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84 後少し



<テンジンたち>


俺たちはまっすぐにバッキンダック主席のいるところへ向かっている。

俺は何もすることはない。

テンジンが1人ですべての軍や警察を相手にしている。

凄いものだ。

モンクか・・まさかこれほどの身体能力だとは思ってもいなかった。

俺も相当鍛えたと思っていたが、テンジンと基礎修行の段階で違っているのだろう。

完全な武道家。

俺からみたテンジンの動き、無駄がない。

同じ土俵なら、俺はテンジンに有効打を与えれないだろう。


「テンジン、無理しないでね」

サラがテンジンの背中に声をかける。

「うむ。 だが、これは我々の悲願だ。 それが間もなく成就される」

「テンジン・・」

サラは心配をしていた。

テンジンの負けなどではない。

テンジンの心だ。

敵は軍や警察だが、まるで相手にならない。

おもちゃを軽く扱う感じで、テンジンが撃破していく。

戦車の大砲や戦闘機のバルカン、ミサイル・・どれもテンジンに触れることすらない。

無論、俺やサラにも触れることもない。

俺たちはテンジンの後方で独自で防御。

戦いの時には、ある程度テンジンと距離を取っている。


サラが俺に話しかけてくる。

「テツ・・テンジンは大丈夫かしら?」

「さぁな・・あの真面目な性格では、しんどいだろうな」

「そうなのよ・・すべての責任を自分で背負い込むんだから・・」

サラが寂しそうな目で前を見ていた。

「サラ・・テンジンのことが好きなのか?」

俺は思わず聞いてしまった。

「うん・・好きよ。 彼みたいな高潔な人はいないわ。 でも、恋愛となるとわからないわね」

サラが微笑む。

「は? 好きと恋愛は違うのか?」

俺にはわからない。

「えぇ、違うわよ」

サラの返答を聞きながら俺も考えていた。


テンジンは敵に対して慈悲を与えない。

向かってくる軍はすべて撃破している。

ためらわない。

俺なら少し躊躇ちゅうちょするかもしれない。

相手が倒れて逃げようとしても、遠慮なくその拳を振り下ろす。

おそらくそれほどの決意をもってここにいるのだろう。

逆に敵は学習能力がないのかと思うほどだ。

バンバンと撃ってくればいいと思っているようだ。

いったいどれくらいの戦費をテンジンに使ったのだろう。

まぁ、学習といっても生き残りがいない。

学習しようがないな。

俺は妙に可笑おかしくなった。


俺が笑っていたのだろう、サラが声をかけてくる。

「何がおかしいの、テツ?」

「あ・・いや、テンジンって強いなって思ってね。 でも、その拳を振るう度に泣いているんじゃないのかって感じていたんだ」

「泣いている?」

「うん。 これは俺の推測なんだが、初めは本当に気持ちよく戦っていたと思うんだ。 でも、これは戦いなどと呼べるものではない。 一方的な虐殺に近い。 今まで中国がやってきたことを今度はテンジンがやっているのではないだろうかって思ってね」

「・・・」

「ご、ごめん。 変な意味じゃないんだ。 俺も家族や友人がやられたら同じことをするだろう。 それだけテンジンが受けていた今までの扱いがひどかったということだろう。 本当にこの戦いが終わったら、テンジンにはゆっくりと休息が必要だろうね・・心のね」

俺はテンジンの背中を見ながらつぶやいていた。

「テツ・・あなた、ただのスケベじゃなかったのね」

サラが目を大きくして俺を見た。

「あのなぁサラ・・」

「フフ・・わかっているわ。 テンジンにはゆっくりとした時間が必要ね」


俺たちが後方でくつろいでいると、どうやら戦闘は終わったようだ。

俺たちはテンジンのところへ行く。

「テンジン、お疲れ様」

「うむ・・ほんとに歯ごたえのない連中でござる」

「ござる?」

俺は思わずテンジンの言葉をなぞっていた。

「あはは・・いや、拙僧、日本の忍者にも憧れておってな。 その言葉遣いなどが好きなのでござるよ」

おいテンジン・・なんか違うぞ。

「さて、後はあの砦だけであるな。 中に間違いなく親玉がいるでござるよ」

俺はもうテンジンの話し方は気にしない。

だが、砦の方は気になる。




最後までお読みいただき、ありがとうございます。


これからもよろしくお願いします。


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