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9話-3 悪役令嬢は夢を見てはダメです。その3

次の日、私は朝から視察の資料など目を通さなければいけないものもあるのでひとまず机にむかって仕事をしていた。

隣には未処理の書類がある。

ラティディアがいないと進まないな。


朝にも様子を見に行ったが昨日と同じ姿勢でベッドの上でうずくまっていた。

結局あれから食事もとらない、寝ていないようだ。

動きもしない。

カーラにすら話をしようとしない。


何があったんだ。

やはり朝にも聞いてみたが無駄だった。


しゃくだがジェイデンに任そうか…

いやいや私のそういうところが駄目なんだ。

とにかく出来る限りのことをしよう。

しかし何をどうすればいいんだ。


そんなことを考えながら書類に目を通していた。

一向に減らない書類。

いつもより少ないがまったくはかどらない。

まあ明日ラティディアを公爵家に帰すことになっているから

宰相の嫌がらせも少ないみたいだ。

しかし娘の心配はわかるが私の体調も考えてくれないか。

昨日からラティディアの事を考えてあまり私も寝ていない。

するとトントンと扉がノックされた。


「誰だ。」

「ハーデスです。ダリア様が会いたいって来てるらしいけど。」

「今日は朝からか・・・。はあ・・・。」

「このところ毎日だね。」

「もう会わないと言ってある。くれぐれも勝手に王宮に入れないように門番には再度言っておいてくれ。」

「なんか拗れてるね。」

「何回も話した。もうこれ以上話すことはない。昨日も勝手に王宮に入れたらしいね。おかげでジェイデンのところに行こうと思って中庭を歩いていたら捕まったよ。申し訳ないけど門番にそれなりの処分を与えておいてくれ。」

「わかったよ。門番もダリア様には困っているようだ。」

「門番には多少力づくでも構わないと言っておいてくれ。」

「さっきは私が説明しにいったがダリア様はかなり怒っていたよ。」

ハーデスはうんざりだと言う顔をした。

「なかなか納得してくれない。もうどう言えばいいんだ。」

私は自分が情けない。

何度言っても聞いてはくれない。もうどうしたらいいんだ。

「冷静さを欠いてそんな子を側においていたのはエディシスだよ。」

「確かに初めはよかった。というかあの頃王太子としての立場から逃げ出したいことばかりでラティアディアにはきついことも言われていた。ジェイデンを推す声もあって・・・。私は本当にどうかなりそうだったんだ。ラティディアのかわりようは思っていた以上に私には打撃だったのだと今となっては思うよ。

その時は本当にダリアには癒されていたんだ。優しい言葉をかけてくれた。

でも逃げていただけなんだ。王太子という立場から逃げていた。

ラティディアはそんな私を叱っていただけだった。

逆にダリアは逃げてもいいんだと言った。

ダリアには感謝はしている。あの時誰かに優しくしてもらわなければ私の心は耐えられなかったかもしれない。私は弱い人間だった。しかし私は王太子だ。彼女に甘やかされていていつまでも現実を見ずに逃げていてはいけない。

やはり彼女じゃ私は駄目になる。それが分かった。それに彼女の能力では王太子妃は務まらない。無理だ。」

「で、きちんとその事は話したのか。」

「話すには話したが全く納得してくれない。すぐに癇癪を起こす。」

「で、いまだにこの状態か・・・。やはり彼女は周りを見れない子だったね。」

「すまない。」

私はハーデスに頭を下げた。

「書類が通ったと彼女に言ったんだろ?彼女としてはもうラティディア様と婚約解消をするだけだと思っていたから余計納得できないんだ。」

「そうなんだ・・・。書類は揃った・・。」

「その書類はどうした?」

「まだ私が持っている・・・。もう必要のないものだ。

安易には捨てられないものだから悪用でもされたら困るからな。時間がある時に燃やそうと思っている。」

ハーデスは腕を組んで安心したように私を見ていた。


「あとはラティディア様か。」

「虫がいいかもしれないがなんとかやり直してもらうおうと昨日言うつもりだったんだ。しかしあんな状態だ。」

「話もできないか…。」

「今朝も様子を見に行ったが変わらない。」

「記憶が戻ったとか?」

私は首を横に振った。

「違うようだ。」

「もしかしてカーラに何か聞いたのか?」

「多分そうだと思う。記憶を失くす前の彼女は何だったんだろうな。

何故婚約を解消する必要があったのか未だに分からない。」

「確かに…。そこは重要だな。」

「ああ、今度カーラに聞いておいてくれないか。」

「わかったよ。割と口は固いから時間かかるな。」

「すまないが頼む。

 私はもう一度機会を神がくれたと思っていた。」

「確かにそうかもしれないね。」

「少しはうまくいく自信があったんだけどな。

でも、もう間違えられない。」


話しながら書類に目を通していく。

しばらくはパラパラめくる紙の音だけがしていた。

しかし頭の中に書類の内容はほぼ入っていかない。

手は止まりっぱなしだ。


今回のラティディアの塞ぎようと婚約破棄を望んでいたことには何か関係があるのだろうか?

彼女がわがままで悪く振る舞っていたのも、ダリアの虐めの話に対して否定しなかったのも全部私との婚約を破棄する為なのはわかっている。

彼女は記憶を失くしたせいでその理由を見失なった。

記憶を失くしている以上探し当てるのは困難になりそうだ。


昨日、何があった…。

やはりカーラに聞くしかないか。しかし・・・。


「もしかして記憶が戻ったのか…。それとも断片的な何か思い出したのか…。それとも他の理由なのか…。全く検討がつかない。

カーラから何があったのか聞き出そうと思ったが無理矢理はダメだ。ジェイデンに頼もうと思ったがそれでは解決にならない。

何があった…。何故あんな状態になった。

いくら考えてもわからない。自分がどうしたらいいか見つからない。私は彼女に何ができる。心配することしかできないのか。ダリアのこともだが、自分が情けなく思うよ。」

「お前少し変わったか?以前は自分以外のことはあまり気にしてなかったよな。」

「そんな奴に見えてたのか…」

「ラティディア様のことになると違うな。本当に俺からみたら彼女には感謝しかないな。」

「もし私が原因なら…私はラティディアとの婚約を解消した方がいいのかもしれない。」

「お前はそれでいいのか。」

「よくはない。まだ彼女には自分の気持ちを話せていない。」

ダリアの件がちゃんとするまではダメだ。

その為にはダリアにはわかってもらわないといけない。

私が悪かったのだから仕方ない。

そう思っていたが、もう限界だった。


早くラティディアをこの手に抱きしめたかった。

だから昨日話をしようとした。


しかしラティディアはずっと部屋に閉じこまったままだ。

話なんてできる状況ではない。


このままでは彼女は倒れてしまう。

私はどうしたらいい?

何をしたらいい…。


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