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無知

 いやいやいやいや……愛人一人くらいって言うけど、その愛人って腹違いの妹でしょ?妹を愛人にするなんて、前代未聞だから。


「他の奴らだって、愛人の一人や二人持ってるじゃないか!それにこういう場合、リナは側室にカウントされるんじゃないのか!?」


「恐れながらカーティス様、我が国で側室を持っていいのは国王だけです。法律上そう決まっているのです」


 まあ、人によっては法律を無視して愛人(側室)を持つ人も居るけれど……。

 とは言わずに、カーティス様の言葉をやんわり否定する。

出来るだけ優しく言ったつもりだが……彼は更にヒートアップした。


「なら、僕が王様になればいいだけの話じゃないか!元々リナを側室に入れるために王になるつもりだったし!」


「いえ、あの……」


「僕は近親婚を全面的に認める法律を作る!血が繋がってるってだけで結ばれないなんて、あんまりじゃないか!」


「ですから、カーティス様……」


「うるさい!僕はお前と結婚して、王様になるんだ!飾り妻に過ぎないお前は黙って、僕の言うことをっ……」


「────カーティス様に王位継承権はありません!」


「えっ……?」


 王になる資格がないとハッキリ告げられたカーティス様は、見事なアホ面を晒す。

あまりにも無知すぎる婚約者に、私は内心頭を抱えた。


「我が国に限らず、入婿の王子に王位継承権は基本ありませんわ。だって、その方にはその国の王家······今回で言うと、ホールデン王家の血が入っていないからです。もし、私達の間に子供が出来たなら、その子に王位継承権が渡るかもしれませんが……」


 他国から婿入りしてきた者に、王位継承権なんてある訳ないでしょう……。だって、他国の者に王位継承権を渡したら、国が乗っ取られるかもしれないもの。

それに王族は血を尊ぶ種族……自分達の血が一切入っていない者に、国を任せようとは思わないわ。


「なっ……それは本当か?」


「はい、本当です。ですのでカーティス様が王になり、側室を持つことも……そして、国の法律を変えることも出来ません」


「そ、んな……じゃあ、僕は今まで一体何のために……」


 あまりの衝撃に耐えきれず、カーティス様は膝から崩れ落ちる。

この世の終わりだとでも言いたげな表情を浮かべ、絶望感に苛まれた。


 あの様子だと、カーティス様は結婚の目的や自分の役割にも気づいてなさそうね。

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