prologue1
濁りがかった深緑の水面に茶柱が一つ
まるで湯呑みの上からぴんと垂らされた糸につるされたように
ゆらゆらとゆれていたーーーーーー
「‥きょうはいいことありそう‥。‥ふぁ〜」
そう呟いたのはほんのり緑がかった黒髪に真っ黒な瞳をもった
色白の少年だった。
桜のはなびらが散らばったような季節ぴったりの
湯呑みをもち、あくびによって出てきた涙を
こする志賀柚貴である。
「全くお前は自分の分の湯呑みと急須しかもってかないんだもんな〜!!!朝飯少しはもっていきやがれ」
そんなほのぼのした雰囲気の部屋の襖を
行儀悪くも足で開けるのは、
長身で無精髭をはやし口にはタバコ‥‥
と思いきや、棒付きキャンディーをくわえ、
左手にはお盆、右手にもお盆と
とても大変そうな太中英治である。
その両手のお盆には、表面がカリカリにやけて脂ののっている焼き鮭に、
ほうれん草の胡麻和え、つやつやまっしろなお米に、豆腐とわかめ、オクラの入ったみそ汁など
なんとも健康的かつ食欲をそそられる朝ご飯がのせられている。
その皿が全て4枚ずつあるのは
ここが
寮だからである
ここは百千学園の所有する
"鶯寮"
全寮制であるこの男子校の生徒のうちこの4人が
なぜこの日本家屋の家にすんでいるのか、それは
所謂変人だからである
簡単に言うと変わりものの集まり‥
そんな日常のお話である