表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/37

勘違い

 無知すぎて話にならないカーティス様に呆れていれば、不意に彼と目が合った。

虚ろな目が縋るようにこちらを見つめている。


 何かしら?まだ何か言いたいことでも?


「なあ、ニーナは僕のことを愛しているよな……?だから、あんなに親切にしてくれたんだろう?なら、僕を助けてくれよ……そしたら、お前にも少しくらい愛情を与えてやっても……」


「────はい?私がカーティス様のことを愛している?一体何のことですか?」


「……えっ?」


 突然何を言い出すのかと思えば……随分と面白い勘違いをしているようね?

私がカーティス様を愛してるなんて……そんな訳ないじゃない。

確かにカーティス様の容姿は格好いいと思うけど、別に好きという訳じゃないし……何より、腹違いの妹に手を出している時点でアウトよ。好きとかそれ以前の問題だわ。


 内心げんなりする私は、父にアイコンタクトを送る。

すると、父は『言ってやれ』とばかりに大きく頷いた。


「何かとんでもない勘違いをしているようなのでハッキリ言わせてもらいますが、カーティス様を愛したことは一度もありません」


「なん、だと……!?じゃあ、何であんなに親切にしてくれたんだ!?好いてもいない相手に優しくする奴なんて居ないだろう!?」


「私がカーティス様に優しくしていたのは────人質として(・・・・・)、婿入りしてくる貴方を哀れに思ったからです」


「へっ……?人質……?一体、何のことだ!?」


 ダンッ!とテーブルに拳を叩きつけたカーティス様は、意味が分からないと言わんばかりに目を白黒させた。


 やはりと言うべきか……カーティス様は結婚の目的や自分の役割をこれっぽっちも理解していなかったようね……だとしたら、哀れを通り越して無様だわ。


「カーティス様は何も知らないようなので言わせてもらいますが、私と貴方の結婚は平和条約を結ぶためだけのものではありませんわ。表向きはそうなっていますが、裏の目的は人質として、貴方を我が国へ婿入りさせること。表面上は和解していますが、いつ・どこで裏切られるか分かりませんから……だから、人質の貴方が必要だったのです」


「な、なっ……!?僕が人質だと……!?」


「はい。カラミタ王国が裏切れば、人質の貴方は見せしめの意味も兼ねて、真っ先に処刑されるでしょう。だから、私は貴方の境遇を哀れみ、親切にしていたのです。まあ、カーティス様に人質の自覚はなかったようですが……」


 最後に嫌味を零すが、カーティス様はそれどころじゃないようで、目を見開いて固まった。

まさか、人質として婿入りさせられるとは思わなかったのだろう。


 よく考えてみれば分かりそうなことだけどね……。

だって、本当に平和条約を結ぶためだけなら、リナさんを始めとする未婚の王女をお父様の側室に迎え入れれば、いいだけの話だから……。

それなのに次期国王の補佐に当たる第二王子を婿入りさせる。別の目的があるのは、明らかでしょう……。


 呆然とする婚約者様を前に、私は思わず苦笑を漏らす────と、ここで部屋の扉が勢いよく開け放たれた。


「─────私抜きでお話を進めるなんて、有り得ないわ!何故、話し合いに呼んで下さらなかったの!?」


 そう言って、扉の向こうから現れたのは────全ての元凶であるリナさんだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ