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紫水晶の川のほとり

作者: 白峰サチコ

牧神が歌うかのような、清きせせらぎの音の朝。

陽の光は緑の葉の一枚一枚を、柔らかくなでて

いつものように、「おはよう」と挨拶をする

眠たげに、潤いを帯びていた花々たちもようやく目覚めた。

朝が始まる。今日もまたこの世に素晴らしい音楽が流れるのだ。


乙女が、水浴びにやって来る。朝の儀式。

草花、そして小動物たちも皆そって、彼女がやって来るのを待っているのだ。

小鳥は彼女に微笑み歌いかける

「今朝もあなたはいつになく美しく輝いている。」


乙女はなめらかなミルク色の肌に、近頃さらにまた、輝きを増す黒髪

を長く垂らし、櫛を通す。

美しい朝だ。月のしずくは川の水へと姿を変えて、今はこうして、彼女の肌を覚ましている。ひんやりと水晶のように透き通った水面。


手の平を川に沈めると、指の間をキラキラとユラユラと、光のたわみができる。

彼女の爪も、輝きを増した。そして淀み無く澄んだ、この涌き水の流れは、明け方乙女の夢の中で、耳の底に聞こえた調べ


日が暮れた。

夜にはまた水面はいつしか月と変わる。

鏡の水面に落ちた葉は、くるくると消えていく。

静かに水底に葉が沈むように夕陽は沈む。


足元の白い玉砂利はさながら天の川の星。

乙女の足元には今星がある。

彼女の頬にあたる風はまた、この地に眠りし先人たちの清澄なる息吹か?

うるわし うるわし。乙女は舞う、天女の舞い



朗々たる月の光に今一度、この霊妙な水を飲み干そう。

夜の光の結晶が、固くその身にはりつく前に

森にひしめく無言の鳥たちに見せようか





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