第六話 特別な愛を
その言葉に彼女は嬉しそうに微笑み、飛鳥の手を取った。
「ねぇ、飛鳥君の昔の話を聞かせて!昔好きだったモノとか人、なんでもいいの。飛鳥君の事が知りたいの。」
「僕ね、遥さんと付き合う前は三つ上の人と付き合ってたんですよ。」
飛鳥は晴海の暖かさを、温もりを、忘れたことは無かった。
「とても暖かい人だったんです。苦労しました。落とすのに三年もかかりました。」
「うそ。飛鳥君が三年落とせなかった人か…逢ってみたい。」
彼女は無邪気だ。
明るくて人の気持ちに敏感で、まるで女神のよう…。
「逢えないんです。あの人には…誰も。」
僕の中で、あの人は永遠に消えない。
例えこの先遥さんや別の誰かと新しい関係を築いても、きっと変わらない。
「ごめん。」
飛鳥の表情の微妙な変化を察したのか、彼女は俯いてしまった。
「遙さんが気にすることはないんです。もともと、初めからわかっていました。あの人のいない世界で生きてく時間が長いことは…。じゃぁ、今度は遙さんの話をしてください。遙さんは僕のどこを好きになってくれたんですか?」
「綺麗な言葉遣い、優しいところ、あったかいところ、かっこいいところ、全部好き。飛鳥君と話してると、自分の嫌な所とかもすきになれそうな気がしてくるの。飛鳥君は、私の理想。」
「ありがとうございます。もう、行かないといけませんね…。」
休み時間ももう終わる。
後三分もすれば、確実に二人は別々の教室という空間に囚われる。
それまでは…互いの存在を確かめ合いたい。
言葉だけでは足りない位の特別な愛を…今度はちゃんと一緒に。