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予想外の救世主

 彼女には何を言っても無駄みたいだし、ここは別の方と話を進めた方が良さそうね。


「カーティス様、彼女は酷く混乱している様子。別室をご用意しますので、妹君が冷静さを取り戻すまでそこでしばらく待機を……」


「芋女の分際で、お兄様に命令しないでちょうだい!」


 割りと話が通じそうなカーティス様に話し掛けるが、リナさんの横やりが入ってくる。

彼女はカーティス様の腕に自身の腕を絡め、その控えめな胸を彼の腕に押し付けた。

これでは、まるでカーティス様の彼女気取りだ。


 この方は本当に王女なのかしら?立ち振る舞いに品がないし、言葉遣いも乱暴だわ。その上、この態度……。

正直、王女よりも娼婦の方がしっくり来る。


「はぁ……」


 王族とは思えないリナさんの態度に思わず溜め息を零せば、彼女がこちらをキッと睨みつけてくる。


「何よ!?その態度は!芋女のくせに生意気よ!私自ら教育し直してあげるわ!」


「え?ちょ、リナ……!」


 カーティス様の腕を解いたリナさんは、制止の声も聞かずに私の方へ近づいてくる。

背の低い彼女は下から私を睨みあげると、おもむろに右手を振り上げた。


 えっ?ちょっ……嘘でしょう!?まさかの暴力!?しかも、グーで!?


 私は振り上げられた小さな拳を前に、防御用の魔法陣を展開すべきか迷う。

ここで乱闘騒ぎが起きれば、確実に両国間の関係は悪くなる。だからと言って、私が怪我をすれば……。


 どう動くのが最善か推し量っていると、私とリナさんの間に颯爽と誰かが現れた。

その『誰か』はリナさんが振り上げた拳を掴み、私を背に庇っている。

その人物には、見覚えがあった。


 ま、まさかこの方は─────オリヴァー様では……!?


 ────オリヴァー・ランドルフ。

大陸の約六割を手中に収めるルーメン帝国の第一皇子にして、皇太子であるお方。

大変聡明な方で、小さい頃から国の情勢や政治に携わり、今は研修がてら各国を見て回っていると言う。

彼が私の結婚式に出席したのはそのついでだろう。


 オリヴァー様とこうしてお会いするのは10年ぶりだけど、昔と何も変わっていないわね。

この美しい銀髪も、切れ長の目も、真っ白な肌も、全てを見通す紫色の瞳も全部……何一つとして変わっていない。


「暴力沙汰は感心しないな?リナ王女」


「なっ……!?誰よ、貴方……!」


「おや?君は私のことを知らないのかい?」


「当たり前でしょ!会ったことないんだから!それより、手離してよ!」


 リナさんは乱暴にオリヴァー様の手を振りほどくと、その場で偉そうにふんぞり返った。

そんな彼女の対応に、銀髪紫眼の美青年は困ったように苦笑を浮かべる。

周囲の反応は様々だが、無知なリナさんに軽蔑の目を向けているのは皆同じだった。

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