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18話-2 悪役令嬢の運命を変えようか その2

突然必要以上の魔力が放出された。

ジェイが魔力の調整を誤ってしまったのだ。


気付くのが少し遅かった。

爆発する!咄嗟に自分の周りに防御魔法を使った。


大きな音と共に周りが眩しく光る。

防御壁を張ったので、何なく俺自身は難は逃れた。

少し扉がぶっ飛んで…あ、いや扉だけじゃないな。

あとで、父上に叱られそうだ。

しまったな…。


フゥッと息を吐いた。


「ん?」

何やら外でミィがニャーと鳴いていた。

俺は吹き飛んだ扉の先を見た。

するとそこには人が倒れていた。

その人に抱かれたミィが鳴いていた。


銀色の髪…?


「ラティディア嬢?」


慌てて彼女の側に駆け寄った。

やはりラティディアだった。

ゆっくり抱き起こしてみたが、彼女は意識がなかった。

だらりと落ちる手。青白い顔。


今の爆発で飛ばされたのか?


まさか扉を隔ててすぐそこにラティディアがいるとは思わなかったから防御壁をそこまで大きくしなかった。

自分を責めた。

ラティディアは爆風で飛ばされて頭を打ったようだ。

頭から少し血が出ていた。


「ラティディア嬢!大丈夫か?」


返事はないが脈はしっかりしている。

しかし頭を打っている。

すぐに部屋に運んだ。


医者は命に別状はないと言った。

ただ、頭を打っているからあまり動かさないようにと注意をうけた。

俺は何かあればすぐに呼ぶように召使いに言って実験室に戻った。


『すまない。』

ジェイが謝る。

『起こった事は仕方ないさ。』

『しかし…』

『ラティディアが早く意識を取り戻すことを祈ろう。』

『ああ…そうだな。すまない。』

『しかし実験中は集中してくれよな。』

『ごめん。』

『で、何だった?』


ジェイは少し考え込んだ。

しかし何か決めたように話し始めた。


『俺は考えたんだ。やはり俺はこの国に残りたい。

俺はもう逃げない。この国の王族としてしっかり生きていきたい。兄上を支えていきたい。兄上と一緒に国を守っていきたい。』

『ようやく言ってくれたな。はぁ、わかってたよ。それが一番いいよか。』

『は?わかってた?』

『お前と俺は一心同体なんだぞ!ダダ漏れなんだよ。』

『プライベートには踏み込まないって!』

『それができないことはわかってるだろ?』

『なら言ってくれよ。』

『お前が自分で言わなきゃいけないことだ。』

『意地悪だな。』

『お前と同じだよ。』

『翔、すまない。頼む。薬を作ることも大事だと思う。それは続けていきたい。でもこれからは国政に関しても勉強していきたい。』


ジェイがようやく自分の気持ちを言ってくれたことが嬉しかった。

なかなかこいつは言わなかったからな。


『わかった。ラティディアとエディシスフォードが予定通り婚約破棄したらすぐに全てを彼女に話そう。そしてストラヴィー公爵の罪を回避しようか。』

『ああ。』

『それなら第二王子がラティディアと一緒になっても大丈夫だ。国を出なきゃいけないことはない。エディシスフォードの側でちゃんと彼を支えていけるよ。』

『あっさり言うな。何だ、翔。そうするように考えていたんだ。』

『当たり前だ。何年お前といるんだ。』

『…だな。悩んで損した。』

『だいたいお前が遠慮するとかありえないだろ?』

『だってさ。初めは俺も面白ろそうで楽しんでただろ。それにラティディアも婚約破棄した兄上の側にいるのは嫌だろうって…。』

『大丈夫だ。お前の嫌なことはしないよ。俺はお前が割と好きなんだからな。』

『そこはすごくにしてくれないか。』


そんな話をしていたら

ハーデスが実験室にラティディアが意識を戻したと連絡しに来た。

先にエディシスフォードが向かっているようだ。

とにかく心配だったから急いでラティディアのいる部屋に向かった。


ベッドの上でラティディアはエディシスフォードと話をしていた。

ひとまず安心した。


しかし意識を戻した彼女を見た時に何が違和感があった。

何かが違う…。


「彼女は5年間の記憶を失くしている。」


エディシスフォードがそう言った。

俺はラティディアをもう一度見た。  


美月さんが気配が…?!

今までのようにラティディア全体から美月さんを感じない。

どういうことなんだ?

かすかには感じる。

美月さんの気配が薄れている?


もう一度彼女を見る。

間違えない・・・。

ラティディアの体からはわずかにしか美月さんを感じられなくなっている。

何が起こった?


『翔、どうた?』

俺の戸惑いを感じたジェイが話かけてきた。

彼にはわからないようだ。

美月さんを感じられるのは俺だけのようだ。


そう考えている時にラティディアがつけている三日月のペンダントが光った。

俺はハッとした。


そこに美月さんを強く感じる・・・。

どういうことだ?


美月さんはシトリンの石の中にいる?

美月さんの精神がラティディアの体から離れた?

そしてシトリンの石に入り込んだ?


ラティディアが失くしたのは記憶ではない。

…失くなったのは彼女の中にいた美月さんだ。

5年間ラティディアとして暮らしていた美月さんが彼女の体から抜け出している。

しかし完全にではない。ほとんど抜けだしているはかすかには残っているようだ。


今回の爆発の衝撃のせいか?


俺たちがこの世界にきたのも爆発のせいだ。

やはり爆発は俺たちに深く影響するのか?


美月さんはあの時の爆発を思い出して帰りたがったのか?

父さんの側に・・・。愛しい人の待つあの世界に。


しかし彼女は自分の世界へ帰る道が見つけられなかった。。

ラティディアの体から離れてはみたが帰ることができなかった

だから美月さんの精神は彷徨った。


そして見つけた?


彼女が一番大好きな父さんからもらったシトリンの石。

父さんの想い、美月さんの想いが詰まっている石。

彼女はそこに入り込んだ?


そう考えるのが一番納得がいく

やはり美月さんは父さんが好きなんだ。

そんなの分かっている。

嫌なくらいわかっていたはずじゃないか。


少し頭を下げて考え込んだ。

俺は少し震えていたのかもしれない。


帰れる可能性はあるのか?

同時に爆発が起これば帰れる?

しかし帰ったところで俺達は死んでいるんだ。

そんな可能性考えても仕方ないだろ。


頭を振った。


どうしたい?

どうすればいい?

ラティディアを手に入れても美月さんは手に入らない。


何から考えたらいいんだ?


現実の状況を把握するのが精一杯だった。

頭の中が〝はてな〟だらけだ。


ラティディアの胸にあるペンダントをじっと見る。

少し見過ぎたようだ。

ラティディアが気にしている。


しかし…あの石…ほとんど白かったはずだ。

しかし少し黄色ががっているような気がした。


美月さんがその中に入り込んだのと何か関係あるのか?


『翔、しっかりしろ!おい、大丈夫か?』


ジェイが叫ぶがあまりにも打ちのめされすぎている自分がいるだけだった。


美月さんは俺を選ばない…。

俺は美月さんの手を取ることはないのか…。

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