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嘘と否定

「─────事実ではありません」


 得意げな顔で、堂々と嘘をついたカイル陛下に、父も母も……そして、私も呆れ返る。

不貞関係の証拠を持っている我々からすれば、カイル陛下の嘘の供述はただの悪足掻きにしか見えなかった。


 カイル陛下のことだから、『どうせ証拠はないんだ。適当に言いくるめてやろう』と思っているんだろうけど、実に浅はかな考えね。私達が何の準備もなく、この話し合いに臨むとでも思ったのかしら?


「リナとカーティスに体の関係はありません。兄を取られたくないあまり、リナが妄言を吐いただけです。そうだな?カーティス」


「は、はい……」


 突然話を振られたカーティス様は、オロオロした様子で曖昧に頷く。

嘘をついた負い目があるのか、彼は決して目を合わせようとしなかった。


「妄言、ですか……私にはとてもそうは思えませんけど……。あの時のカーティス様は確かに『リナ、それは二人だけの秘密だろ!』と仰っていましたから……嘘であれば、そんなことは言わないと思いますが?」


「はっはっはっはっ!きっと、その時のカーティスは気が動転していたんでしょう。妹と体の関係を持つなんて有り得ません(・・・・・・)からなぁ!なあ?カーティス」


「っ……!!は、はい……」


 実の父親に『有り得ない』と断言されたせいか、カーティス様は苦しげに顔を歪める。

これでは、『嘘です』と自白しているようなものだ。


「では、キャンベル王家はリナ王女とカーティス様の体の関係を真っ向から否定なさるのですね?」


「はい!当然です!それは事実無根の冤罪ですから」


「分かりました。では────その言葉しっかり覚えておいて下さい」


 カイル陛下の口から『事実無根』という言葉を引き出した私は、内心ほくそ笑む。

そして、父に目配せして証拠品提示の許可をもらうと────予め用意しておいた書類に手を伸ばした。

分厚い書類の束をドンッとテーブルの上に置き、私はゆるりと口角を上げる。


 さあ、キャンベル王家の皆さん、ここからが本番ですよ。


「カイル陛下、こちらの資料を見てください」


「それは構いませんが、これは一体……」


「こちらはリナ王女とカーティス様に関する、調査資料です」


「なっ!?調査資料!?」


 飛び上がらんばかりの勢いで身を起こしたカイル陛下は、慌てて資料に手を伸ばした。

食い入るような目で資料を眺め、一枚ずつ読み進めていく。

資料を持つ手はワナワナと震えており、焦りと不安に駆られているようだった。


「資料を見て頂ければ分かると思いますが、リナ王女とカーティス様は我が国で一度密会しています。それも結婚式の前日に……」


「な、なっ……!?」


「密会場所に指定したホテルは、貴族や王族も利用する宿泊施設で完全予約制です。つまり、お二人は以前からこのホテルでの密会を企てていた。それも予約したのは一部屋だけ……ここまで言えば、もうお分かりですね?」


「っ……!!」


 わざと決定的な一言は言わずに、カイル陛下の出方を伺う。

彼は苦虫を噛み潰したような顔をして、真正面から睨みつけてきた。

先程までの余裕は、粉々に砕け散ってしまったらしい。


 まさか、ここで証拠が出てくるとは思わなかったんでしょうね。まあ、私達もこんな簡単に証拠が見つかるとは、思わなかったけど……カーティス様の危機管理能力については、お粗末としか言いようがないわね。

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