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刻命

一部でウチの子がいつもパンツを被ってるような風評被害が出てますが、そんなことないですよ?


『ねーねー、あたし、おとーさんになまえつけてほしーなー』


 うう、予想はしてたけどやっぱりこうなるのかー。 本当の「おかーさん」差し置いて名前まで付けちゃっていいの? それこそ「おとーさん」みたいじゃないか……


『だめなのー?』


 だからそんな顔しないの!

 ――え~、「おかーさん」様、あなたの娘に勝手に名前を付けること、お許し願います――自己満足だけども、一応は断っておかないと――。


(あらあら、そんなの気にしなくてもいいんですよ。 うふふ)


 ――ん? まさかのお返事? 【意思疎通】さんパネェ……


(わざわざお伺いを立ててくれるなんて、とても律儀なお方なのですね)


 ――成り行きとはいえ、大事な娘さんを預かることになりました。 イスルギ・イクルと申します。


(せっかく名乗って頂いたのに申し訳ないのですけど、私どもは名乗る名前を持ち合わせておりません。 人間達からは “魔の山に棲む竜” などと呼ばれているようですわ。 同じ山に棲むモノ達からは “光の竜” だの “竜王” だのと慕われておりますのに、不思議なものですね、うふふ)


 “魔の山” の “竜王” とか、実は「おかーさん」って凄い方なんじゃ……

 ――しかし、名前を持ち合わせないというのに、娘さんに名付けてしまってもよろしいので?


(かまいませんわ。 生活していくのに都合がいいのでしょう? 貴方の話し方からすると人間のようですけど、他の人間達のように魔物に対する敵意が感じられませんわ)


 ――まだこの世界の事を何も知らないからかも知れません。 でもこうして意思の疎通が出来る相手と、訳もなく敵対できるものではありませんよ?


(うふふ、同じような心を持つ人がもうお一方、今も目の前にいるんですけど……)


 ――え?


(ごめんなさい。 今ちょっと取り込み中なんですの。 娘のことよろしく頼みますね)


 ――あ、ちょっと……


 …………


 ――むう……名付けるのにお許しが出たのはいいとして、気になることを言ってたな……“同じような心を持つ人” か……


『ね~え~! おとーさーん! ……やっぱりダメなの~?』


 ――あ、やべ!


〈ごめんごめん、少し考え事しててさ。 いいぞ~! おとーさん、がんばって可愛い名前を付けちゃうからな~!〉

『ほんと!? わーい!!』


 ぴょんぴょん飛び跳ねて全身で喜びを表す幼女。


 ――「おかーさん」との会話は聞こえてなかったのかな? 俺も話しかけるというより、心の中だけで話をしてたような気がするから、その所為だろうか?

 今は、「おかーさん」との話は伝えないでおこう。 “取り込み中”っていうのも気になるしな。


 可愛い名前――っと言いつつも、既に候補は考えてたりする。 元々渾名にでもするつもりだったし、ぶっちゃけ他に思い付かないってのもある。


〈――クル!〉

『クル? それがあたしのなまえなの?』

〈そう、お前の名前は今から「クル」だ!〉


 俺の名前「イクル」の一部でもある。 親の名前の一部を取って――とかいうのはよくあることだ。

 単にくるくる回ってたとか、表情がくるくる変わるからとか、ドラゴン形態の声が「KRRR……」みたいに聞こえたからとか、そんなんで付けたんじゃないぞ! ホントだぞ!


『クル…… クル! あたしのなまえ!』


 ――!!


 瞬間、急激な倦怠感に襲われる……なんだこれ?

 俺の中から何かがゴッソリ――肉を出した時なんて比較にならない――持ってかれたような感覚。


 見るとクルの身体がうっすらと光っている。

 光はだんだん輝きを増して光の繭となる――。


 ―〈“光竜” に個体名「クル」を定義――保有魔力の充足を確認――「刻命」…………成功〉―


 ――そして光の繭が弾けた!


 ―〈幻想種 “光竜” が亜神種 “幻龍姫” の名前持ち(ネームド)「クル」へと進化しました〉―

 ―〈称号『亜神の保護者(おとーさん)』を獲得――スキル【龍眼】を取得〉―

 ―〈スキル【龍眼】と【領域支配】―【マッピング】【マーキング】の表示情報をリンク…………完了〉―


 もはや聞きなれた天の声が聞こえるが……

 俺は目の前のソレに意識を持ってかれてそれどころではなかった。


 ――クル……だよな? え? ええっ?


 そこに居たのは光と共に服も弾けたのか再び真っ裸になった女の子だった。

 顔、髪、瞳、間違いなくクルだ……ただ、7,8歳児ぐらいだった外見が、15,6歳ぐらいに見えるという一点を除いてだが。


『えへへー、ありがとー、おとーさん!!』


 ――あ、中身はそのままなんですね――って、ちょ!


 そのままクルは俺に抱き着いてきた。

 五感はないので感触なんかはないんだが、脳内3D映像(マッピング)はたわわに実った2つの果実がむにゅっと押し付けられる様子をリアルに伝えてくる。

 中の人は大変お困りですよ?


『あれ? おとーさん……ちっちゃい?』

〈いやいや、クル、お前が大きくなったんだ。〉

『あ、ホントだー』


 ひとしきり自分の身体を眺めたあと、確認するようにその場でぴょんぴょん飛び跳ねるクル。

 2つの果実がもう、ばいんばいんと――ハッ、いかんいかん!


〈クル、また裸ん坊になってるからコレを着なさい〉


 俺は急いで「DP交換」でエプロンを――っておいいぃ!

【メニュー】さん? 余計な気を遣わなくてもいいんですよ? お願いします。

 気を取り直して、「DP交換」からパパッと下着セット(80DP)と服――Tシャツ(10DP)にショートパンツ(30DP)とハーフジャケット(30DP)を選んで出す。


 DPそんなに使って大丈夫? とかお思いのあなた!

  保有DP:894(+960)

 とか凄いことになっちゃってるんですよ。


『さっきのふくとぜんぜんちがうねー?』


 ――うん、それはね、クルのスタイルがいいのと、そっちの方が動きやすいと思うからなんだよ。 その脚を隠すのがもったいないとかじゃないんだよ。


『――?』


 クルがブラを手にして困っている。 着け方がわからないようだ。

 うん、着けた後ならイメージ出来るけど、俺も分かんないから! ホックとか触ったこともないからね?

 ――ってだから、なんで分からないものを取り敢えず被ろうとするのかな?


〈お客様の中にブラの着け方をご存知の方はいらっしゃいませんかー?〉

 ―〈「ブラ」とは何なのです?〉―


 ――え? ああ、こっちの世界には無いのかな?


〈えーと、女性の胸というかおっぱいをですね、支えることを目的とした下着――で合ってるかな?〉


 ―〈この世界では、何も着けないか、サラシを巻くかしかないです〉―


〈あ、そうなんですね。 元いた世界じゃそれこそいっぱい種類があって、運動する時用とか、寄せて上げて胸を大きく見せたりするのとか――〉


 ―〈なんですとー!!〉―


 ――うわっ!


〈お、お姉さん? やけに食いつきがよくないですかね?〉


 ―〈…………この話題に食いつかない女性はいないと思うです。 神である前に一人の女性として、この胸格差問題に真剣に取り組む必要が――〉―


 なにか語り出しちゃったけど、放っとこう。


〈クル! こっちのを着けなさい。〉

『はーい』


 仕方がないのでチューブトップタイプ(20DP)に変えました。

 早く服を着てくれないと目のやり場に――どこにやっても見えちゃうので――困るのです。


 ――そして「おかーさん」ごめんなさい。 俺はやらかしてしまったかも知れません。


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