表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

51/83

15話−2 溺愛王子は元悪役令嬢を囲います。 その2

ちょっと父上待った!

ラティアが答えに困るような質問をしないで欲しい。何て意地悪なんだ。


しかし少し彼女の気持ちを聞きたい自分がいる。

私は少し躊躇った。


ラティアはチラリと私をみて柔らかく微笑んだ。

そして真っ直ぐに父上を見た。


もう彼女の気持ちに従おう。

彼女が私を好きではなければ彼女を離してあげる覚悟をしなければならない…か…。


「私は国王陛下に誓って言います。わたくしはエディシスフォード王太子殿下を愛しています。殿下を一生支えていきたいと思っています。」


は?


「そうか。ただの噂に踊ろされた私が愚かだったのかな。

エディシスフォードすまなかったな。お前たちを試すようなことをして。」

「えっ…あ、えっ?は、はい・・・。」


頭がいっぱいっぱいだった。

彼女は彼女は今なんて言った?

私を愛してると言わなかったか?

それも一分の迷いなく、まっすぐに・・・。


ラティアは私を少し心配そうに見ていた。

私と目が合うと口角を上げて微笑んだ。


なんか落ち着いた。

私は彼女の肩を抱いた。

彼女は私を見ながら安心したように顔を綻ばせて、ふっと息を吐いた。

「ありがとう・・・ラティア。」

彼女は目を閉じてゆっくり首を横に振った。


宰相がうんうんと更に大きく頷いていた。


「これは婚約破棄というより、結婚を速めた方がよさそうだな。」

「なるべく早くお願いいたします。」

「しかしこの書類は誰が持ってきたのだ?」

「それは今から調べます。少し心当たりがあります。

 申し訳ありませんが内密にお願いいたします。」

「ラティディア嬢、出来の悪い息子だがよろしく頼む。」

「私にはもったいないお言葉です。」


宰相は泣きながら何度も顔を縦に振っていた。


陛下の執務室を出る前に宰相が一言だけ言った。

「ラティ、一度家に戻って来なさい。私にお前を褒める時間を与えて欲しい。」


ラティアはクスリと笑って軽く頷いた。


私達は陛下の執務室の外にでた。

ラティアはドアに背中をつけて大きく息を吐いた。

「はあ・・・緊張した。」

「ラティア・・ありがとう。」

「私、何言ってた?もう緊張しすぎて忘れちゃったわ。」

「は?忘れた?」


何だか話が長くなりそうだから

ラティアと執務室へと歩いていた。

どのみちまた書類が山になっているだろう。

片付けないといけない…。


しかしそんなことはどうでもいい。

今日は仕事なんてできそうにない。


「だから…私と一緒にいたいと…」

「そんなこと言ったの?」

「ああ、初めは歩いて行くだったな。」

「あら、やだ。私なんかかっこいいわね。」

「ん、かっこ良すぎ。でもなんでそんな考えになった?」

「…だからさっき言った。」

「覚えてるじゃないか。」

「何か王太子って割合わない職業よくやってるなって思ったの。

それでも一生懸命に仕事をこなして、いっぱい考えて、何がみんなな為にいいのか悩んでいるエディシス様を見たらかっこいいなって…。私にできることがあればいいなって。一緒にいたいなって思ったの。

結局は好きなんだなって…」


今たしかにラティアは好きだと言った。

何だかすごく嬉しい。


「で、私の支えになりたいって…」

「恥ずかしいから言わないで!」

「盾になって」

「だから!言わないで!」

「癒しになって、」

「もう意地悪!」

「で…」

彼女を抱きしめていた。

「私を愛していると言った。」

ちなみにまだ執務室には着いていない。

廊下だったが、もう我慢出来なかった。


「で、陛下に誓うんじゃなくて私に誓って欲しいな。」

「ラティア、私は君を愛してる。君は?」

「だから…ここでは恥ずかしいから」

「ねぇ、ラティア?」

「まだ廊下だから!誰かに見られるかもしれないから

離して!」

「やだ。言うまで離さない。もう待てないんだ。」


私の腕の中で、ジタバタするラティアが愛しい。

「ラティア。」

「うっ…」


私の方が当然力が強い。

ラティアは静かになって下を向いた。


「だって…ただ夢中で…」


記憶無くしてから彼女には驚かされてきた。

自分の気持ちにも驚いてきた。

あの時はこれほど彼女が自分にとって大きくなるとは思わなかった。


「ラティア・・・私も君と一緒にいたい。」

「あなたと一緒にいれたらいいなと思ったのは確かで、

だから婚約は…そのまま…にして…欲しかったって思った。あなたと一緒に居れなくなるのは嫌だった。でも、ただ好きじゃなくて…」


「だから?」


少し自分が意地悪なような気がした。

しかし彼女の口から聞きたい。

私を見て言って欲しい。


彼女は顔を上げて私を真っ直ぐに見た。


「エディシス様、愛してる。」


私は我慢できなくて彼女の頬に手を当てた。

彼女は顔を上にあげて少し潤んだ水色の瞳で私を見た。

そして静かに目を閉じた。

彼女の柔な唇に自分のをものを重ねる。


「ごめん。嬉し過ぎて…」


彼女の手は私の胸の辺りの服をギュッと握っている。

その姿が可愛くてついつい角度を変えて何度も堪能してしまう。


時間が止まっているようだった。

彼女と私だけの時間。


「やっぱり仕事は明日にしよう。」

彼女の耳元で囁いた。

すぐにでも君を私のものにしたい。


「ハーデス様が泣きます!」



※※※


「ハーデス様、ダメですよ。」

エディシスが全然執務室に来ないから迎えにきた。

彼の扉をノックしようと手を上げた時、後ろから声をかけられた。

「カーラ?何でこんな廊下にいるんだ?」

「いやだ、野暮ですね。」

カーラがここにいる…ってことは

ラティディア様も一緒に中にいるってことか?

さっきの流れから行くと…

腕を組んで納得した。


「今日は仕事は無理かな。」

「ですね。二人の幸せの為に諦めて下さいね。」


扉から離れようとしたら

…声が聞こえる。

私は手を口に当てて顔を熱くさせた。

おいおい、エディシスの部屋でしてるのか。

寝室に行く時間も惜しいのか…。

寝室なら奥にあるから扉からは遠くて聞こえないぞ。

「やだやだ、ハーデス様、何赤くなっているんですか?」

「君こそここで何をしているんだ!」

「こうやってお邪魔しにくる人を追い返しているんです。ふふふ。」

「楽しんでないか?」

「あら?一段と…」

何故か咄嗟に扉に耳を当ててしまった。

「ハーデス様も好きですね。」

ニヤリとカーラが笑うと。

「あ、いや…友達のようやく掴んだ幸せだと思うとな。」


「おや?兄上の部屋の前で二人で何してるの?」

「ジェイデン殿下。あなたこそ何しにきたんですか?」

「あの後どうなったのか心配でね。それに薬草も貰いたいし…ん?」

ジェイデン殿下にも聞こえましたか…。

ジェイデン殿下は扉を指差しながら私達と扉を何回も見ていた。

「薬草は書類の入っている荷物に入っていますから執務室だと思います。」

「ようやくか…」

「はい、ようやくです。」

「わりと兄上は忍耐強かったな。

視察中に絶対に手を出すと思っていたが。」


「掛けは私の勝ちですね。」

カーラが楽しそうに言った。

「ああ、仕方ないな。すぐに手を出すと思ったんだがな。」

「私もそっちにかけたから負けだな。」

「約束通りハーデス様は最高級のチョコ、ジェイデン殿下は最高級のケーキをお願いしますね。」

「仕方ないな。」

「ああ、そのくらい安いものだな。まあ、よかったよ。」



ガチャ、バタン!

エディシスの部屋の扉が開いた。

上半身は半裸の状態でシャツを羽織っていた。

髪の毛は無造作におろされている。

目が座っていた。

かなりお怒りだ…。

「うるさい!」

一言だけ言って扉が閉められた。


だから寝室に行けよ…。

カーラが更に喜んでいるだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ