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8話-1 婚約破棄しようとしていたのはだあれ その1

今日の私の一日も変わらない。


朝起きるとカーラさんが手伝ってくれて朝の用意をする。

しばらく二人でたあいもない話をする。

そうしていると朝ごはんが運ばれてくる。

基本朝ごはんはこの金ぴかの部屋でいただく。

少し高価そうな置物なんかをクローゼットにしまってある。

まだ見えるようになった。

クローゼットの中の煌びやかな服は奥の方に追いやった。

基本初めに選んだピンクと水色、その後白っぽいものが増えて3着のローテーションだ。着れそうなものはそれしかない。


今日も一日始まる。


「お嬢様、今日も午前中図書館ですか?雨ですが行かれますか?」

「図書館の静かなところに雨が降っている音が響くのが好きなの。

ぜひ行くわ!」

「わかりました。用意しますね。」


コンコンと扉が叩かれた。

「誰だろう?こんな朝早く??」

カーラさんが扉を開けた。

「ラティ!」

そこにはウルウルと瞳を潤ませたお父様が立っていた。

私が近づくと抱きしめられた。

「ラティ!大丈夫か?」

「く、くるしい・・・おと・お父様・・・離して・・・。」


今日は朝からお父様とお茶をすることになった。

「殿下には何もされていないか?」

「大丈夫よ。心配しないで。」

何かされるって…?

心配はそこ?


「しかしどうしたんだ?いつも家の中以外はもっとこう・・なんていうか・・・」

胸が開いていたり、キラキラしていたり服を着ていたのに・・・って言いたいんでしょう?

「まあ疲れただけだわ。」

「まあそれならいいのだが・・・。家のみんなも心配しているぞ。」

「もう大丈夫よ。たんこぶも無くなったし、体のズキズキするのも治ったわ。」

「違う。そこじゃなくて王太子殿下に嫌な事言われたりしていないか?」

やっぱり・・・。私が王太子殿下に嫌われていて、婚約破棄されるのが分かっているんだ。

家中みんな知ってるんだ。

家だけじゃないか、周りもか。


「大丈夫。何もされていないわよ。私もお母様やラスクードに会いたいわ。」

ようやく記憶もだいたいつながったし、もう公爵家に戻ってもよかった。

しかし・・・。

「じゃあ今日にでも帰ろう!!」

「エディシスフォード殿下が許可をしてくれないの・・・。」

「あの男!ラティにあんな扱いをしていたのにこの期に及んで何なんだ!先日もお前をまだ王宮にとどめて置きたいと訳のわからない書状を持ってきおって!!」

青筋を立てたお父様がテーブルにバンッと手を置いた。

ああ、そんなこといっていたわね。

しかしここまでお父様をおこらせるなんてどんな扱いをされていたんだ?

「まあまあ・・・。」

あとからカーラさんにでも聞きましょう。

「また今日にでも家に帰りたいとお願いしてみます。」

「ラティ、何か嫌なことがあればいつでも逃げてくるんだぞ。私は陛下に泣きついてくる。当分仕事しない!ストライキだ。」

お父様…仕事は仕事です。

宰相が働かないと国は困ります。

そこはやめてください。


「カーラ、頼んだぞ。」

「旦那様、かしこまりました。」

カーラさんが頭を丁寧に下げた。


「大丈夫だ、ラティ。更にお前に何もできないように王太子殿下には仕事をたくさん回してやるからな。」

「あ・・・お父様・・・。」

あ、そろそろ行かなければいけない。明日また来るからな。」


・・・お父様・・・仕事に私情を挟んではいけません。

エディシスフォード殿下、申し訳ありませんでした。

どうもいやに殿下のところにお仕事が回ってきていたのはご想像の通りお父様のせいのようです。

全く家に帰ることを許してくれないあなたが悪いのです。

しかしお父様に言い忘れましたがこの頃殿下のお仕事を手伝っているので

あまり仕事が増えるのは私的には嫌です。

それにストライキをされて更に仕事が増えるのも嫌です。


「ラティディア様」

図書館で静かに本を読んでいたら突然ハーデス様がやってきた。

「せっかく本をお読みのところ申し訳ありません。」

私は本を読むのをやめて顔を上げた。


「どうされましたか?わざわざ図書館まで来て・・・。」

「陛下がお呼びになっております。申し訳ありませんが急いでご用意をお願いいたします。」

「国王陛下が?」

あ、お父様がストライキに入ったのかしら?

「エディシスも一緒だから、用意ができたくらいに呼びに行かせます。」

「あ、いえ。用意なんてありませんのですぐに伺います。お忙しい陛下をお待たせしては申し訳ありません。すぐに伺いますのでエディシスフォード殿下の執務室まで連れて行ってください。」

「は?支度しないの?」

「だって服はこれを入れて3着しかないので着替えてもあまり変わり映えしません。よろしくお願いいたします。」

ハーデス様がニコニコしている。


もしかしてここで婚約破棄を言われるのかもしれない!

エディシスフォード殿下も一緒なら可能性はある!


エディシスフォード殿下の執務室に来た。

私を見た殿下の時はまた止まってしまったようだ。

いい加減やめませんか?

私もそろそろ疲れました。

しかしやはりさっきのハーデス様のように最後はにっこり笑っていた。

なんだ?


「エディシスフォード殿下、さあ早く行きましょう。陛下をお待たせしてはいけません。」

「その服で行くのか?」

「ええ、だって3着しかありません。どれも似たようなものです。」

同じことを言うのは疲れます。

もういいかげんにしてほしいです。

そんなことを話していたらカーラさんが走ってきた。

「お嬢様!お洋服をお持ちしました。どうか着替えてください。

陛下にお会いになるのに普段着ではいけません。」


・・・多分流れ的に婚約破棄されるだけでしょう?

着飾ったって仕方なくない?

でもカーラさんがせっかく息を切らして持ってきてくれたのだからしょうがない。


「カーラさん、それではお願いしてもいいですか?

しかしまた部屋まで戻ると時間がかかってしまいます。

陛下をお待たせしてはいけません。」

「着替えるだけなら隣の部屋を使うといい。私が休憩に使う部屋だ。着替えるくらいならできるだろう。」


エディシスフォード殿下、ハーデス様、カーラさんともに安堵のため息を吐いた。

そんなにこの服じゃダメなんですか?


カーラさんが確認の為に王太子殿下に服を見せた。

「王太子殿下、お嬢様、慌てて持ってきましたがこれでよろしいでしょうか?」


ああ…無理だ。煌びやか過ぎだわ。差し出した服は少し大人びていた。

ふらっとしてしまった。

「あ、いや…無理…。」

「はっ?」


はいはい。いつも着ていたじゃないかと言いたいんですね。

しかし、紺色のいかにも高そうなその服は胸が開きすぎている。恥ずかしすぎる。胸がないとずり落ちてきそうです。

私は顔を下に向けて自分の胸をみた。びっくりした。

両手で胸を持ってみた。余る・・・。ムニムニできる。

これは嬉しいかもしれない。じゃああの服を着てもずり落ちないかもしれない!


「何してるんだ?」

エディシスフォード殿下が目の前にいるのを忘れていた。

胸から手を慌てて離した。

「あ、思ったより大きいと言うか。…あ、いえ。」

「は?」

また目を丸くしていた。

なんかエディシスフォード殿下とハーデス様の視線を胸に感じます。じっと見ないでください。恥ずかしいです。


結局エディシスフォード殿下の部屋にあった薄い水色の服になった。

何故こんな服をエディシスフォード殿下は持っているのだろうと一瞬考えたが答えは簡単でしたね。

ダリア様へ差し上げるつもりだったんでしょうね。


しかし少し胸の部分がキツくて袖も裾も短いです。

仕方ないですね。



「ラティディア=サーチェス=ストラヴィー、陛下に御前に失礼します。」

私は深々と頭を下げた。

良かった。マナーは体覚えていて自然とでてくる。

5年間の私に感謝!


目の前に40歳くらいの金髪の陛下と紫に近い黒髪の王妃様が座っていた。

「ラティディア嬢、話はエディシスフォードから聞いた。今回はジェイデンがすまなかった。怪我などは大丈夫だったか?」

「はい、ご心配をおかけしました。もう大丈夫です。」


お父様までいるわ。やっぱり。

手を振ってる。私も振り返す?いやいやだめだわ。

にこりとだけ笑っておいた。


「本当にジェイデンには困ったものだ。」

と陛下が言うと王妃様はうんうんと頷いている。

ジェイデン殿下の髪色は王妃様に似たのね。


「ところでラティディア嬢。そなた今日はいつもよりシンプルな服を着ているがよく似合っている。」

「お褒めいただきありがとうございます。エディシスフォード殿下にいただきました。」


隣に立っていたエディシスフォード殿下が少し肩をピクリとさせたのが分かった。

実は私ではなく恋人にあげようとしていたものですと、言いたいです。


「仲良くやっているようだな。」


えっ?私は今選択を間違えましたか?

陛下はうんうんと嬉しそうにうなずいている。

仲がいいアピールをしてしまったようです。

しまった婚約破棄をしてもらうならそんなことは言ってはいけなかった。


でも・・・そんな雰囲気にはみえません。

単に私の体調を心配してくれているように思います。


「父上、大丈夫ですよ。ラティディアとはちゃんとやっていますから。」

「お前がどこぞの子爵令嬢にうつつを抜かしているという噂を耳にしたが・・・。」


隣でしまったという顔をしていた。

だれでも知っていることなんでしょ?なぜそんな顔をする。

ばれて嫌な事ならするな。

全くこれで本当にこの国は将来大丈夫なのか?

王太子ってもっとこう威厳があって

まっすぐでかっこよくて・・・。こんな情けない顔している人に国の未来かけるんですか?

遥か彼方からお父様の怒りのオーラを感じます。


「それはあくまで噂であって私はラティディアと結婚しますよ。」


は?

私はびっくりした顔をして殿下を見た。

ちょい待て!婚約破棄はどこにいく?

おかしいじゃないでしょうか?

この男、陛下の前だからいい顔をするんじゃありません!


そそそっと隣に近づいて来たエディシスフォード殿下は

突然肩を抱いてきた。

ああ、左斜め前から怒りのオーラが痛い・・・。お父様少しおさめてください・・・。


「そうか。杞憂のようだな。安心したよ。」

「そうです。心配しすぎです。私は来年まで待てないくらいです。」


はっ?安心しないで下さい!

殿下も嘘はいけません。嘘は!!

来年まで待たなくていいですので今、婚約破棄してください。


「それではそのままの予定で準備するといい。宰相もよいな。」

「はい…。」

お父様…顔に嫌々感がでています。

目が!目が座っています。

予定…準備?何ですか!!

婚約破棄は何処に行くのですか?


「エディシスフォード、お前がラティディア嬢が心配なのはわかるが宰相も寂しがっておる。そろそろ家に帰してはどうだ。これ以上宰相に泣きつかれるのは困る。」

「できる限り考慮します。しかし頭を打つと後から症状がでてくると言われていますので

私も心配なのです。わかってください。」

「まあそういうな。結婚するまでしか手元におけない宰相の気持ちも考えろ。」

「わかりました。善処します。」


何かわけがわからなくなり、あれよあれよという内に終わってしまった。


「ラティ。」

ストラヴィーのお父様が走ってやってきた。

「お父様。わざわざありがとうございました。」

丁寧にお礼を言う。

「いやいや、私がストライキ宣言したらすぐに陛下が動いてくれたよ。早く帰っておいで。」

「はい。」

やはり脅したのか…。

まあこのくらいできないと国の宰相なんて務まりませんね。


「宰相、心配しなくてもいい。私がちゃんとついている。」

隣からエディシスフォード殿下が来た。


…お父様、目つきが怖いです。

仮にも目上になります。お止めください!!


「殿下、ありがとうございます。不束な娘ですがよろしくお願いします。ラティ、殿下を困らせるんじゃないぞ。」


お父様、さすがです。

さっきとガラリと態度を変えました。

裏表ないと宰相は無理ですからね。


しかし被害者、加害者が逆です。

困っているのは私です、

早く婚約破棄してください!!


しかし次の日にお父様は朝、また私の部屋に来てエディシスフォード殿下の悪口を言い続けていました・・・。

きっと今日も殿下の執務室には大量の書類が山積みになることだろう。

今日は午前中から手伝ってあげようか・・・。

少し罪悪感あります。



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