魔をしてくる。

このままでは、やかましくて眠れそうもない。

その男は観念して布団から起き上がると、食料を求めて台所へ向かった。

台所の電球を点けて、戸棚や冷蔵庫の中を覗き込む。

しかしそこには醤油や塩などの調味料が残るだけで、

飢えを満たす食料になりそうなものは見当たらなかった。

「しまった。

 買い置きの食べ物はもう尽きていたか。

 このままじゃ腹時計がうるさくて眠れないな。

 ・・・しかたがない。

 コンビニにでも行って、何か食べ物を買ってこよう。」

その男は寝巻きからジャージに着替えて、

玄関でスニーカーに足を通すと家の外へ出た。

生憎、その男の家の近所には、

今のような夜中に営業している店はほとんどなく、

最寄りのコンビニエンスストアまで自転車でも20分ほどかかる距離がある。

その男は、深夜に食べ物を食べる不健康さへの、せめてもの罪滅ぼしにと、

ジョギングがてら走って行くことにした。

人々が寝静まった深夜の住宅地に、

その男が走る吐息と足音だけが響いている。

そうして空腹の状態で走っていると、

なんだか空腹が和らいで、ちょっとした楽しさすら感じられた。

気分が大きくなって、足を伸ばしたい欲求に駆られる。

「せっかくこうして外に出たんだから、

 ちょっと寄り道してジョギングしていこうか。」

そうしてその男は、

コンビニエンスストアへ向かう歩道を外れて、

山へ向かう車道の方へ走っていった。


 深夜の曲がりくねった山の車道を、その男が一人走っている。

車道沿いには民家もなく、通りがかる車や人の気配もない。

街灯の明かりだけが頼り、山の中で一人っきり。

この先に進んでも民家は無く、同じような山道が続いているのだが、

さらにその先には展望スペースがあって、

そこはその男が考え事をするのによく使う場所だった。

ジョギングがてら、そこまで走って行って帰ってこよう。

そう思ったのだが。

山の車道に入っていくらもしない内に、その男は体に異変を感じた。

腹から何か音が聞こえる気がする。

元より空腹で腹時計は鳴りっぱなしなのだが、

それとは別に何かの音が聞こえる気がするのだった。

「なんだろう。

 いつもの腹時計とは違う何かが聞こえる気がする。」

腹から聞こえる音が気になって、その男はジョギングする足を止めた。

足音を止めて、呼吸を整えて耳を澄ます。

その音は、最初は遠く小さく微かに、

それが段々と近く大きく聞こえるようになってきた。

ゴーン、ゴーン。

聞こえているのは、大きな鐘の音。

鐘楼しょうろうに吊るされているような大きな鐘の音が、

腹の底から聞こえてくるのだった。

耳を澄ませていたその男は、聞いたことがない腹時計の音に首を傾げた。

「この鐘の音みたいな音は何だろう。

 こんな音は今までに聞こえたことがないぞ。

 もしかして、腹時計とは無関係か?

 いや、この辺りに教会やなんかがあるなんて聞いたこともない。

 あったとしても、こんな深夜に鐘を鳴らすわけがない。

 じゃあやっぱりこれは僕の腹時計の音か。」

今になって腹時計が急に鐘の音を鳴らし始めたのはなぜか。

考えても答えは出ない。

そうしている間にも鐘の音は大きくなって、

もはや轟音といえる状態に、たまらずその男は耳を塞いだ。

しかしもちろん、耳を塞いでも腹時計の音は変わらない。

「だめだ!

 これじゃジョギングなんて続けられない。

 寝るのも無理だし、病院に行こう。

 この近所の病院はどこだったかな。」

しかたがなくその男は、

山の展望スペースまでのジョギングを諦めて、

上り始めたばかりの山の車道を下っていった。


 それからその男は、鳴り響く腹時計の音に耐えて30分ほど走って、

最寄りの救急病院に駆け込んだ。

その病院は深夜でも診療していて、その男が事情を話すと快く応じてくれた。

待合室で待つことしばらく、診察室へと通された。

「今日はどうされました。」

そう尋ねる医者に、事情を一から説明する。

子供の頃から腹時計の音が目覚まし時計のベルのように聞こえたこと。

最近になって、違う音も聞こえるようになったこと。

今夜は空腹に伴って腹時計の音に苛まれ、

食料を買い出しに行く途中で、

今までに聞いたことがない鐘の音がするようになったこと。

などなど。

そのようなことを、その男が椅子に座って医者に説明していると、

ふと、その男の喋る口が止まった。

胸が痛い。

目の前が暗くなっていく。

体が倒れそうになって、座っていられない。

そうしてその男は、椅子から転げ落ちるように倒れ込んでしまった。

それを受け止めた医者が、大声で何かを言っている。

しかし、何を言っているのかは聞き取れない。

薄れゆく意識の中で、その男の耳には、

割れんばかりの鐘の音が鳴り響いていた。


 次に目が覚めた時、その男は病院のベッドの上にいた。

すぐに看護婦がやってきて、事情を説明してくれた。

あの夜、その男は病院で診察中に、

具合が悪くなって倒れてしまったのだそうだ。

急性の心疾患、つまりは心臓の問題で、

治療が遅れたら命に関わるものだった。

偶然にも、その男が自分から病院に出向いていた最中だったので、

倒れてすぐに的確な治療が受けられ、大事には至らなかった。

そう説明する医者は、信じられないという顔をしていた。

「症状が出たのが病院内だったのが幸いしました。

 聞くところによれば、あなたは耳鳴りで来院されていたのですよね。

 耳鳴りと心疾患とは今回はあまり関係がないと思うのですが、

 心疾患の症状が現れる直前に病院に来ていただなんて、

 そんなこともあるものなんですね。」

つまり、医者の話によれば、

その男は耳鳴りの音に耐えかねて病院を訪れて、

その時に偶然、無関係の心疾患で倒れてしまった。

倒れた時にいたのが病院だったので、すぐに治療を受けられて助かったという。

確かに、その話だけを聞けば偶然の出来事に思える。

しかしその男には、腹時計の音がただの耳鳴りとは思えない。

そう確信する、ある心当たりがあった。


自分が、心疾患の症状が現れる直前に病院に来た理由。

それは腹時計のおかげ。

腹時計がいつもとは違う鐘の音を鳴り響かせたからだった。

きっと、腹時計が体の異変を察知して知らせてくれたのだ。

そうでなければ、自分は人のいない深夜の山の車道で体調を崩し、

一人倒れていたことだろう。

そうなれば、治療をすぐに受けることもできず、

今頃はどうなっていたのかもわからない。

つまり、自分の腹時計は、

命の危険を察知して知らせる超能力の一種なのではないか。

そう考えると全てのことが納得できる。

思い返せば、自分の腹時計が鳴っていたのは空腹の時、

それから、海で溺れかけた時、

さらには、古くなった食べ物を食べて腹を壊した時。

どれも命の危険があった時と言えなくもない。

空腹は過ぎれば餓死の危険があるし、

海で溺れれば溺死する危険があるし、

食中毒も場合によっては死ぬ危険があるだろう。

自分の超能力は、

命の危険が迫っている時に腹時計の音で知らせる能力だったのだ。

腹時計というものは遺伝性のものらしいので、

自分も先祖から同じ超能力を受け継いでいたとすれば、

先祖たちの超能力にも説明がつく。

高祖父が、薬草などの毒を見分けていたのは、

きっと実際に少量を口にして、

腹時計が鳴れば毒、そうでなければ無害だと判断していたのだろう。

曽祖父が、自分の死期を直前に言い当てたのは、

きっと腹時計が鳴って死期を知らせていたのだろう。

祖父が、呼吸を長時間にわたって止めることができたのは、

きっと腹時計が鳴るまでは死なないとわかって計っていたからだろう。

父親が病気一つしなかったのは、

きっと腹時計によって体調の変化を感じ取っていたからだろう。

一見して別々のものと思われていた超能力は、実は全て同じものだった。

先祖たちは、命の危険を知らせる腹時計という超能力を使って、

それぞれ違う道で成果をあげていたに違いない。

そう結論付けることができるのだった。


超能力の正体がわかったからといって何があるわけでもない。

しかし、その男は無能力などではなく、

れっきとした超能力を先祖から受け継いでいた。

成果が出せていないのは、その超能力を上手く使えていなかっただけ。

そう考えれば、焦らず落ち着こうという気分にもなれる。

要は能力の使い道を考えればいい。

むしろ、超能力の正体に気が付いている分、

先祖たちよりも有利であるかもしれない。

命の危険を察知して音を鳴らして知らせる腹時計の超能力。

これを活かして、何かできることはないだろうか。

説明を続ける医者の話を聞き流しながら、

その男は病院のベッドの上でそんなことを考えていた。


 それからしばらくして、その男は病院から無事に退院することができた。

家に帰ると早速、自分の超能力について調べることにした。

腹時計は超能力だった。

腹時計は、命の危険があるときに音を鳴らせてしらせてくれる。

その音は、目覚まし時計のベルの音だったり、鐘の音だったり、

何かを叩いたり弾いたりする音だったりと様々。

そして今、ちょうど空腹で腹時計が鳴り出したところだった。

「そういえば腹が減ったな。

 ・・・待てよ。

 今、この状態でもう一つ命の危険に繋がることが起こったら、

 腹時計の音はどうなるんだろう。

試しに息を止めて窒息してみる。

すると、目覚まし時計のベルの音と同時に、

何かを叩くような音が聞こえてきたのだった。

「なるほど。

 空腹は目覚まし時計のベルの音で、窒息は太鼓か何かの音なんだな。

 こうしてみると、腹時計の音って楽器みたいだ。

 いや、僕は聞こえてくる音を聞くだけだから、

 腹時計は音楽演奏機とでもいうべきか。

 一つの音だとうるさいだけだけど、

 いくつもの音が合わさると、楽しく感じるような気もするな。

 これが音楽ってやつか。」

以前は腹時計の音の詳しい違いは聞き分けられなかったが、

ここのところ超能力が強くなったのか、

今では鮮明に聞き分けられるようになっていた。

そうしてその男は、

命の危険の種類とそれに対応する腹時計の音について、

詳細に調べて記録していった。

その結果、命の危険が複数あればあるだけ、

それを知らせる腹時計の音も同時にたくさん鳴るのがわかった。

命の危険の種類が多ければ多いほど、腹時計の音の種類も多く、

命の危険が大きく長ければ、腹時計の音も大きく長くなる。

そうしてその男は、

自身の体に意図的に命の危険をもたらすことで、

腹時計に音楽を奏でさせることができないか、いろいろな方法を試していった。



 それからその男は、いくつもの試行錯誤を重ね、

腹時計の超能力を使って音楽を奏でさせることを覚えた。

命の危険の種類をいくつも用意すると、腹時計は大合奏をはじめ、

ある時は優雅な交響曲を、またある時は悲壮な交響曲を奏でてみせた。

しかし、腹時計の音はその男自身にしか聞こえない。

これではどんなに素晴らしい曲が奏でられても、

他人に聞いてもらうことはできない。

そこでその男は、音楽を勉強することにした。

音楽を勉強し、聞こえてくる腹時計が奏でる交響曲を楽譜に起こして発表した。

すると、腹時計の交響曲は評判を得て、世に知れ渡っていった。

好評価が好評価を呼び、

とうとうその男の腹時計が奏でる交響曲を、

本物の交響楽団に演奏してもらう機会にも恵まれた。

そうしてその男は、交響曲の作曲家となった。

その人気は大したもので、

今もまた、こうして取材にやってきた記者にマイクを向けられて、

インタビューの受け答えをしているところだった。

マイクを向けた記者がその男に笑顔で質問する。

「あなたが作曲した交響曲は、

 まるでこの世の人間が奏でたとは思えないような、

 謎めいた魅力のある曲だと評判です。

 そこで質問なのですが、

 あなたにとっていい作品を書く秘訣は何でしょうか。」

そんな形式通りの何気ない質問に、その男はこう答えるのだった。

「私にとっての、いい作品を書く秘訣。

 それは、命を懸けることです。

 私は命の危険があればあるほど、いい作品が書けるのです。

 秘訣は、命を懸けること。」

その言葉の通り、その男は今日も命懸けで作品を書くのであった。



終わり。


 もしも自分が死ぬのを事前に知ることができたら、

そのようなことをテーマにこの話を書きました。


飢餓は、人がもっとも頻繁に感じる死の恐怖だと思います。

現代では腹時計と聞くとひょうきんなイメージを連想しますが、

かつて、その日の食料にも困る生活をしていた人たちにとっては、

腹時計の音はまるで死神の足音のような、

恐ろしいものだったのかもしれません。

毎日、数時間毎に死の恐怖がやってくるなんて、

生きているだけでもつらく恐ろしいことだっただろうと思います。


お読み頂きありがとうございました。


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