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118 意図した遭遇



「これは、脅威でござるな」

テンジンはつぶやくと、感じていた存在が視認できるようになっていた。

相手はゆっくりと確実に近づいてくる。

この感覚・・おそらく前に感じた人を喰った人物に間違いないだろう。

テンジンはそう推測しつつ、どういった人物なのかという好奇心もどこかにあった。

そして、心のどこかに自分の贖罪しょくざいと相まってこの人物を許せない感覚も持っていたかもしれない。


視認できた人物? が人の形を成して行く。

その輪郭がだんだんとはっきりとわかってくる。

・・・

ん?

どこかで見たような人物だが・・。

テンジンは自分の記憶を探っていた。

!!

プッツン大統領ではないか!

テンジンの頭の中に雷が落ちたような衝撃を受ける。


テンジンのその表情をディアボロスは確認したのだろう。

優しく微笑みながら近づいて来た。

「やぁ、君は帰還者だね。 私はディアボロスという」

テンジンの前、3mくらいのところだろうか、立ち止まって話しかけてきた。

ディアボロスの言葉を聞くと妙に落ち着いてくる。

テンジンは警戒レベルを上げる。

「あ、あなたは・・プッツン大統領ではありませんか?」

テンジンは聞かずにはいられない。


ディアボロスはゆっくりうなずくと答える。

「うむ、そう呼ばれた時もあったね。 だが、それは単なる肩書だ。 私は私だよ」

ディアボロスは答えながらもワクチンを接種した人物なら反応するであろう結界を試していた。

・・・

反応はない。

なるほど、この人物は帰還者だったな。

それにワクチンを接種したわけではないのかもしれない。

拘束をあきらめて実力でテンジンを喰らうことを密かに決める。

「君・・名前は何と言うのかね?」

ディアボロスの優しい丁寧な言葉がテンジンを妙に落ち着かせる。

「は、はい、私はテンジンと言います」

「そうか・・テンジン、君はこの世界に帰って来てどう思ったのかね?」

テンジンは意外な質問に一瞬だが頭の中が真っ白になっていた。

「え? あ、そ、その・・理不尽な世界だと感じています」

ディアボロスはうなずく。

「そうだろう。 だからこそ私などが国という集団を作り、人が人らしく暮らせるシステムを構築しようとしていたのだよ。 だがそれもできなくなったが・・」

ディアボロスの言葉を聞いていると、無条件で信じそうになる自分をどこかでテンジンは感じていた。

そして思う・・危険だと。


それからは他愛ない話を少ししていた。

・・・

・・

「ふむ・・君との会話は楽しいが、それほどゆっくりとしてもいられない。 どうするかね?」

ディアボロスが言う。

「どうするとは・・どういうことですか?」

「うむ、素直に吸収されるか、叩きのめされて吸収されるか、どちらかを選べ」

ディアボロスから強烈な悪意ある魔素を感じた。

!!

テンジンの頭はしっかりとしている。

そしてこの場から離れなければいけないと自分に言っているが、身体が反応しない。

生物の本能なのか。

思うように動くことができない。

ライオンに睨まれたウサギのようだ。

「だ、大統領・・吸収とおっしゃいましたな・・どういうことですか?」

テンジンはディアボロスの魔素の中で言葉を出す。

「ほぅ・・口が聞けるのか。 貴様は我が魔素に耐性があるようだな・・だが、完全ではあるまい。 それに君の中から沸き起こる強烈な精神力・・惜しいな」

テンジンは理解した。

この人物があの儚さの元凶なのだと。

そして自分のしてきた行為への贖罪と、この世界の人のために戦わなければならないと即座にテンジンは決意をする。

「フフ・・拙者を食べても、食あたりを起こしますよ大統領」

「ほざけ」

ディアボロスがニヤッとして言葉を出すと右手をテンジンに向かって突き出してきた。


ヒュン!

テンジンはかろうじて躱す。

だが右肩をディアボロスの指先がかすめたのだろう、出血していた。

ディアボロスは手を戻すと指を舐める。

「ふむ・・なかなか良いエネルギー体だな。 ミシチェンコよりも上質のようだ」

テンジンはディアボロスが何かをつぶやいたと思ったが、聞こえるはずもない。

そして身体に気を込めて行く。

「コォォォ・・・」

テンジンの身体が白い光に包まれていく。

「ムッ! これは・・貴様は聖職者か!」

ディアボロスは警戒度を引き上げた。

自分とは対極に位置する職種。

つまりは天敵だ。

だが、残念ながらその基礎レベルに置いてテンジンはディアボロスに及ぶことはない。

テンジンもディアボロスの魔素を感じてわかっていただろうか。

自分では勝てないということが。




最後までお読みいただき、ありがとうございます。


これからもよろしくお願いします。


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