衝撃の事実
「結婚式に行ってやれなくて、すまなかったな。私が出席していれば、あそこまで騒ぎも大きくならなかっただろうに……」
開口一番に告げられたのは、父からの謝罪だった。
申し訳なさそうな表情を浮かべる父からは、罪悪感を感じる。
父はもう既に結婚式での騒動をある程度把握しているようだった。
この様子だと、私がわざわざ報告しに来る必要は、なかったみたいね。
「お父様が謝罪する必要はありませんわ。戦後処理で忙しかったのは、よく分かっていますから。あまり気に病まないでください」
「ああ……そう言って貰えると助かる」
僅かに表情を和らげる父は、ホッとしたように胸を撫で下ろした────かと思えば、直ぐさま表情を引き締める。
そして、一回咳払いすると、改めて口を開いた。
「まず、結婚式での騒動の件だが、既に家臣たちから事のあらましを聞いているため、報告は不要だ。リナ王女とカーティス王子との関係については現在調査中。調査員に魔導師を何人か派遣しているから、明日には結果が出るだろう」
「そうですか。お父様が調査団を……調査のところまで手が回らなかったので助かりましたわ」
「これくらい、気にするな。それより、リナ王女の不正入国とカラミタ王国の国王夫妻が結婚式を欠席した理由についてだが……」
父がシレッと口にした『不正入国』という言葉に、私は思わず苦笑を漏らす。
と同時に何故招待客でもないリナさんがこの国に居たのか、理解した。
カラミタ王国の招待客は国王夫妻のみ。だから、当然入国者もその二人と護衛だけとなる。それなのにリナさんがエスポワール王国に居たのは不正入国したからだったのね……。
「カラミタ国王はリナ王女の不正入国に手を貸したらしい。なんでも、『お兄様の晴れ舞台を見たい!』と強くせがまれたらしい。それで……」
「わざと結婚式を欠席して、我々に魔映石を使わせたんですね?魔映石を使って室内から結婚式の様子が見られれば、カーティス様の晴れ舞台をリナさ……リナ王女に見せることが出来ますから」
「ああ、その通りだ」
真顔のままコクリと頷く父を前に、私は思わず『呆れた……』と零す。
もちろん、私が呆れているのは父ではなく、リナさんのワガママを受け入れたカラミタ王国の国王夫妻だ。
確かに魔映石────特定の場所のリアルタイム映像を映し出す魔道具を使えば、リナさんのワガママは叶えられるけど、普通そんな理由で息子の結婚式を欠席するかしら?大体、不正入国って何!?可愛い娘のためとは言え、そこまでする!?
何故リナさんがあそこまで非常識に……いえ、ワガママに育ったのか何となく分かった気がするわ。
「ニーナ、疲れているところ悪いが、この質問にだけは答えてくれ」
父はそう前置きすると、私の目を真っ直ぐに見つめる。
ただならぬ緊張感に包まれる中、隣に座る母が私の手を優しく握ってくれた。
「ニーナ・ホールデン、お前はカーティス・キャンベル王子との結婚を────どうしたい?」