一章 ニ
荒野には三千の兵。
陸顏は中央に千、両翼に千の兵を配置している。
両翼は錘陣で、中央は横陣である。
両翼から攻めてくるのであろう。教科書通りの配置である。
こちらは六百の兵を五等分している。
全て横陣を敷いた。
一番中央の兵を自分が指揮し、
その右を海延、左側を黄伯が率いる。
最両翼は海延の部下と黄伯の部下が指揮する。
銅鑼がなる前に丘を降りる。今回は野戦での演習である。
相手将の撃破がこの演習の勝利条件だ。
六百の陣に分けたのは、いきなり千人単位の指揮が
不安だったからである。黄伯と海延は経験しているが
していないことを実戦に近い演習でやる程、博打をしたく
なかった。
銅鑼がなる。全身に響きわたる音と共に。兵達が
喚声をあげる。
『さぁ、戦いの始まりだ』
そう叫ぶとより大きな喚声で兵達が答える。
想像以上の高まりで、体が熱くなるのを感じた。
陸顏はまず両翼を突撃させた。こちらの最両翼を狙っている。
ほぼ、読み通りの動きだ。
『黄伯、海延に伝令!最翼に絞り、敵側の両翼をつぶせ!』
六百に兵を五分割したのはもう一つ理由がある。
陸顏の経験から考えると守りに入る事はしない。
経験の薄い自分に対して守る事は恥と感じるからだ。
そして、千人単位で兵を固めると思っていた。
同数での攻め合いになれば、指揮力で勝てると
踏んでいるからだ。
中央突破にしても、両翼から攻めるにせよ、
千人で動くとすればそれ以上の兵を当てたかった。
今回は中央の六百以外が固まれば千二百毎の隊ができる。
数で勝った。
陸顏の両翼が、こちらの最翼とぶつかると同時に、黄伯と海延のそれぞれの隊が挟み込むように陸顏の両翼を攻めこんだ。
相手は