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1話-3 悪役令嬢演じます。その3

私は家に帰ってきた。

もう本当に上から目線の高飛車ご令嬢の役は肩が凝るわ。


コキコキと肩を鳴らした。


「お嬢様、おかえりなさい。」

「あ、カーラ。ただいま。厨房のお仕事終わったの?」

カリラッテは私に付いてくれているメイドだ。

「今日はお疲れさまでした。」

「本当に疲れたわ。」

「言われたものを換金してきました。フロスも手伝ってくれたので割と高く買い取ってくれました。」

「ありがとう!」


私はわがままを言っていろいろ服や宝飾品を買ってもらっています。

悪役令嬢なので基本です。

しかしそんなに高価そうな服は好きではないし宝飾品も興味はない。

一応それなりに悪役令嬢らしい格好や化粧はしますが学園は制服なのでよかったです。

なので買い取りしてもらいお金に換えて修道院や孤児院に行く時に差し入れとして持っていくお菓子や服にしています。

何かあったら困るのでそれなりにお金も貯めています。


まあ、あと5か月頑張らなきゃ。


「お嬢様は何で悪いように見せているんですか?こんなに優しいのに。」

「そうね・・・私みたいな子は王太子妃なんてなってはいけないのよ。

婚約破棄されないといけないの。」


だってどうせ捨てられるんだし、お父様の爵位は取り上げられるんならこの家にお金なんて必要ないでしょう。

財産没収でどこぞの貴族や王族が潤うなら街で生活に困っている人にあげた方がいいじゃない。

だからわがままにふるまって何でも買ってもらっているよね!

その後ハッピーな未来が待っているから今はこれでいいのよ!


「お嬢様は王太子殿下を好きではないんですか?」


ん~?私の好きなのは栄さんだけだから気にもしなかったわ。

王太子ね・・・。あんな馬鹿な女に引っかかっているようじゃダメね。

でも顔はいいわ。さすが王子様ってことある。

しかしそんなに踏み込んで話したこともないし・・・。


でも、ラティディアの初恋は第一王子だったわね。

何となく彼を見た時に分かってしまった。

だって胸がキュンとした。私が栄さん対して抱いている感情と同じ。

ラティディアは王太子殿下が好きだったと思う。


「ん・・・初恋だったのかな?」


カーラの瞳が大きくなって輝いた。

実はカーラこの手の話が大好物だ。


「初恋なんですか!だったらこのまま結婚すればいいじゃないですか、なんで破棄されようとしているのですか?」


殿下に捨てられるのは私。

あんな出来の悪そうな王太子に捨てられるなんて嫌なんだけどね。

できればこっちから捨ててやりたい。

しかし相手は第一王子、王太子です。面倒くさくなるのであちらから婚約破棄されるのをお待ちしています。


「ここだけの話ね・・・誰にも言っちゃだめよ。

いずれこの公爵家に大きな騒動が起こるの。爵位も取り上げられるくらいのね。

だからそんな公爵家の令嬢が王太子妃になるのはダメなの。

エディシスフォード殿下に迷惑がかかるでしょう。」


まあ本当のことだ。

あの後思い出したがお父様は国王陛下殺害未遂の罪で捕まるはずだ。

多分誰かに嵌められるのだろう。


割とカーラは口が堅い。私に忠実だ。信用しているから少しだけ本当のことを言ってみる。

爵位取り上げになるのは本当。でもそれで王太子に迷惑がかかるからっていうのは嘘。別に王太子なんて関係ない。

私は隣国辺境伯とのハッピーエンドをいただくつもり。

こっそり調べたら29歳で騎士上がりの強そうな方なので許容範囲です。


「そうだったんですね。お嬢様は殿下の事をそんなに慕っていらしゃるのですね。

殿下に迷惑がかかるから自分から身を引くなんて。なんて痛々しい。お嬢様!私はどこまでもお嬢様についていきます。私はぜったに誰にもいいません!」


カーラ、私を信じすぎ・・・。それに想像力ありすぎ。

慕っていないけど、否定するのは面倒だ。


「だからあなたも紹介状を書いてあげるから他の働き口をみつけてね。」

「いいえ、必要ありません!私は何があってもどうなろうともお嬢様についていきます!」

 


それから4日後の週末、仕方なく王宮に向かった。


「あら、ラティディア様、何しにいらっしゃったんですか?」

ピンクの髪をフワフワさせてヒロインちゃんが声をかけてきた。

「ダリア様、こんにちは。私は陛下に呼ばれただけです。」

「私はエディシスフォード殿下に会いに来たんです。ふふっ。」


まあわざわざ言いに来なくてもいいのだけれども…。


「ダリア様、人に会った時は先に挨拶をした方がいいと思います。あなたはもう少し礼儀を学ばなければなりません。」

「あら、またそんなこと言うのね。面倒な女ね。

だから殿下にも愛想尽かされるのよ。」


愛想を尽かされるようにしたのは私自身なのでよくわかっています。


「ねぇ、私に殿下を奪われて悔しくないの?」

全く・・と返事をしたいところだが面倒な事になりそうなのでスルーしてみる。


「話がないのなら失礼します。」

「何?身分が上だから見下して。嫌な女。

私が王太子妃になったらみていらっしゃい。

あなたなんて跪かせてあげるんだから。」


何やら勝手に怒って行ってしまった。

もう王太子妃気分ね。

もう本当に王太子の趣味疑うわ。

人によって態度を180度変える絶対に私なら友達になりたくない女のタイプ。

まあ男ならコロリと騙されるところね。

跪くこともないわね。私はこの国からいなくなるんだから。


チャリっとフロスから貰ったペンダントが鳴った。

私はそのペンダントを取り出して見つめた。

光に反射した白の石は少し黄色っぽく輝いていた。

仕方ないわ。フロスのセンスは認めてあげるわ。ふふ。

綺麗だわ。


私はそのペンダントを光にかざして見ていた。


栄さんがくれた婚約指輪を思い出した。

このくらいの大きさの黄色の石がついていた。

シトリン・・11月私の誕生石だ。

あの爆発の時もしてたはずだ。

あの指輪は私の位牌の隣にでも飾られているのかしら…。

何だか悲しくなってきた。

栄さんどうしているだろう?

大丈夫かな?泣いてない?ご飯食べてる?


私は死んだんだ。

だからあの場所、栄さんや翔のところには帰れない。

翔は大丈夫だったのかな?


この世界で未来がわかっているから自分の未来に夢や希望なんて持たなかった。

前世の記憶が戻ってからの5年間私には空虚感しかなかったのかもしれない。

栄さんをだけを想って生きていくと決めた。

栄さんを忘れてしまう自分は許せない。考えられなかった。

栄さんを忘れてしまうのが怖かった。


だから小説に沿って私は生きていくだけ。

第一王子を好きになるわけではない。辺境伯を好きになるわけではない。

単に小説に動かされているだけ。


ギュッとペンダントを握りしめた。

指輪のかわりにこれを大事にしよう。

もう一度ペンダントを見つめた。


私は何でこの世界に一人だけ来てしまったんだろう。

栄さん、翔、あなた達に会いたい。


「あなた達のところに帰りたい…」


今から陛下と会わなきゃいけないのに嫌だ・・。

目が赤くなってしまう。


陛下の仕事がもう少しかかるということで

私は王宮にある自室にいた。

この国では王太子の婚約者用の部屋があるのだ。

王太子の婚約者ともなるといろいろ舞踏会やら外交やら出番が多い。

そのために設けられた部屋だ。

しかし私はほとんど使っていない。悪役令嬢で殿下の愛情もない。

そんな婚約者に出番などないのだ。

さすがにわがまま、煌びやかな悪役令嬢らしい部屋にしてあると思う。

金の縁取りの家具に、金の壁紙の模様、金の置物・・・。

机の引き出しにも宝飾品が並ぶ。

しかし私はこんなのは嫌いだ。あくまで悪役令嬢に似合うようにしてみてるだけ。

本当はシックな感じが好きなんだけどな。

本棚に手をかける。難しい政治の本が並んでいるように見えるが実はカバーだけ変えてる。

中身はおとぎ話だ。

悪役令嬢とおとぎ話なんて似合わなすぎる。

私はその中の一冊を持って机の前に立った。

机の一番下の引き出しを開けた。


シンプルなこげ茶の革の手帳。

中にはしおりが一枚だけ挟んである。


赤と紫のアネモネの押し花のしおり。

赤のアネモネは栄さんが私にプロポーズをしてくれた時に贈ってくれた花。

あなたを愛する・・・。

そして紫のアネモネ。あなたを信じて待つ。

そういつかこの世界が終わりあなたが私を迎えに来てくれるはず。あなたのそばに帰れるのだと信じて待っている。

そんな私の心・・・。


私はそのしおりを見ては栄さん、あなたを思い浮かべる。

もう今日は嫌だ。涙しか出ないな。

栄さん・・・会いたくて会いたくて仕方ない。


窓の外を見ると黄色のリボンを付けた三毛猫が歩いていた。

あら?猫なんていたんだ。

この王宮で飼われているの?

基本動物は好きだ。

私は慌てて涙を拭いて部屋を出て庭に出た。

そしてさっきの猫を見つけた。

私はついていった。

「ねえ、ネコさんどこ行くの??」


私は庭の奥の方まで来たみたい。

あまり見たことない風景だ。

目の前に小さな小屋があった。

私は小屋の前に立った。

小屋の扉には

『実験中、立ち入り禁止!』

と書かれていた。

ちょっと待って!この看板・・・。


私の前世の旦那様の栄さんは大学の化学の教授だ。

家には実験室があった。

私はよく栄さんを呼びにその扉の前でノックをした。

同じようにその扉には

『実験中、立ち入り禁止』

と、書かれていたのだ。

何だかその扉を開けたい衝動にかられた。

もしかして栄さんがいて、笑って私を見てくれるかもしれない。

そんなありもしない妄想に私は浮かれた。


小屋の扉をノックしようとしたとき

その扉がカタカタと震えだした。

この感じ知っている!

私は足元の猫を抱き上げてあわててその扉から離れようとした。

しかし時すでに遅し・・・

大きな音とともに扉が飛んだ。小屋が爆発した。


私はまたしても爆発で命を落とすことになるのかな?

なんて思いながら腕の中の猫をぎゅっと抱きしめた。


一話はこれで終わりです。

五話まで見直し終わりましたので、

ひとまず五話までは

一部分2000から3000文字付近で連日アップに変更します。


お読みいただきありがとうございます!

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