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16話-1 転生王子として楽しく生きて行くとしようか その1

これから翔視点になります。

氷結 翔。


大学二年生。

小さい時に母親を病気で亡くした。

父さんが男手一つでここまで育ててくれた。


その父さんが最近再婚した。

それも15歳も下ときた。

俺と5歳しかかわらないじゃないか。


何やってんだよあの色ボケおやじは。

もう40歳のおじさんがなに若い女に手出してやがるんだ。

どこで知り合ったんだ。

仕事関係?合コン?婚活?


まあ今まで苦労かけたから。

再婚には反対はしない。むしろいいんじゃないか。

しかし25歳か…。ないだろ。

どんな女なんだろう。

なんて思いながら父さんの指定したレストランに向かった。


驚いた。

唖然となった。

立ち尽くした。


父さんの隣にいる女は俺を見てにこりと笑った。

そして父さんを見て甘い顔をした。


少し明るい茶色に染めた柔らかそうな髪をふわふわさせて

もう一度俺をみて頭を軽く下げた。


俺は何が起こっているのかよく分からなった。


そう、ひそかに想いをよせていた人が父さんの隣にいたからだ。


しばらく頭が真っ白だった。

ようやく俺は自分がショックを受けたていたのだということに気づいた・・・。


そう俺が思いを寄せていた人は父さんの恋人だった。


まさかこいつにとられるとは思わなかった。


ようやく我に返った俺は足を進めた。


足取りはふらついていないか?

ちゃんと笑えているだろうか?


彼女は俺の通う大学の図書館で司書をしていた。

父さんはその大学の化学科の教授だ。


俺も化学には興味があった。まあ親子だな。

その大学は施設が充実していたし少し興味のある研究をしていた。

しかし1番の決め手は家から近かったからだ。


まあ、そんなことどうでもいいか。


目の前で仲睦まじく笑う二人。

ああ、できればその真ん中に割って入りたいくらいだ。


父さん曰く、彼女から猛アタックされたらしい。

父さんは初めは断っていたが悪い気はしなかったようで再婚を決めたらしい。

美月さんは年上が好きだったのか・・・。


俺から見るとなんだかボサっとした髪をしていて

メガネがズリ落ちている。

パッとしない。

しかし割と顔は整ってはいる。

笑うと年甲斐もなく可愛いと学生の中では人気がある。


こいつは母性本能をくすぐるタイプなのか?


いろいろ考えながら父さんをじっと見ていた。


俺があっけにとられている間に美月さんは義理の息子になった俺に何の気兼ねもなく男二人の暮らしに家族という名で入ってきていた。


まさか義理の息子が自分に恋心を抱いているなんて思わないだろう。


父さんもわざわざ息子の好きな人と結婚しなくてもいいのだけどな。

って俺の気持ち知らないから仕方ないし、しょせん親子なんだから好みは同じってことか・・・。


しかしなんでこいつがいいんだ?

いつも美月さんを観察するように見つめる。


何か弱みを握られて脅されているのか?

遺産・・・っていうほどの財産はないか・・・。


あ~!何だか自分の心がどんどん病んでいくのがわかる。

いいかげんに割り切らないといけない。

こんな気持ち、父さんや美月さんにはばれてはいけない。


好きな人が同じ家にいる。

毎日その人の手料理が食べられる。

朝起こしに来てくれる。

俺に笑いかけてくれる。


なんて幸せ日々だ、って・・・

幸せがそこにあるものか!

その相手は父さんの配偶者と言う立場だ。

まあ恋愛なんてそんなものだ。


今まで男所帯だったせいで行き届いていなかったところが

どんどん改善されていく。

あきらめきれないどころか良いことばかり見えてきて

どんどん好きになっていく。


泥沼だ・・・。


少し明るめの茶色に染めたふんわりした髪はいつもふんわりと後ろでくるりと止められてる。

そんなに高くない背。濃くない化粧。

笑うと25歳には思えないくらい幼くなる。

笑った時にチラリと見える八重歯がかわいい。

図書館で本を借りると必ず何かしら話をしてくれる。

その話し方が穏やかでやわらかくて優しい。

話す話題は主に時事だが、たまに雑学的なことも話してくれた。

違う視点から見た感想や俺とは違う意見を聞いているうちに

いつしか気になりだしていた。


5歳上と言うこともありひとまず何も行動できずにいた。

図書館に通う回数を増やすくらいだった。


そんな人がお風呂上がりで火照って頬を赤く染めて濡らした髪の毛をタオルでふきながら目の前に立っている。


我慢できるわけないだろう!

俺はそんなに物わかりのいいやつじゃないんだよ!


ああ!!!

後悔しかない。

攻めておけばよかった。

何もできなかった自分を恨むことしかできなかった。


「父さんのどこがよかったの?」

なんて聞いた時には

「優しい笑顔かな?あとは考え込むと他の世界に行ってしまって見ていないと危なかった過ぎて・・・。ふふふっ」

和らいだ甘い顔をしながら彼女は笑った。


聞かなきゃよかった。


そんな気持ちを隠しながら過ごしていた桜の咲き終わった頃。

美月さんが家に来てに3か月が経っていた。


「翔、ごめんね。重たいでしょう?」

「大丈夫。バイト代もたまったから車買おうと思うからもう少し我慢してね。」

「くしゅん!」

「花粉症、本当にひどいね。」

「もう、春は好きだったのに、花粉症になってからは気分が重くなるわ。」

「花粉症もあと少しの我慢だよ。」


帰りはだいたい美月さんと一緒だ。

帰りに夕食の買い出しに行くのが日常になっていた。

少し田舎にある家はスーパーから遠い。

駅前のスーパーから重い荷物を持って15分くらい歩かなければならない。


そしてその日も同じように買い物をして帰る途中だった。

そしらぬ表情を顔に張り付けてたわいもない会話ができるようにはなっていた。


「ん?」

「どうしたの?」

「何か・・・?」


変な臭いがした。

花粉症がひどい美月さんの鼻には届かないらしい。


「ガソリン?」


近くにあったガソリンスタンドに車が勢いよく入って行った。


彼女は俺よりガソリンスタンドに近い方に立っていた。

美月さんは突然俺を突き飛ばした。

結構飛ばされた。

不意を突かれたのもあったが美月さんは思った以上に馬鹿力だった。


キキキッツーと音がした。

その直後爆音が鳴り、瞬間周りが明るく光った。

と、思ったら熱い爆風が勢いよく吹いてきた。

その爆風の勢いはそこに立っていることが困難にさせた。

俺の体は後ろに吹き飛ばされた。

瞬きをするくらいの一瞬のことだった。


俺よりほんの少し早く爆風に吹き飛ばされた美月さんの体が俺の目の前に飛ばされてきた。なんとか美月さんの腕をつかみ自分の方に引き寄せたが爆風の勢いに耐えられるわけもなく一緒になってかなり飛ばされた後に地面に叩きつけられた。


消えゆく意識の中、隣で頭から血を流している美月さんをみた。

俺は美月さんの顔が青白くなり、つないでいた手先が冷たくなって行くのを息絶え絶えでみていた。

俺の方が少しだけ長く意識があったようだ。

美月さんの目は開いていなかった。

息をしているのか・・・

しかし自分の体も動かなければ息するのも苦しい。

俺ももう死ぬのかと思ったその時、美月さんの指に光るものが見えた、

プロポーズされた時にもらったのだと嬉しそうに嵌めていた指輪だった。

仕事中はしていなかったが帰りにはいつもしていた。

父さんを思い嬉しそうに笑う美月さんの顔を思い浮かべたら

死ぬ時まで父さんのものなんて耐えられないって思ってしまった。

かろうじて動かせる指で何とか外した。

そして手のひらにギュッと握りしめた。


ごめんね。

だって俺も君が好きなんだ。

だから死ぬなら父さんのものではない君と死にたい。


再び目を開けた時、

手には美月さんから外した指輪が握りしめられていた。


俺は手のひらを握り返してその存在を確かめた。




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