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81 聞き間違いではないのか?



<バッキンダック主席>


大きなテーブルの前を右に行ったり左に行ったりとしている人がいる。

バッキンダック主席だ。

落ち着かないらしい。

側近たちは壁際で、沈黙したまま気を付けをしていた。

「まったく・・何をやっているんだ。 軍が出動したのだろう? サッサと敵を仕留めて戻って来れないのか・・」

ブツブツと言いながらイライラしていた。

そこへ一人の行政官が入って来る。

バッキンダック主席が笑顔で迎えた。

「おぉ、待っておったぞ。 それでどうなのだ? 敵はどんなやつなのだ?」

行政官はバッキンダック主席の前に来たまま固まっていた。

いったい何と報告すればいいのだろうか。

ここに来るまでに何度も頭でシミュレーションを重ねた。

だが、この雰囲気・・とても報告できるものではない。


「君ぃ、何か言いたまえ。 敵はどんな奴なのだ。 それに警察も出動したのだろう。 市民はおとなしくなったのかね?」

バッキンダック主席が笑顔でうなずきながら聞いてくる。

「えぇ・・はい・・その・・」

「君、報告とは事実をはっきりと言うことだよ。 構わない、言いたまえ」

バッキンダック主席が言う。

行政官は生唾を飲み込むと、意を決したのか、静かに報告し始めた。

「は、はい、報告します」

バッキンダック主席は笑顔を保ったままうなずく。

「反乱鎮圧に向かった警察は全滅いたしました。 生き残りはいません。 軍の方も出動したまま連絡が途絶えています。 ただ時間と共に反乱の規模だけは広がっております。 間もなくこの北京にも迫って来ようかという勢いです」

行政官は報告を終えた。

・・・

バッキンダック主席との間に沈黙が流れる。

行政官や側近には何時間にも感じられたことだろう。


バッキンダック主席がゆっくりと行政官を見つめる。

行政官はビクッとなった。

動けない。

言葉が出せない。

呼吸すら怪しい。

「君・・いったい何の報告だったかな? 警察が全滅? 軍と連絡が取れないだと? どういうことかね?」

バッキンダック主席は優しく言葉を出していた。

行政官は気絶していたかもしれない。

無言で突っ立ったままだ。

バッキンダック主席が行政官を舐めるように見ると、グルッと振り向いて側近を見た。

側近たちは一気に背筋を伸ばす。

「君たちも聞いたはずだ。 この報告者はいったい何の報告をしていたのかね?」

「は、はい・・警察が全滅し、軍とも連絡が取れないと言っておりました」

側近の一人が答えた。

バッキンダック主席がゆっくりとうなずき、側近たちに背中を向けて机の方へ歩いて行った。


「そんなことはわかっているんだ!! 何故全滅しなければならんのだ!! 相手はたかが一人の人間だろう? それに反乱を起こしているのは一般市民なのではないのか? それすらも抑えれないのか!!!」

バッキンダック主席が大声で怒鳴りながら、机の上のものを一気に蹴散らした。

側近たちと行政官はその場で倒れてしまった。

「全く・・どいつもこいつも仕事ができない連中だ! いったい何のために自分たちがあると思っているのだ」

バッキンダック主席は吐き捨てるように言うと、ドンと椅子に腰かけた。

バッキンダック主席の命数は多くない。


<テツとクリストファー>


俺の後をクリストファーが走ってついてくる。

俺はたまに振り返りながら確認している。

軽いジョギングくらいの速度感覚だから問題ないと思うが、遅すぎたか?

これは俺の感覚だが、一般的なレベルでは新幹線以上の速度だと思う。

クリストファーはそれほどきつそうな顔をしていない。

まぁこのくらいの速度なら大丈夫だろう。

俺はそう思って走っていた。

あと少しで到着する。


クリストファーはかなりしんどかった。

あの男、たまに私の方を振り返る。

逃げ出すのか、私の状態を確認しているのか、それはわからない。

だが、私も苦しそうな顔をするわけにはいかない。

いくらきつくても余裕をもって見せねばなるまい。

それが騎士というものだろう。

しかし、後どれくらい走るのだろうか?

もう30分は走り続けていると思う。

間もなく私も限界が来るだろう。

トイレということで一度休憩した方が良いだろうか。

それならば言い訳は立つ。

クリストファーがそんなことを思った時だ。

テツが振り返りながら話しかけてきた。

「クリストファーさん、後少しで到着です。 少しゆっくりと移動し過ぎましたね、すみません」


クリストファーは呆れていた。

少し返事が遅れてしまった。

「あ・・えぇ、構いません。 そうですか・・間もなくなのですね」

この男、今ゆっくり移動し過ぎたと言ったか?

速すぎるの間違いではないのか?

・・・

そうだ・・きっとそうに決まっている。

こんな速度で移動し続けられるわけがない。

いくら我々帰還者といえども、それほど違いがあるわけではないだろう。

もしかして、私を疲れさせて思考能力の低下をはかり試しているのかもしれない。

返答には用心しなければな。

クリストファーは警戒レベルを少し上げた。

テツは素直にありのままを聞いていただけなのだが。


「あ、クリストファーさん、見えてきました。 あそこです」

俺は笑顔で指さした。

クリストファーが苦笑しながらも答える。

「はい、確認できました」

クリストファーは少し見落としていたようだ。

これほど接近したのに相手の魔素をそれほど感じることができなかった。

やはり移動でかなり疲れたのだろう。

ただ、テンジンもサラも魔素を抑えていたようだ。


「おーい、連れてきたよ」

俺は片手を挙げてテンジンたちに近づいて行く。

サラが笑っていた。




最後までお読みいただき、ありがとうございます。


これからもよろしくお願いします。


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