表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

31/37

処刑

「な、何故お前がここに……!?近衛兵は、どうした!?」


 真っ先に正気を取り戻したカイル陛下は、焦ったように冷や汗を垂れ流す。

バケモノでも見たかのように震え上がる彼を前に、私は思わず苦笑した。


「近衛兵なら……いえ、カラミタ王国の国民なら、全員魔法で眠らせましたよ。あなた方も、さっきまで眠っていたでしょう?」


「な、なっ……!?まさか、お前は王国全体に魔法を展開したとでも言うのか!?」


「ええ、そうですよ。私は魔導王の娘ですから」


 『これくらい、出来て当然です』と言い放ち、私は両腕を組む。

仁王立ちする私を前に、カイル陛下は少しだけ後ずさった。

蛇に睨まれた蛙のごとく、彼は怯え切っている。

────でも、この場で一人だけまだ状況を理解出来ていない者が居た。


「ねぇ、貴方は一体誰なの?用がないなら、さっさと出て行ってくれないかしら?」


 カイル陛下の腕にもたれ掛かり、座ったままこちらを見上げるのは─────側妃のレイチェル様だった。

リナさんの母親だけあって、無礼極まりない人である。

これなら、繁華街の娼婦の方が幾分かマシだろう。


「私はエスポワール王国第一王女ニーナ・ホールデンですわ。ここへは戦争をしに……いえ、あなた方の首を取りに来ました」


「私達の首を……?あはっ!貴方、面白いことを言うのね?私は陛下の寵愛を一身に受ける妃よ?私が死ぬなんて、そんなことある訳……」


「─────ありますよ」


 レイチェル様の言葉を遮り、私は真っ直ぐに前を見据えた。


「何か勘違いされているようなので言わせてもらいますが、王族だって死にますし、殺されますよ?特に戦争では……」


「なっ……!?う、嘘よ!」


「嘘じゃありません。敗戦国の王族は、滅びるのが通例です。そして─────私は今から、あなた方を殺します」


 『殺す』とハッキリと宣言すれば、レイチェル様は顔色を変えた。

先程までの余裕はどこへやら……すっかり縮こまっている。

私は一つ深呼吸すると、カイル陛下とレイチェル様に向かって、手のひらを翳した。


「い、嫌……死ぬなんて、絶対に嫌よ!お願い!私だけでも、助けて!」


「い、いや!私を助けてくれ!!他の奴らは、殺して構わん!もちろん、レイチェルも!」


「な、何ですって!?男なら、私を助けなさいよ!何で私が貴方のために、死なないといけないの!?」


「私が生き残るために死ぬのだ、光栄に思え!大体こうなったのは、リナをきちんと教育出来なかったお前のせいだぞ!!」


 ここに来て、仲間割れを始めたレイチェル様とカイル陛下は、ギャーギャーと騒ぎ立てる。

醜い争いを繰り広げる彼らに、私は冷たい眼差しを向けた。

そして─────風の刃(エアカッター)で、情け容赦なく二人の首をはねた。

ブシャッと飛び散る血飛沫を他所に、二人の生首は床に落ちる。


 私は今─────初めて人を殺した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ