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幸せ

 オリヴァー様のおかげで、迷いも吹っ切れたし、明日からまた頑張れそうだわ。

彼が会いに来てくれて本当に良かった……って、ちょっと待って?

どうして、オリヴァー様は私に会いに……って、あっ!そうだわ!オリヴァー様は私に用があって、こっちに来たんだった!

なのに私ったら、自分のことばかり……!


「も、申し訳ありません!オリヴァー様!本題そっちのけで、相談に乗って頂いて……!」


「いやいや、別に構わないよ。これは好きでやっている事だし……でも、そうだね。もうすぐ君のお昼休憩も終わってしまうし、そろそろ本題に入ろうか」


 オリヴァー様はそう言うと────何故か席を立った。

軽やかな足取りで私の前まで来ると、そっと手を掴む。

握られた手を凝視しながら、私は目を白黒させた。


 こ、これは一体……?私はこのままでも良いのかしら?それとも、席を立った方がいい……?でも、何か深い理由(わけ)があるのかもしれないし……。


 どう反応するべきか思い悩む私は、困惑気味にオリヴァー様を見上げる。

すると、熱のこもったアメジストの瞳とバッチリ目が合った。


「ニーナ、私は今まで君に釣り合う男になれるよう、多くの努力を重ねてきた。各国への視察や見学もその一つ。さすがに魔法の腕では君に敵わないけど、それ以外の分野では君より上だと思っている。だからと言う訳じゃないが……その……」


 僅かに頬を上気させたオリヴァー様は、珍しく言葉を詰まらせた。

躊躇うような仕草を見せたあと、彼は一度深呼吸する。

かなり緊張しているようで、彼の手は少し震えていた。


 オリヴァー様の態度からして、言いたいことは何となく、分かるけど……なんだか、気恥ずかしいわね。こっちまで緊張して来ちゃった……。


 ポッと頬を赤く染める私は、少しだけ口元に力を入れる。

私達二人は羞恥心に苛まれながらも、決してお互いから目を離さなかった。


「ふぅー……こういうのは初めてだから、ストレートに言わせてもらうね。ニーナ・ホールデン、私は出会ったときから君のことを────愛している」


 洒落た言葉一つないシンプルな告白。

でも、私は『愛している』の一言だけで十分だった。


 思えば再会した時から、彼はずっと私に優しかった。

私の悩みに真摯に向き合い、しっかり支えてくれた。


 だから────好きになってしまった。

ただ甘やかすのではなく、答えへ導いてくれる彼の誠実さに惹かれてしまった。

誰にも渡したくない、と……思ってしまった。


「もし、叶うのならば────私と結婚して欲しい」


 オリヴァー様はそう言うと、チュッと私の手の甲にキスを落とした。


「心の底から、君を愛している。君を絶対に幸せにするから、私を選んで欲しい」


 語りきれないほどの愛を語るオリヴァー様は、真剣な顔つきでこちらを見つめる。

熱の籠った眼差しは、どこか猛獣のようで……私は少しだけ胸を高鳴らせた。


 恋なんて絶対しないと思っていたのに……人生、何が起きるか分からないものね。


 私はどんどん早くなる鼓動に目を細め、ふわりと柔らかい笑みを浮かべる。


「私もオリヴァー様のことをお慕い申し上げております。だから、その──これから、よろしくお願いしますわ」


「!?─────ああ、もちろんだ!君と両思いだなんて、夢のようだよ!」


 まさか、直ぐに返事を貰えるとは思っていなかったようで、オリヴァー様は大きく目を見開く。

でも、直ぐに笑顔になり────ギュッと私を抱き締めた。

私は安心するシトラスの香りと温もりに、身を任せる。


 ただ愛する人に抱き締められているだけなのに、物凄く満たされる……。

あぁ、そっか。これが─────幸せなんだ。


 苦しみの末、幸せを手に入れた私は────この幸せを手放さぬようにと、愛しい人をギュッと抱きしめ返した。




【END】

『婚約者の妹が結婚式に乗り込んで来たのですが〜どうやら、私の婚約者は妹と浮気していたようです〜』は、これにて完結です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました┏○ペコッ


【追記】

第一王子の処刑シーンを『残り二人』のところに追加しました。

特に大きな変化はありませんが、良ければご覧下さい┏○ペコッ

(ご指摘いただき、ありがとうございました!)

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― 新着の感想 ―
[良い点] ・敗戦国から停戦条件をコケにされたことに対するざまぁとしては、非常に見事!  なんですが、以下が致命的、、、 [気になる点] ・敗戦国の王家側がバカすぎる。(王妃と第一王子除く。描かれてい…
[良い点] 面白かった ヘイトキャラではあるんだけど、命を捨てても兄を守ろうとした妹ちゃんにも感動した こういうキャラって醜く自分だけ逃げようとするパターンが多いからなぁ
[気になる点] 第一王子の人気にShit!w
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