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10話-3 婚約破棄はしない。 その3

私が目が覚めたらカーラさんが隣で舟を漕いでいた。

カーテンから陽が漏れていた。

ああ、朝なのか。


「カーラさん、おはよう。」

「お嬢様!お目覚めですか?」

カーラさんが私に抱きついて泣き出した。

その眼にはクマができていた。

ずっとついていてくれたのだろう。

「カーラさん、ありがとう。あなたがいて本当によかったわ。」

「お嬢様、よかったです。お嬢様がいなくなったら私は、私は・・・。」

「何かいろいろ心配かけたみたいね。申し訳なかったわね。ありがとう。」


カーラさんは泣きながら私の手を握った。

「お嬢様は一人で抱え込みすぎます。

本当に心配しました。もうこんなことは嫌です!」

「ありがとう。」


私は体が重く感じたがゆっくりと上半身を起き上がらせた。

「まだふらっとするわ。」

「二日食べていないからですよ。スープお持ちしますね。」

「ありがとう。」


私はなんとかスープを飲んだ。

まだカーラさんは泣いていた。

もう私まで泣けてきた。


朝はまだベッドに体を預けてのんびりしていた。

「先ほど王太子殿下のところにはお嬢様がお目覚めになったことは話してきました。とても安心されていました。」

「ん??」

安心している??私は婚約破棄をお願いしにいったはずだが・・・?

私が首をかしげているとカーラさんも同じように傾げた。

「お嬢様・・・もしかして?どこまで覚えているんですか?」

「え?だって私はエディシスフォード殿下に婚約破棄をお願いしに行ったらあなたが言いたい放題いって・・・。」

「言いたい放題って・・・。まさかその先は?」

「え?その先?何かあるの?」

カーラさんは手を額にあてて天を仰いだ。

「王太子殿下、せっかくのあなたの喚呼はお嬢様は覚えてないようです。届いておりません。

本当に残念な方です。」

「はっ?」


そしてお昼からは着替えてソファでこの2日のことをいろいろカーラさんと話をしていた。


「お嬢様は王太子殿下と子爵令嬢が一緒にいたのが嫌だったんですか?」


直球だ・・・。


「あ、いや…そういうわけではなくて…ね。

いろいろとね。ぐるぐる考えてしまったみたいね。」

「やっぱり王太子殿下が好きなんじゃないですか。」

「と、いうか…私が悪く演じていたせいでこうなったわけだし、そんな私がエディシスフォード殿下の側にいてもいいのかな?って…」

「何をどう聞いても王太子殿下が好きなんだとしか聞こえませんが・・?」

「そうじゃなくて、私のせいで・・・」

「もう隠さなくてもいいんですよ。」

「だから!カーラさん!そうじゃなくて・・・。」

「もう違うとは言わせませんよ。フフフっ」

「違うって言っているじゃない。」

「お嬢様はお嬢様なんです。自分の思うように生きてください。」


「自分の思うように…」


「そうです。好きなように生きて下さい。

私はなにがあってもお嬢様の側にお仕えしております。」


…自分の好きなように…。


カーラさんは私にミルクを入れてくれた。

きちんと覚ましてある。

やはり彼女は私のことをよくわかっていてくれている。


ひとまずさっきの話は横に置いておいて、話題を変えよう。


「もうっ、カーラさんが殿下に言いたい放題言うから心配したわ。もしかして殿下が怒って不敬罪であなたを連れて行ってしまうのじゃないかって。」

「お嬢様・・ご自分が大変な時に私の心配までしていただいて・・・私は嬉しいです。」

カーラさんが涙ぐんだ。

「あなたがいなくなったら本当に私は困るわ。大事な友達じゃない。」

「友達だなんて恐れ多い・・」


彼女は泣きだすととまらない。

横目で少し笑いながらミルクを手にして一口飲んだ。


「で、本当に王太子殿下が何を言ったのか覚えていらっしゃらないんですか?」

「それは大事なことなの?」

「大事すぎます・・・。もう私があんな取り乱した王太子殿下見ることはないと思います。」

「は?」

「何だか王太子殿下とお嬢様の間にはすれ違いがあるようです。」

「そうなの?」

「あの日にちゃんと話をするつもりだったようですよ。」

「そういえば話があると言っていたわね。って婚約破棄されるんじゃないの?」

「殿下は絶対に婚約破棄しないって言いましたよ。」

「えっ?何で?」

「そりゃあ、お嬢様が好きだからに決まってるじゃないですか。だってあんなに情熱的に『お願い!行かないで!』っていってましたから。」

「あら?そんなこと言っていたの?ん・・・。覚えてないわ。」


カーラさんのことは覚えているけどエディシスフォード殿下のことはほとんど記憶ない。

もう完全に頭の中で存在を削除していたのかしら?


「でも婚約破棄されるんでしょう?そうダリア様言っていたし。」

「そこも覚えていないんですか?ダリア様とは別れるって言っていました。話をしたけどなかなか納得してもらえなくて困っているようでした。」

「だって殿下とダリア様は恋人なんでしょ?私との婚約が破棄されれば結婚できるでしょ?別れる必要なんてないじゃない。」

「だから!王太子殿下はお嬢様が好きなんですって言ってますよね。」

「ありえないって。本当に何を言っているの?」

「もう本当に王太子殿下がお気の毒になってきました。」

「え?」

「王太子殿下はお嬢様を抱きしめながら・・」

「え?抱きしめながらって?はっ?そんなことしたの??」


顔が熱くなってきた。

抱きしめられて…って。


「ここからですよ。そして泣きながら」

「泣きながら?え?何それ?大げさね。ふふふっ。」

「本当です。ちゃんと聞いていてくださいね。」

「ええ。わかったわ。」


カーラさんは私を抱きしめた。そして私の肩の付近に顔をうずめた。


「いいですか?お嬢様」

「はいはい。いつでもいいわよ。何?」


カーラさんは声を低くして話し出した。


「私は絶対に君との婚約は破棄しない。絶対に君を離したくない。

お願いだ。私に話をさせてくれないか。私の話を聞いても婚約を破棄したいのなら仕方ない。

でもお願いだ。私の気持ちを聞いてほしい。お願いだ・・・ラティア・・行かないでくれないか。って・・・え??あっ?????」

「またまたカーラさんってば。殿下はそんなこと言わないわよ。

何かの舞台みたいな歯の浮くようセリフな言わないで。どうしたの?」


カーラさんの顔が青ざめていた。




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