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色彩BOX  作者: 秋雨 玲翔
3/7

赤との出会い2

俺たちは静かな場所を求めて駅へと向かうことにした。ここからは約15分程度。バスを使うのにも勿体無い気がした。お金があるとはいえ無駄遣いは良くない。

なら歩こう、という結論に至った。

まだ、夏も折り返し地点。外は暑く汗が滴る。隣を歩く少女、黄花は気にしていないようだが。

しかし、暑さに影響してか黄花は

「海を知りたいし、行ってみたいな。」

と、言ってきた。

黄花の数少ない感情の1つ、『好奇心』。色は目を惹くような黄色を示していた。

先生が前に教えたと言ってた『探究心』とはこのことだと思う。

「私の感情は今、いくつあるの?」

唐突にそんなことを聞いてきた。

「そうだな。今のところ3つあるよ。」

さみしさと心配はまだ理解できないと思うが。

「私はちゃんと感情を持つことができるのかな……。」

不安が心を支配してる。そんな風に見えた。

俺がしっかりしないとな。

「大丈夫だ。少しずつ進めばいいんだから。時間はあるさ。」

そう言って、黄花の頭を撫でてやった。

……実際俺にもわからないことが多い。このルービックキューブの具現化も。ルービックキューブは面の色自体は変わるが、ルービックキューブ自体が回って交わることがない。普通のルービックキューブとしては不可解だ。

予想としては、黄花はまだ個性や性格などがはっきりとしてないから基盤となる色の固定ができないのだろうか。

あと、黄花のことに関してもう1つ。

黄花の感情を学ぶ速度が速いことについて。

黄花は感情が無いと言うよりは『取り戻す』感覚に近い気がする。俺は黄花ではないから断定はできないが。

と、考えに夢中で気がつかなかった。俺の目線の先にあった陽炎に写っていた信号機が、紅く鈍い光を放ち俺に危険を訴えてることに。

「危ないよ。」

そう言われて黄花に手を引っ張られてことなきを得た。

「気をつけてね?」

「……おう。」

黄花を心配させてしまった。気をつけないとな。

「ところで、青矢は海に行ったりするの?」

雰囲気を変えようとしてくれてるのだろうか?黄花が聞いてきた。

「幼い頃、魚釣りに行ったぐらいしかないな。ここ最近は全くない。」

「私には海に関しての知識はあるみたいなの。けど、本物ってどんなものなのかこの目で確かめたくて。」

一般的なことは知ってるってことだから海の知識はあるのか。興味が湧く理由もそこからかな。

「なら、泳いでみるか?」

「泳ぐ……泳ぎ方教えてね?」

「任せろ。」

そんな会話をしながらゆっくり歩いた。

……そろそろ足がだるくなってきたな。黄花は疲れてないだろうか?

と思い始めた頃、駅に到着した。

「……黄花?眠いのか?」

覗き見ると瞬きの回数が増え、会話が途切れ途切れになってきた。

「うん。眠い……かな……。」

まだ体力的には一般的な少女より劣るのだろう。あんまり無理させないように考えないといけないな。

「時刻表見てくるから、そこのベンチで休んでな。」

「うん……。」

時刻表を見ると次の電車まで約7分程度あった。

「黄花、あと7分で電……。」

報告しようと思ったが、そこには心地よさそうに寝息を立ててる少女がいたので俺は静かに横に座った。

「よっぽど疲れたのか……。」

……俺も眠くなってきたな……。

結局俺たちは電車が来るまで、体をお互い預ける体制で寝てしまった。


「……怖い……。」


そんな言葉も眠気の海に溺れていく俺には聞こえなかった。

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