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色彩BOX  作者: 秋雨 玲翔
6/7

赤との出会い 5

「ちゃんと水分くらい取らないと!」

 そう俺たちは叱られてしまった。

 黄花が倒れたその後、すぐに店の店員が救急車を呼んでくれてすぐに病院に駆け込むこととなり点滴を行い事なきを得た。

 医師の診断によれば水分不足からの熱中症らしい。

 そういえば、黄花は汗が途中から止まっていた。その時に気が付いていればこんなことにはならなかった

だろう。

「はぁ、無事でよかったよ!ほんと、店の中で倒れた時はどうしようかと思ったよ。」

 そう笑いながら話しかけてくれるのは海の家の女性の店員だ。倒れた時からずっとついてきてくれて、病院で点滴を行った後俺たちに色々話しかけてくれたりしてくれた。

黄花が倒れた時も一番最初に救急車に連絡をして応急処置をしてくれたのもこの女性だ。

 「まったく。ここらで宿も探さないで海で遊ぶとか危険すぎるよ!」

 病院でそういわれた俺たちは女性の家に強引に一日泊めてもらうことになった。交換条件付だが。


 家は海からそうも離れてないところにあった。豪邸と呼ばれるほどの大きさがあるほどの敷地。

 しかし、住んでるのは私一人だけ、と車で向かうときに聞かされた。

 家に上がるなりすぐに黄花は和室に連れていき寝かした。そして俺はリビングに通された。

 本人曰く、ほかの部屋はいろんな物や衣服などが散乱しており見せられないらしい。

 「紹介が遅れたね。私は赤羽。ここらでは赤さんと呼ばれてるよ!」

 リビングに着くなりそう話し出した。

 口調的に明るい印象は元からみたいだ。

 「俺は青矢、隣の部屋で寝てるやつは黄花。今日は何から何までありがとう。」

 「そんな堅っ苦しいのはなし!これは命令!」

 「いや、いきなりそんなこと言われても。」

 「時に、青矢。成人はしているの?」

 「え?・・・・・・多分。」

 「多分?自分の年くらい覚えておきなよ。」

 笑いながら赤羽は立ち上がり冷蔵庫に向かう。


 「ほら。少しくらい付き合って。」

 冷蔵庫から何を取り出してきたのかと思えば

 「お酒・・・・・・?」

 「うん?苦手?」

 「いや・・・・・・どうだろ。」

 「まぁ、飲もう!そうすればわかる!」

 赤羽はそういうなり、カクテルらしき缶を開け飲みだした。

 ・・・・・・この人何歳なんだろ。

 見た目は平均より少し高めな身長でスレンダーな体つきをしており、陽ざしに焼けた健康的な肌、明るさを象徴するようなはっきりとした顔つきからは何とも想像できない。大人の風格が出ているのだが、明るさからか幼さも見え隠れする。

 「どうしたの?私が気になるの?」

 お酒の影響か少し赤く見える頬と、座っている人と寝ている人の高さによる上目使いが少し色っぽく見えた。

 「いや、何歳くらいなのかな、と思って。」

 「女性に年齢聞くのは禁止行為だからね?」

 笑ってごまかされた。何歳なのだろう。

 赤羽はソファで寝転がっている。黄花は隣の部屋で布団で休んでいる。俺は赤羽が寝転がっているソファの隙間に座っており、さっきまで座っているところを後からきて占領されそうになっているような感じだ。

 まぁ、赤羽のソファだが。

 今日、少しいて分かったことがある。

赤羽には警戒心がまったくない。外部から来た男にこうまで接近するのは何事か。

 「少しは警戒しろよ。今日知り合ったばかりの赤の他人だぞ?俺たちは。」

 どうしても言いたくなってしまった。聞かないと、こっちが落ち着かない。

 「うん?気にしなくていいよ。私の人の見る目、衰えてないからさ。」

 そういった時の目は、オオカミのような獰猛な目つきをして俺を捉えていた。

 「青矢達はいい奴らだよ、きっと。そして訳ありなのもなんとなくわかるよ。青矢の目には戸惑いと不安しかないからね。」

 カクテルを飲む手を休めないが、その声には今日感じた明るさはなかった。

 「ここ数日でいろんなことがあったのかな。まぁ、でも・・・・・・」

 そう、一呼吸置き

 「少しは気楽にしなよ。せっかくの海なんだからさ!ここは私の誇れる海岸だよ!」

 明るい雰囲気に戻った。

 「そうだな。ここの海は活気があって楽しい気持ちにしてくれる。」

 「楽しすぎて倒れるのはもう勘弁だよ。」

 からかわれても返す言葉がない。

 「体をいたわりながら楽しむんだよ?わかった?」

 「はい。」

 この後は、赤羽のお酒の相手をすることとなった。


 翌日。

 朝早く、夏の日差しもまだ目覚めてないころに海の家に俺たちは集まっていた。

 「二人とも似合ってるね!」

 俺は交換条件となっていたことを果たすことになった。黄花は今回は近くで付き添いの形でいる。

 「似合うのか?赤のTシャツを着ただけだが。」

 「うん!かっこいいよ。」

 交換条件とは一日海の家の手伝いをすることだった。

 赤のTシャツはこの店の制服みたいなものらしい。よくみると店の名前も印刷されている。

 「じゃ、接客とかの仕方はほかの店員に教えてもらいながらこなしてね!」

 そういうと、奥のほうに消えていった。ミーティングでもあるのだろう。

 「青矢。」

 少し惚けていたところ、黄花が声をかけてきた。

 さっきまで店の中が気になるのか黄花は赤羽にいろんなことを教わっていて、今は店内をうろうろしている。

 今日は赤羽からもらったのか麦わら帽子をかぶっている。陽ざしの対策だろう。

 ・・・・・・そして、赤のTシャツも。働けない代わりに看板娘のような扱いをしたいのだろうか。

 「黄花、体調は大丈夫か?一応体調が悪ければ赤羽の家を使っていいと言っていたからその時は言ってほしい。」

 「体調は大丈夫。もしもの時はそうさせてもらうね。」

 「そうしてくれ。あと体調がよさそうならお客の表情や赤羽を見てるといいかもな。どんなこと考えてるのか気にすることも感情を得るうえで大切だ。」

 「うん。そうする。」

 そういうとまた店の中をうろうろし始めた。

 興味という本能で黄花は今を維持している。どうしてもわからないことは気になって仕方ないのだろう。


 さて、私は時間を持て余すことになったみたい。

 黄花は小さい欠伸を一つした。

 昨日倒れてから少し体のバランスが悪いのだが気にならないところまで落ち着いた。

 つい三日前まではこうした思考に至らなかった。ずっと目に見えることが気になっていた。

例えるなら犬のようなものなのかも。

興味があることに食いつき、ずっと興味を示してる。そんな感じ。

 私の付き添いをしてくれている、青矢と呼ばれる少年はさっきから仕事を覚えるのに必死なようだ。

  この人はどんな気持ちで私に付き添ってくれているのだろう。

 青矢をまた見る。

 青矢の心はいつも青。深い色の青と淡い色の青。

 私にも最近この色が出たようで、青矢が言うには不安や心配と呼ばれるものらしい。

 この色が自分の中にあるとき、私は落ち着かなくなる。いろんなことが考えられなくなり、私はいつもの安定感を失う。

 これが不安や心配と呼ばれるものなのだろうか。

 私はまた、考え出す。

 答えが出るまでずっと・・・・・・。

だって答えはそこらに落ちてるわけないのだから。 

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