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調査報告

 ────その翌日。

夜遅くまで事後処理に追われていた私は、数時間の仮眠を得て、仕事に戻った。

通常業務をこなしつつ、貴族から寄せられた嘆願書に目を通す。

昨日の今日だと言うのに、『カラミタ王国との戦争を再開すべきだ』という内容の嘆願書が多くあった。


 貴族たちはカンカンのようね。

まあ、あれだけのことがあったのだから、激怒するのも無理ないけど……。


 嘆願書の束を見て、私は『はぁ……』と深い溜め息をつく。

────と、ここで部屋の扉がノックされた。


「どうぞ」


「失礼します」


 入室の許可を出せば、扉の向こうから一人の男性が現れる。

宮廷魔導師専用のローブを羽織っていることから、彼が調査に派遣された魔導師だと推測することが出来た。


 恐らく、私に調査結果を報告しに来たのね。まあ、調査結果なんて聞くまでもないだろうけど……。


 私は臣下の礼を執る彼に一つ頷き、こちらに来るよう促す。

宮廷魔導師の彼はデスクの前まで来ると、何とも言えない表情を浮かべた。


「調査結果を報告しに来たのでしょう?前置きも挨拶も不要だから、結果だけ報告してちょうだい」


「畏まりました。では、結果だけ報告させて頂きます」


 物分りのいい彼は私の言葉に頷くと、手に持つ資料を見えやすいよう魔法で浮かせた。

その資料には写真と一緒に様々な記述が並べられている。


「結論から言うと、リナ王女殿下とカーティス王子殿下の不貞行為は事実でした。どうやら、お二人は結婚式の前日に都内のホテルに足を運んでいたようで……そのホテルのスイートルームから、お二人のものと思しき毛髪と体液が見つかりました」


「結婚式の前日に妹とホテルって……随分とお盛んなことで」


 魔導師が語った衝撃の事実に、私は思わず皮肉をこぼす。

つい先程まで怒りを通り越して呆れていたものの、ここに来てようやく怒りが湧いてきた。


 私が必死に結婚式の最終調整をしている間に、カーティス様は妹君とホテルですか……へぇ?私も随分と舐められたものね。やはり、人質だからと甘やかしたのが間違いだったわ。

少しでもカーティス様を不憫に思った過去の自分を殴りたい。


「一応カラミタ王国でも調査をしてみたのですが、王宮内でそういう事(・・・・・)をしていたのか、証言や証拠はそこまで得られませんでした。ただお二人が贔屓にしていたお店を一つ見つけまして……そこで色々とお話を聞くことが出来ました。お聞きになりますか?」


「いえ、それは結構よ。それより、陛下はなんと?」


「近日中にカラミタ王国の王家と話し合いを開き、事実確認と今後のことについて決めるそうです。この話し合いにはニーナ様も参加して欲しいと仰っていました」


 キャンベル王家との話し合い、か……。まあ、当事者である私が参加しない訳にはいかないわよね。それに自分の知らないところで勝手に話を進められるのは嫌だし……。


「分かったわ。後で陛下に『是非話し合いに参加させて下さい』と伝えておいてくれる?」


「畏まりました」


 宮廷魔導師の彼は臣下の礼を執って応じると、『では、私はこれで』と言って部屋を退室していく。

そんな彼の背中を見送り、私は宙に浮いたままの資料を手繰り寄せた。

調査の詳細が記された資料を眺めながら、何度目か分からない溜め息を零す。


 キャンベル王家との話し合い、何事もなく終われば良いけど……。

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