12話−3 悪役令嬢は終わりにしましょう。 その3
「ジェイデン、いろいろありがとう。」
「まあその顔をみるといいようにまとまったみたいだね。」
「顔に出てるか?」
「まあね。さっきラティも来たからね。真っ赤になって話をしていたよ。」
「ああ…そうか。ラティアも来たのか。」
真っ赤になってって…想像するだけで可愛く感じる。
私も単純な男だな。
しかし、相変わらずここは落ちつくのか?
「で、報告しに来ただけ?手はだせなかったって。くくくっ」
「あーーー!何で弟にからかわれるんだ。」
「だってあの流れ男なら絶対にするでしょう?」
「でも、ラティアが私を好きになってから私のものにしたかったんだ。」
「そんなこと綺麗ごと言ってるといつの間にはほかの奴にとられちゃうよ。」
「ジェイデン!私はラティアを離さないからな。」
「宣戦布告かよ。だから大丈夫だって。兄上のものを取るつもりはないから。割と平和主義なんだよ。」
「そうか…しかし…」
この間といい、今と言い私を挑発するようなこと言ってないか?
あれは全て私の為だったと思っていいのか?
少しくらいその気だったんじゃないだろうな。
「思い出したらどうなるんだろうな。」
「記憶のこと?」
一か月経っても戻るような気配はない。
このままでも構わないと思う。
いや全然構わない。
だけど思い出してしまう日が来るんじゃなかだろうか。
「婚約破棄をしたかったのはラティアの方だと思う。
だから心配なんだ。一応何となく理由は分かった。
しかしまだ何かあるかもしれない。」
「記憶が戻ってもどうもならないんじゃないか?
まあ戻らないと思うけど。
そんなに心配ならそれまでに子供でも作ったら?
兄上は王太子なんだから子供、さらに男の子でも生まれたら逃げられないよね。
まあラティをまず自分のものにしてからだけどね。」
「…ハーデスと同じこと言うな。」
「それが早いんじゃない?だって彼女は割と流されるタイプだよ。」
何やらジェイデンがごそごそと机の上を触り始めた。
そして何やら小さな小瓶を持った。
「あった。これこれ。これあげるよ。」
「何だ?」
「夜、盛り上がるよ。」
「いるか!」
「兄上ってからかうと本当に面白いね。」
「可愛くない弟だ。」
「大丈夫、兄上が優しく抱きしめてあげていれば彼女は逃げないよ。お人好しだからね。」
「ああ、しかしなんか好きな人がいたような感じがするんだ。
同じクラスとかそんな奴知らないか?」
「ん…知ってるような。知らないような…」
「なんか知ってるのか!」
「以前言ったけど、そのことはもう大丈夫だよ。
気にする必要はないと思うよ。」
「ラティアの片思いだって感じなのか?」
「そんなことより今を、この先のことを考えていくことだ。
ラティは彼女なりに考えているよ。そのうち話してくれると思うからちゃんと聞いてあげてね。」
「ラティアがお前に何か言ったのか?」
「まあいろいろ考えてたみたいだけど、彼女は大丈夫だ。ちゃんと前に進んでいるよ。俺が手を貸すことなんてもう必要ないんだ。まあ兄上より大人かもね。
本当にここは悩み事相談場じゃないんだけどね。二人ともなんなんだ。」
「と、いうかなんかお前が知っているような気がするんだ。」
「兄上達は知らない方がいいんだよ。」
ジェイデンは窓の外を見て笑っていた。
***
「お嬢様!視察の服ですがこれでいいでしょうか?」
明後日から視察外交だ。
朝からカーラがせっせと持っていく荷物を作っている。
「任せるわ。カーラの見立てなら問題ないわ。」
「この服の時はチョーカーをしてくださいね。セットになってますから。
あ、その三日月のネックレスは外してくださいね。
え~とあとこの服にはこのイヤリングをしてください。
紙に書いておきますか?」
「ああ、そうね。」
何だか緊張してきた。
しかし2泊3日なのにすごい荷物ね・・・。
私はペンと手帳しか持っていない。
書類とかは全部エディス様の方にまとめてある。
手帳は以前しおりの挟んであったごく普通の革の手帳だ。
私は真っ白な手帳をぺらぺら見ていた。
すると最後ページの一つ前のページに何か書かれていた。
何?読めない?どこの文字?
ここの付近の国の文字ではないわ。どっか遠い国のかしら?
3行ほど書かれていたその文字は私には読めなかった。
その1ページ前を開いた。
そこにはこの国の文字で
『ラティディアへ』
と書かれていた。
少し癖があるその字体には覚えがあった。
私の字?
私は慌てて部屋を出た。
「ラティア、ちょうどよかった。呼びに来たんだ。
どこか行くのか?」
部屋を出たところでエディシス様に会った。
「ええ・・・ちょっと・・・でも何か用ですか?」
「今、会議が終わったんだけれど、視察に持っていく書類で少し変更したいところがあるんだ。
手伝ってくれないかな?」
「わかりました。でも・・・」
「何か急ぎの用事だった?」
「あ、いえ・・・。後で大丈夫です。先に書類を片づけてしまいましょう。」
書類の変更は結構大変で結局その日私は疲れ果ててベッドに倒れ込んだ。
エディシス様たちはまだ天手古舞で仕事をしていることだろう。




