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舞台は整った

 それから、月日は流れ────事後処理をようやく終えた頃、ホールデン王家とキャンベル王家の話し合いが始まろうとしていた。

とある一室で、ホールデン王家とキャンベル王家の面々が顔を合わせる。

そんな私達の間に立つように、仲裁役の神官長と立会人のオリヴァー様が佇んでいた。


 あら?リナさんの姿がないわね。もしかして、寝坊でもしたのかしら?


「失礼ですが、リナ王女はどちらに?」


「あぁ、その事なんですが……実は今朝リナが体調を崩しまして……誠に勝手ながら、本日の話し合いは欠席させました」


「欠席……?」


「はい、本当に申し訳ありません」


 カイル陛下はリナさんの代わりに、深々と頭を下げる。

我々ホールデン王家の人間は、彼の旋毛を見つめ、『してやられた』と眉を顰めた。


 リナさんの欠席理由は、体調不良なんかじゃない……きっとキャンベル王家側が強制的に欠席させたんだわ。彼女が居ると、余計なことを口走るかもしれないから……。

本来であれば、当事者の居ない話し合いなんて、有り得ないことだけど……ここまで来て、日程をズラす訳にはいかない。舞台はもう整っているのだから……。


「分かりました。体調不良なら、仕方ありません。ですが────後になって、『当事者(リナ王女)の居ない話し合いなんて、無効だ』と騒がないで下さいね?」


「勿論ですとも、ニーナ王女。私、カイル・キャンベルの名にかけて、そのような騒ぎは起こさないと誓いましょう」


「それなら、構いません」


 一応一国の王だと言うのに、カイル陛下はやけに(へりくだ)った態度を取っている。

私の意思一つで婚約を破談に出来るせいか、ご機嫌取りに必死だった。


 彼らに王族としてのプライドは、ないのかしらね……?


 と一人呆れる中、仲裁役として馳せ参じた神官長が恐る恐るといった様子で、口を開く。


「そ、それでは────リナ王女を除く参加メンバーが揃いましたので、これよりホールデン王家とキャンベル王家の話し合いを始めさせて頂きます。僭越ながら司会進行は仲裁役の私が、そして話し合いの見届け人として……」


「証人役の私が参加させてもらうよ」


 パッと手を挙げたオリヴァー様は、ゆるりと口角を上げる。

どんな時でも笑顔を絶やさない彼に感心すらする中、神官長は緊張した面持ちでこちらを見据えた。


「それでは、まず誓いの言葉と誓約書のサインを行います。両家の当主はご起立願います」


 神官長の言葉に従い、両家の当主……というか、両国の国王は席を立った。

赤髪金眼の美丈夫と金髪碧眼の美男子は、互いの目をしっかり見つめる。

相手の腹を探り合う彼らは、バチバチと見えない火花を散らした。


 二人とも顔は笑顔なのに、滲み出る黒いオーラを隠し切れていないわね……。


「お、おほんっ!では……ホールデン王家当主ネイト・ホールデン。貴方は本日行われる話し合いで決定したことに従い、異を唱えないと誓いますか?」


「はい、誓います」


「キャンベル王家当主カイル・キャンベル。貴方は本日行われる話し合いで決定したことに従い、異を唱えないと誓いますか?」


「はい、誓います」


「では、誓約書にサインを」


 誓いの言葉を終えたお父様とカイル陛下は、おもむろにペンを手に取った。

二部ずつ用意された誓約書には、既に神官長とオリヴァー様のサインがしてある。


 本来、誓約書は話し合いの後に書くものだが、極稀に『こんな結果認めない!』と駄々を捏ねる者が居るので、大事な話し合いの時は事前に書くことになっている。所謂保険みたいなものだ。


 神官長は両者のサインが施された誓約書を受け取り、不備がないか確認する。

そして、その誓約書を一部ずつ両家に渡した。


「神の名のもとに誓いの儀式は終了致しました。これより、両家の話し合いを始めます。まずは─────事実確認から」

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