92 ケンの決意
俺は顔を上げてケンたちを見渡し、微笑みながら言葉を出す。
「君たちも何もされなくて良かったよ」
「ハハハ・・もし何かあってもどうということはないでしょうけど、家族が心配ですからね」
ケンが言う。
もっともだ。
俺たち以外は普通の人間だ。
それを人質に取られたら何もできない。
「それにテツさん、気づいているでしょうけど、俺たちの後ろの離れたところでSPがいます。 俺も敢えてついて来させましたけどね」
ケンがニヤッとしていう。
「え、そうなの? 私なんてわからなかったけど・・」
リカがキョロキョロと辺りを見渡す。
「リカ、見てもわからないよ。 感じるしかない」
ケンが笑いながら言う。
「それよりもテツさん、これからどうするつもりなのですか?」
ケンが真剣な顔で訊いてくる。
俺は一度目を閉じてゆっくりと開ける。
「わからないな・・とにかくそのうち中国の話題が流れるだろう。 まぁ俺たちにしてみれば関係ないが、俺たちみたいな能力を持った連中が世界にはまだまだたくさんいると思う。 そいつらの動向次第だな・・いや、違うな。 諸外国は既に実戦配備をしていた。 妙なことを考え出して軍事利用なんてされたら、それこそ異世界英雄の末路だよ」
俺はそこまで話してケンたちを見る。
ケンもリカも苦笑していた。
わかっている。
英雄なんて言葉はいいが、つまるところ軍事兵器だ。
そして消耗品だった。
俺は余計なことが頭に浮かびそうになったので軽く頭を振る。
俺は話を続ける。
「それよりもディアボロスが怖い。 奴が何をしようとしているのかわからないが、本気で隠れられたらなかなか見つけられないだろう。 俺は取りあえずディアボロスを見つけるのを最優先にしながら、クソウのところで情報を集めようかと思っているんだ」
俺の言葉を聞きながらケンがうなずく。
「テツさん、俺にも協力させてください」
俺はケンの顔を見つめる。
「俺だってかなり役立つと思いますよ」
「い、いやケン君・・それは・・」
俺は言葉に詰まる。
「テツさん、俺たちを子ども扱いしないでください。 今回のことだって俺たちも悔しんですよ。 一緒に行こうって何故言ってくれないんだって思っているんですから」
ケンが俺に言う。
俺はその言葉を聞いて即答ができなかった。
別に子ども扱いしているわけじゃない。
だが、学生のケンたちがもし死んだら・・なんて考えると、その先のことを考えれない。
そんな状況だけは嫌だ。
それに魔族の問題は俺の課題だ。
魔王から依頼されたのは俺だ。
それはケンたちには関係ない。
しかしなぁ・・こんな学生の子は、こうと思ったら譲らないだろう。
それに無下に断ってはダメだろうし。
俺はケンの顔を見つめる。
「ケン君・・別に子供扱いしているわけじゃない。 だが、相手は魔族の強敵だ。 それだけじゃない。 帰還者の連中も敵になるかもしれない」
俺が話しているとケンの目が輝くのがわかる。
こりゃダメだな。
何を言っても既に答えは決めてある感じだ。
「フッ・・わかったよケン君。 だがね、命の危険を感じるときは無理にでも退避してもらうからね」
俺は軽く左右に首を振り言葉を出す。
ケンは目を大きくして喜んでいた。
「はい!」
ケンが俺に握手を求めてくる。
俺もしっかりと手を握り返した。
「あ~ぁ、リカはよくわからないけど、テツさんやケンのためなら頑張るよ」
リカが両手を頭の後ろで組みながらつぶやいていた。
「ありがとう」
俺は本気でそう思っていた。
俺はケンたちに挨拶を済ませると、取りあえずクソウのところへ戻ることを伝える。
何かあったら連絡を入れる約束をした。
◇
<イギリス>
イギリスでも帰還者はいた。
2人いる。
男女それぞれ1人ずつ。
レベルは27だ。
この国では女王は既に把握していた。
帰還者は女王直属の配下に組み入れられている。
レオ(♂)とソフィ(♀)。
バッキンガム宮殿内のとある施設の中。
こじんまりとした部屋に2人の男女がいた。
男性は窓から外を眺め立っている。
女性は椅子に座り、テーブルの上に置いてあるカップで紅茶を飲んでいた。
「レオ、先程の感覚・・あれって人が亡くなった時などに感じるものよね?」
カップをテーブルに置き男の背中を見つめる。
「まさか俺たちのような一般市民が宮殿内で生活するなんて・・未だに信じられないよ。 それに騎士だものな」
レオと呼ばれた男がつぶやいている。
「ちょっとレオ、聞いてるの?」
女の人が少しイラッとしたようだ。
「あぁ、済まないソフィ、聞いてるさ。 あの感覚は虐殺だ。 理由もわからず一度に狩られた感じだな。 とても儚い感じだった。 心が凍りそうだよ」
レオはゆっくりと振り向きながらソフィに話す。
「そうよね。 きっと私たち以外にも帰還者がかなりいるはず。 これからこの世界はどうなるのでしょうね? こんな変な病気が蔓延しているし・・」
ソフィの言葉を聞きならがレオが微笑む。
「ソフィ、この宮殿周辺は問題ないし、ロンドン周辺も問題ない。 僕たちが結界を張ったんだ。 そんな不純物は通過はできない」
「それはそうだけど、イギリス全土を覆うことはできないわね。 いや、数を重ねて行けばできるかもしれないわ」
ソフィが笑顔で言う。
「ソフィ、僕たちは女王陛下の親衛隊みたいなものだ。 女王の判断に任せるしかないよ。 それに指示された場所は確実に結界を張っている。 難しく考えることはない」
「レオ・・でも・・」
「ソフィ・・すべての人を救うことはできない。 選別される側になれば不幸なことだが、僕たちのできることは全力ですればいいと思うよ」
レオが言う。
「うん、わかっているのよ。 それでもって思うの。 同じイギリス人でしょ・・それがちょっと、ね・・」
ソフィがそこまで話すとドアがノックされる音が聞こえた。
コンコン・・。
ドアが開かれる。
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