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4話-1 婚約破棄を希望していましたが。その1

エディシスフォード視点です。

私は執務室で書類に目を通していた。

いつもながら目の前の山積みにされている書類にうんざりする。

早く処理しないといけないのだが今日はどうしてもラティディアの事を考えてしまい手が止まってしまう。


ラティディアと私が初めて会ったのは、私が10歳、彼女が8歳の時だ。

彼女は控えめで、明るく、優しく、笑顔がとても可愛いかった。

婚約の話が出た時、彼女が相手なら願ってもないことだと思っていた。


ラティディアとは3年前に婚約をした。

私は15歳、彼女は13歳の時だった。

公爵家の令嬢。

あの時は宰相の補佐をしていた父親も今は宰相になった。

政治的にも身分的にも私的にも問題はなかった。


私の初恋は彼女なのだから。


しかし私との婚約が成立したくらいから彼女は突然変わった。

割と派手なものを好むようになり浪費をするようになった。

身分に物を言わせて我儘なことをいったり、自分の意思を無理矢理にでも通すようになった。


女は怖い。こんなに変わるのか。

なんて思った。


そんな時、ダリアという子爵令嬢とふとしたことから知り合った。

王太子としていろいろ求められることに心が追い付いていかず、不安とプレッシャーに押しつぶされていた頃だった。

ラティディアの変わりようも重なって、私はダリアに安息を求めた。

彼女は私をいつも励ましてくれた。いつも私を肯定してくれていた。

必然と彼女といる時間が多くなった。

それが気に入らないのかラティディアはダリアを虐めるようになったらしい。

ダリアが泣いてラティディアに虐められたと言ってくる。

身分が低いとかで意地悪を言ったり、パーティーでジュースを掛けたり、足を引っ掛けて転ばせる。学園ではプリントを渡さなかったり、時間割変更を教えなかったり…嫌がらせをしていたようだ。


ラティディアには嫌気がさした。

あれほど可愛かった彼女はどこに行ってしまったのだろうか?何が彼女を変えたのか?

少し距離を置くようになっていた。


だから彼女との婚約を破棄してダリアと改めて婚約できるように画策していた。


しかし先ほどラティディアは何と言った?

5年間の記憶が無いと・・・。

5年間ということは11歳か。

つまり11歳から16歳・・・。

学園に入学して1週間後、両親と街に買い物に出た彼女は爆発事故に巻き込まれたことがあった。

彼女の話を聞いている限りあの時の爆発事故からの記憶がないようだ。

そして今回の爆発事故…。二つの事故の間の記憶がなくなったということか。


つまり、私たちが婚約をしていることは知らない。

彼女が荒んでいたことも、ダリアの存在も知らないということだ。

入学式の時に私に笑いかけてくれたティディア、私が恋をしていた時のラティディアに戻ったということになる。


ジェイデンとのやり取りを見ている限り間違いない。

あの彼女の笑顔はあのころのままだ。

8歳の時、11歳の時に私に笑いかけてくれたあの笑顔だ。

私は忘れたことはなかった。

数年間、いくらわがままになったとしてもきっと私だけには笑いかけてくれるだろうと信じていた。

この5年間その笑顔を見ることはなかった。


しかし・・

これは神が与えてくれた奇跡なのか?

記憶喪失…それも5年間だけ・・・。



先ほどラティディアは私には笑顔を見せてくれなかった。

まあ私も悪かった。多分私が嫌そうな顔をしていたのだろう。

こっちがそんな顔して話しかけても笑うことはないだろう。

もし、以前の気持ちのまま彼女に接したら彼女は以前のように私に笑いかけてくれるのだろうか。

私が恋をしてたころの彼女のまま私のそばに寄り添ってくれるのだろうか。


何だか自分が都合の良い奴に思えてきた。


私はラティディアに嫌気がさしていたはずだ。

婚約破棄をしようとしていた。

書類も出来た。あとは父上である国王陛下の承諾の印を貰うだけだ。

今朝まで嫌っていた相手だ・・・。

そんなに相手に何を考えてるんだと自分で自分の考えを否定する。


しかしさっきのラティディアなら私は彼女の手を取りたい。

そんな気持ちが消しても消しても込み上げてくる。

私もさんざん初恋を捻らせているな。


もうなんだか分からなくなり両手で頭を抱えた。

ああもう!自分がつくづく勝手な男だとしか思えなくなってきた。

いやいや私は王太子なんだ!少し勝手でも構わないじゃないか!

違う!身分にものを言わせてはいけない!

あ~!どうしたいんだ!あ~!もう!!!!


私は隣にある進まない書類の山を見つめた。

もう今日は何も進まないだろう。


側近のハーデスには申し訳ないがやる気がでない。

頭の中でいろいろなことがぐるぐると回る。


頭の中で二人の自分が言い争う。


婚約破棄をする手前でよかったんじゃないか?

記憶喪失で何もわからない今がチャンスだ。

このまま彼女を私のものにしてしまえばいい。

私達はやり直せるはずだ。


嫌っていた相手だ。そう簡単に手元に置こうなんて考えるな。

だいたいダリアはどうするんだ。

彼女にはラティディアとは婚約破棄をすると断言した。

記憶が戻ったら前のようにな彼女に戻るかもしれないじゃないか。

だいたい女はコロコロ変わるんだ。信じるな。

意識も戻ったんださっさと家に帰してしまえばいいんだ。

そして予定通り婚約を破棄するんだ。


今日は夕食を一緒に食べる約束をした。

とにかく彼女の様子を見てみよう。

それを見て再度考えてみよう。


扉がノックされた。

ハーデスが来たようだ。

あ、全然仕事終わってないな。怒られる・・・。

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