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愚かな女

 ようやく事実確認が終わると思ったのに……ここに来て、リナさんの登場か。

結婚式のようにまた喚き散らしに来たのかしら?だとしたら、お引き取り願いたいのだけど……。事実確認を終えた今、リナさんの使い道はないし……。


 というか────リナさんって、体調不良で話し合いを欠席したのよね?元気そうに振る舞って大丈夫なの……?カラミタ王国側の虚偽申告(うそ)がバレてしまうのでは……?


「ごきげんよう、リナ王女。体調不良で話し合いを欠席されるとお聞きしましたが、もう平気なのですか?」


「体調不良……?一体何の話?体調は健康そのものだけど?今の私が体調不良に見えるの?だとしたら、芋女の目は節穴ね!」


 出会って早々『目が節穴』と罵られた私は思わず、苦笑を浮かべる。

私のことをまだ『芋女』と呼ぶあたり、彼女は全く反省していないらしい。


 まあ、何となく予想はしていたけど、ここまで愚かだとは……。病欠を使ってでも、話し合いから遠ざけた意味がよく分かったわ……。


「で、話し合いは一体どこまで進んだの?」


「今ちょうど、事実確認を終えたところですわ。これから、婚約のことや両家の対応について、話し合……」


「あら、そんなの話し合う必要ないわよ!芋女とお兄様の婚約はもちろん破談だし、家同士の対応なんて適当でいいでしょ?だから、婚約解消の書類にサインして終わりでいいじゃない!」


「婚約解消には我々も賛成ですが、他にも話し合うことが沢山あるんです。国の今後を左右しかねない案件ですので、適当に済ませる訳には……」


「はぁ?そんなの私には関係な……まあ!お兄様!一体どうしましたの!?床に座り込んだりして!」


 ソファの陰に隠れたカーティス様を見つけるなり、リナさんは慌てて彼に駆け寄った。

抜け殻みたいにボーッとしているカーティス様に声を掛け、優しく寄り添う。

その姿はまるで傷心中の恋人を労る彼女のようで……本当にカーティス様のことが好きなんだと理解した。


 口も態度も悪いけど、彼を思う気持ちに嘘はないんでしょうね……まあ、だからと言って、彼女のしたことは決して許されないけど……。


「お兄様!お兄様!大丈夫ですか!?」


「……」


「お兄様っ!しっかりして下さいませ!」


「……」


「お兄様!!本当に何がありましたの!?もしかして、誰かに……」


 何度もカーティス様に話し掛けるリナさんは、ハッとしたようにこちらへ目を向ける。

突き刺さるような鋭い視線に、私は冷や汗を流した。


 な、なんだか嫌な予感が……。


「お兄様がこんな風になったのは、貴方のせいね!?芋女!!ブスの分際でよくもお兄様をっ……!!貴方なんか────殺してやる!!」


「!?」


 リナさんはテーブルの上にあった花瓶を手に取ると、それを思い切り私に投げつけてきた。


 他国の王族に『殺してやる!』と言うだけでも問題なのに、花瓶を投げつけるだなんて……正気の沙汰とは思えない。

殺害未遂の現行犯として、牢屋にぶち込まれても文句は言えないだろう。


 水を撒き散らしながら迫ってくる花瓶の前で、私はただ冷静に結界魔法を展開する────が、魔法を発動する前に、花瓶は粉々になってしまった。

重力に従って落ちていく破片を前に、私はただただ呆然とする。

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