第二話 出会い
私達の出会いはちょうど三年前。
女子校の前で佐々木君は、泣いていた。
まだ小学生といわれても信じられないほど、彼は大人びて見えた。
声を上げるわけでも涙を拭うわけでもなく、ただ頬を涙が流れ、とても愛しそうに遠く何かを見つめるその様がひどく私を惹きつけた。
その時、うっかり声を掛けてしまったのがそもそもの間違いだった。
「あのっ…大丈夫?あっここ、一応女子校の前だし…その。えっと…」
彼は私を見るなり物凄い勢いで私の腕を引き、呟いた。
「…どうしよう。俺、こんなだから、あの人を助けられなかった…。」
私は初めてみる男の人の涙と意味のわからない言葉にどうすればいいかわからなかった。
「…私は海影晴海。…少し落ち着いて。」
その言葉に我に返ったのか、彼は慌てだした。
「…すっすみません。俺は佐々木飛鳥といいます。本当にすみません俺…。」
彼はまるで上司に怒られているかの様に深々と頭をさげていた。
「もう気にしないで。私は気にしてないから。…それより、大丈夫なの?随分と辛そうだったけど。」
飛鳥は顔を上げてにっこりと笑った。
「はい。もう、大丈夫です。また会いに来てもいいですか?」
私は誰かに頼られることがすきだった。『ここにいてもいいんだよ』って言われているように思えるから…。
「えぇ。でも、帰ったほうがいいよ。またね」
それだけのたった三分間の短い出会い。
あの時は自分に余裕があったから、泣いている他人にもかまっていられた。
でも今はそんな余裕、私にはない。