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14話-3 溺愛王子に付き合いましょう。 その3

私は馬車の窓からそろりと黒ずくめの人たちがザザザッっと周りを囲んだのを見た。

多分15人はいる?

こっちはエディシス様とハーデス様、護衛の人が2名。合計4人だ。


ハーデス様が華麗に馬から降りて剣をかざした。

さすが王太子お付きの人だ。

さっと構える姿が美しすぎます。


黒いハーデス様の髪と金色のエディシス様の髪が見える。


エディシス様も手に持った剣を鞘から抜いて構える。


敵は次々に剣を掲げて襲ってくる。

キィィンと剣の交わる音がする。


ハーデス様の流れるような剣さばきに見惚れてしまった。

華麗だ。

黒い髪が動くたびに靡いて素敵すぎる。


エディシス様も負けてはいなかった。

滑らかなハーデス様に比べると力で押していくタイプのようだ。彼らしい。

王太子として知力や統率力だけではない。武力も必要なんだろう。

本当に王太子ってすごい職業なんだ。


バタン!急に馬車のドアが開いた。

「きゃ!」

「おい!こっちに女がいたぞ!」


待て待て!ちょっと…。


「ラティア!」

「エディシス!ここは大丈夫だ。早くラティディア様のところへ!」

エディシス様が敵の攻撃をかわしながらこっちで来る。

こんな大変な時に私は足手まといにしかならない。

何も武器がない・・・。殿下を待つしかないの?

「女は殺すなよ!」

「わかってるって。」

どうしよう・・・。


まってジェイデン様は何て言った?

魔法の授業では攻撃魔法なんてバンバン…って、

怖いくらいだったとか。


記憶失くしてからは簡単なことは教えてもらっていた。

実践ではやったことないけどできる!

だってジェイデン殿下は私は筋がいいっていった。

そして記憶を失う前は何らかの魔法を使えた!

呪文なんて知らない。でも祈るしかない!

黒ずくめの男の手が私にかかりそうになった。


「ラティア!」


「出て!!!!!!!」

私は手を前にかざした。

とにかく何か出ろ!なんでもいい!


ザザザッ。

「ヒエッ!」

「えっ?氷」

私の手の周りから氷の粒が弾丸のように放たれた。

「痛てて!冷たい!」

自分の手から出てきたものにびっくりしている間にエディシス様に手を引かれて馬車から降ろされた。

そしてエディシス様は私を背に隠した。


「ちっ、何人いるんだ。きりがない。」

さっきの15人は訂正します。

倍の30人はいます。


私は殿下に背中に守られていた。

周りを見渡しても何もない。逃げることろなどない。

ふっと左の方がきらりと光った。

「エディシス様、左!!!」

私の声とともに殿下が左を向いた。

矢が飛んできた。

キイイイイインとした高い音が響いた。

殿下は剣で矢を落とした。

しかしすぐに2本目が飛んできた。

間に合わない。

「お願い!弾いて!」

私はまた手をかざした。

今度は氷の壁ができて矢をはじいた。

私はびっくりして自分の手を見た。

当然隣の人も目を大きく見開いて私の手を見ていた。

シュッ!また音がした。

エディシス様は何とか剣で跳ね返した。

しかし弓矢を打つ敵には距離がある。剣では対抗できない。

さらに前方からも敵が来る。

一か八か・・・私はちゃんと魔法の勉強をしていた方に賭ける!

大きく息を吸った。


ジェイデン師匠!見ていてください!


私は手を軽く横に振った。

冷たい風が吹く。その付近は凍っていく。

これなら届くはず。

私の足元には冷たい風が舞い始めた。

エディシス様が驚いたように私を見た。

思いっきり手を上にあげた。

「お願い!」

私が思いっきり手を下におろした。

ヒュンと音をたてて周りを凍らせながら風がグルグル回りながら飛んで行った。


ガシャ、ザシュッ。グエッ。バタッ。


仕留めた?


エディシス様が私をみた。

「さすがだ。しかしラティア!私からは離れるな。」

エディシス様は私をかばいながら敵と剣を交えていた。

私も多少攻撃に参加した。

やはりジェイデン様の言った通りだ。

少し楽しいかも。

氷の女王になったみたいだわ。

少し冷たい視線を敵に向けてみる。


エディシス様は苦笑いをしながら

「怒らすのはやめた方がいいな・・・。」

と、小さな声でつぶやいた。



「ラティア、助かった。ありがとう。」

「みなさん無事でよかったです。」

安心したら腰が抜けてその場に座り込んだ。

「大丈夫か?」

「本当に怖かった」

「少し自分の魔法に楽しんでいたように見えたが・・・。

何だか怖さまで感じたよ。」


…魔法を使うと人が変わるんでしょうか?


「エディシス様!手から血が出ています。すぐに手当てを!」

「ああ、さっき少しよけ損ねたところか。」

ビリッ。

「ラティア??」

私はスカートの裾を破って血が出ている部分を拭いた。

ちなみに魔法で水を出して濡らしました。

そして血を綺麗に吹いて別のスカートの切れ端でぎゅっと縛った。

「変わらないんだね。君は。ふふっキツっ。」

「ひとまず辺境伯の屋敷に戻りましょう。」

「本当に君には驚かされるよ。」


伯爵の屋敷に戻って部屋のベッドにダイビングした。

疲れた・・・。

エディシス様は襲撃犯の処理でまだ戻ってこない。


よかった。みんな無事で。

しかし本当に王太子って何だ?

仕事は多いし、こんば襲撃なんて日常茶飯事?さらにはその後処理までしなければならない。

やってられない。


しかしエディシス様は泣き言は言わない。

いつも一生懸命だ。書類に目を通すのだって一枚一枚真剣に見ている。

人と話す時だって相手のことや国のことを常に考え

一語一語を考えながら言葉を選んでいる。

いつだって彼は王太子として立とうとしている。


そんなに頑張っていたらいつか倒れてしまう。

彼を支える人が必要だ。私にできるだろうか?


あれだけ一生懸命に頑張っている人を支えてあげたい。癒してあげたい。

背負うものがあるのなら少しでも持ってあげたい。

私があの人にあげられるものがあるのならば差し出してあげたい。


弱音を吐く場所があるのだろうか。

心から休める時があるのだろうか。

倒れそうになったら支えてくれる人が隣でいるだろうか。

温もりを求めたら優しく抱きしめてくれる人がいるのだろうか。


何だか胸が熱い・・・。

私は彼が寄り掛かって気を休める処になりたい。

あの人の側にいてあげたい。


いや、少し違うかもしれない。

私が側にいたい。

やっぱり私エディシス様のこと、かなり好きじゃない。

もういいや。

私はエディシス様が好きだ。

あの人といたい。


私は机に置かれていた三日月のペンダントを見た。


失くした記憶の中にもし私が心惹かれている人がいたとしても

もう気にしないでおこう。

もし記憶が戻ったら苦しむかもしれない。

でも今エディシス様の手を取らない方が苦しい。

ジェイデン様は記憶は戻らないと言っていた。

そう思う方が楽だということだ。

いつ戻るかわからない記憶にびくびくしていても始まらない。

私は今を生きていこう。

エディシス様と・・・。


キラリとペンダントの石が光った。

あら?黄色が更に強くなってる?何で?

すごくきれいに輝いていた。

そのペンダントをつけた。

またキラリと光った気がした。


今日エディシス様が戻ってきたら私の気持ちを告げよう。


あなたが好きですって。


しかし、エディシス様は夜遅くまで戻ってこなかった。

私は頑張って起きていたがやはり疲れには勝てずにベッドで寝てしまった。


朝起きるといつの間にかエディシス様は私を後ろから抱きしめた体勢で隣で寝ていた。


「ん…ラティア?もう起きなきゃいけないか?」

「まだ、少し早いかもしれません。」

「じゃあもう少し寝させてくれ。」

私はくるりと向きを変えた。

エディシス様の首筋に顔を埋めた。

「ふふ、ラティアの髪がくすぐったいよ。」

私は更に自分の顔を押し付けた。

エディシス様は強く私を抱きしめてくれた。

こんなことで疲れが少しでも取れてくれるといい。

気休めにしかならないがそう思いながら私は心地よい二度寝に入った。


「エディシス様…好きです…」


しかし、彼は目を閉じている。

私の言葉はきっと夢の中で聞いていることだろう。









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