16話-2 転生王子として楽しく生きて行くとしようか その2
俺は手を自分の目の前に持ってきた。
じっと手の中にある指輪を見ていた。
キラリと黄色の光が目に入った。
しかし手の中に握りしめといた指輪は白く濁っていた。
はっと気づいた。
そうだ俺たちは爆風に飛ばされて・・・!
ようやく我に返り飛び起きた。
美月さん・・・?
美月さんはどこ?
の前に・・・ここどこだ?
病院?
いや・・・違う?
俺の目に入ってきたのは煌びやかに部屋。
ベッドも広い。
どうやら病院ではなさそうだ。
だって俺はこんなに豪華な部屋でVIP対応されるほどの身分はない。
それにあれだけの爆発に巻き込まれたのに目の前にある自分の手には傷一つなかった。
更に体はどこも痛くない。
周りを見渡すが美月さんはいない。
『お前誰だ?』
は?誰かの声が聞こえる。
きょろきょろあたりを見渡すが誰もいない・・・。
『なんだ?お前?』
何だか自分の中から聞こえる。
胸に手を当ててみる。
『だからお前、何なんだ?』
『はっ?』
状況を把握しないといけないようだ。
先ほどの声の主はジェイデンと言う奴らしい。
『だから俺はこの国の第二王子なんだよ。』
王子?今時そんな身分があったのか?
『起きたらお前が俺の中にいたんだ。何した?』
そして俺はそいつの体の中にいるようだ。
鏡をみても実感はわかない。
紫の髪の毛をした10歳くらいの少年。
髪を引っ張ってみた。
『おいこら!痛いだろ!』
ん・・・染めているわけではないらしい。
少し細身でだが立派な服を着ている。
ピラピラとした白いブラウス。
胸のフリルを手に取ってしかめっ面をした。
『お、俺の趣味じゃないぞ!メイドの奴が勝手に選ぶんだよ!』
やはりこいつの中に俺がいるのか?
周りを見渡してみた。
何だ?この世界はファンタジー?…みたいな感じの部屋。
少し窓から体を乗り出した。
キョロキョロと首を左右上下に動かした。
城・・・城だ・・・。
今俺がいるのは城の中だ。
つまりこいつが住んでいるところが城だ。
さっきの第二王子って身分は本当なのか?
『お前に嘘ついてもしかたないだろう!ったく何なんだお前!』
俺はそんなジェイデンの声を無視してベットにストンと腰を落とした。
あーあ。これが巷で流行りの異世界転生ってやつか。
って転生でいいのか?
だってこいつの意識、意志はある。
異世界憑依?
『異世界?ここが?』
ジェイデンはいちいち俺の言葉に反応する。鬱陶しいな。
『あ!今お前鬱陶しいって言った!俺の体に勝手に入ってきて何言ってるんだ。』
『あー!俺だって何がどうなっているか分からないんだ!!黙っててくれないか。少しくらい考えさせろよ!
あ、ごめん・・・。俺も戸惑っているんだ。少し時間をくれないか?』
『ああ・・・わ、わかった。なるべく早くしてくれよな。朝ごはんの支度ができて呼びにきてしまうから。』
ジェイデンはそれから少しの間、何も言わないでいてくれた。
俺は考え込んでいた。
ほんの数分で答えの見つかるものではない。
申し訳ないが考えをまとめるのに一日かかってしまった。
爆発の衝撃で俺たちは死んだ?
そしてこの世界に飛ばされた。
異世界転生。
『お前は自分の世界で死んだのか?』
少し落ち着いてジェイデンと会話をしながら考えをまとめることができるようになった。
『多分。そこで記憶が途切れている。』
『そ、そうか。お悔やみ申し上げます。で、なんでお前は俺の中にいるんだ?転生ってよくわからないが生まれ変わることなんじゃないか?』
『まあ俺たちの世界のはやりだ。』
『はやり?』
ここは何かの乙女ゲームとか小説の舞台なのか?
こいつは攻略対象なのか?
第二王子か・・・?
ゲームの攻略対象とかになるとめちゃくちゃやばい立場じゃないか!
ふつう第一王子が攻略対象の第一候補だろうが第二王子だって何人の中の候補になっていてもおかしくはない。
ヒロインが誰を選ぶかで変わってくるが
とにかくモブキャラであることを祈るしかない。
ってそもそもゲームの舞台でないことを祈る方が先か。
しかし何か聞き覚えある名前なんだよな。
ジェイデン=ハーディン=リルクラード
ジェイデン?
リルクラード?
ん…どこで見たっけ?
やっぱり何かの物語の登場人物なのか…。
はあ…。
『ため息吐いたって何も変わらないぞ。なんだその乙女ゲーム?攻略対象って?』
ジェイデンが話しかけた。
確かにそんなことを考えていても仕方ない。
俺は少し説明をしてみた。理解できるか?
『はははっ。ヒロイン?俺が攻略対象?面白い話だな。』
『だからもしかしたらの話だ。』
『まあお前が俺の中に入ってきただけでも十分面白いからいいや。まあ仲良くしようよ。』
『あ、ああ、ありがとう。』
幸いジェイデンも俺を受け入れてくれた。
割と軽い…
『軽くないぞ!』
状況に柔軟に対応できる奴だ。
『まあ、なるようにしかならないからな。』
『お前、楽観的だな。』
『だって毎日つまらなかったんだよ。面白そうじゃないか?』
『って、ジェイデン、お前本当に王子なのか?らしくないな。』
『ジェイでいいよ。翔って俺の知らない知識がかなり持っているんだね。頭の中でぐるぐるいろいろなことがあふれている。なんか楽しい。』
『俺にとっては魔法の方が面白そうだけどな。』
お互いの知識が共有されていた。
頭の中でその知識が混ざっていくのがわかる。
なんやかんやで時間は経っていった。
ジェイとのやり取りが割とこの生活が楽しく心地よいものになっていた。
多少はホームシック的なものになることもあった。
指輪を見つめてはため息をついて物思いにふける時間が無いわけではなかった。
そんなときはジェイは黙っていてくれる。
幼いながらジェイは頭がよく回った。
彼がうまく立ち回ってくれたから周りから不審に思われることはなかった。少し態度や言動がおかしくなったかもしれないが噂されることもなかった。
ジェイってかなりやり手?できる奴?
『俺はできる奴なんだよ。』
一言多い…。
王子様って感じだな。
彼の兄である第一王子のエディシスフォードは最近少しだけ様子の違う弟のことを気遣ってくれた。
『自慢の兄上なんだ!』
ジェイは割とお兄ちゃん子のようだ。
金髪にこげ茶の瞳。
ああ、青じゃないんだ。
割と王子駅って金髪、碧眼ってイメージだけど、
茶色も落ち着いていていいな。
しかしこの兄弟…
『兄上とは母違いなんだよ。』
俺が言う前にジェイが答えた。
『でも兄上は俺に優しいんだ。』
『お兄さんが好きなんだ。』
『お前も好きになるよ。』
エディシスフォードはちょくちょく遊んでくれた。
王太子てして立つ為に勉強とかいろいろ大変なのに…。
素直にいい人だという印象だった。
兄がいたらこんな感じなんだ。
すこしくすぐったい気持ちになった。
エディシスフォード・・・やはりどこかで聞いたことがある。
あー!何だっけ?思い出せないや。