旅館のテレビで見る旅番組
挿絵の画像を作成する際には、「AIイラストくん」と「Gemini AI」を使用させて頂きました。
近場の観光地には今まで見落としていた物の再発見があって、意外と面白い。
私こと蒲生希望は、同じ堺県立大学のゼミ友の子と一緒に訪れた和歌山旅行で実感させられたんだ。
小学生の頃には家族で訪れた遊園地であるみさき公園は久々に行くと園内の動物に癒やされるし、和歌山城に上って見下ろした和歌山市街地の一望は素晴らしかったし。
これは大学生になってから満喫出来るようになった楽しみだけど、市内の酒蔵見学で行った地酒飲み比べも良かったね。
思う存分に泉南地域と和歌山市内を観光した後は、旅館にチェックインして鯛会席と源泉掛け流しの温泉を満喫。
女子旅というのは家族旅行よりも気楽で良いね。
夕食も済んだしもう一風呂と行きたいけれども、消化不良などを起こしちゃせっかくの鯛会席が台無しになっちゃう。
その為、私とゼミ友は部屋でテレビを見ながらダラダラと休憩する事としたんだ。
「へえ…見てよ、蒲生さん!今日の『花金ワールドトラベル』、灘五郷の酒蔵巡りをやってるよ。番組内容を知ってたら最初から見ても良かったんだけどなぁ…」
画面の中で美味しそうに日本酒を傾けるベテラン時代劇俳優と鉄道マニアの女性タレントの二人を羨ましそうに一瞥すると、負けじとゼミ友は徳利の地酒を手酌するのだった。
昼間の酒蔵見学でも夕食の鯛会席でも相当に飲んでいるはずなのに、まるで底無しだよ。
「しかしアレだね、美竜さん…旅先のテレビで旅行番組を見るってのも、何だか不思議な感じがするよ。」
「そういうのも込みで旅情じゃないかな、蒲生さん。『次は何処に行こうかな…』って気にもなる訳だし。」
考えてみたら私のゼミ友の王美竜さんは台湾からの留学生だから、日本の名所や観光地には私達以上に興味や関心があるんだろうね。
だからCM明けの海外コーナーの反応がどうなるか、ちょっと楽しみではあったんだ。
「あっ!見て、美竜さん!海外ロケの行き先は中華民国の台南市だって。もしかしたら美竜さんの実家が写るかも…」
「それはどうかな?私の実家は観光地から外れているし、撮れ高は無いとは思うけど…」
地元が写っているから楽しそうではあるけれども、美竜さんの反応は割と落ち着いていた。
だけど台南市の繁華街である中西区の街角が写った時、その様子が一変したんだ。
「えっ?嘘でしょ、あの子ったら写り込んでるじゃない。」
ぐい呑みなんかそっちのけで、画面に食い入る美竜さん。
一体どうしたんだろ?
「ほら、大道芸を見ている人達の中に緑色のブレザーを着た子達がいるでしょ?」
見れば確かに、皿回しを面白そうに見ている群衆に学生服を着た女の子達が何人か混ざっていた。
年齢的には中学生位だから、私達より随分と年下だね。
「あの白いヘアバンドをしてるのが珠竜なんだよ。」
「あっ、珠竜ちゃんって確か美竜さんの妹さんの…」
美竜さんの妹さんである王珠竜ちゃんは台南市立福松国民中学に通っていて、少し年の離れた妹さんの事を美竜さんはとっても大事にしているんだ。
一人っ子の私には羨ましくなる位にね。
「この番組って確か、アーカイブが配信されてるよね?珠竜ちゃんに教えてあげたら?確かあの配信サービスなら世界共通だから、中華民国でも見られるはずだよ。」
「蒲生さん、ナイス!それじゃ番組の公式チャンネルをお気に入り登録するよう、珠竜に伝えておこうっと…」
そうして嬉々としてスマホを取り出し、妹さんに連絡を取る美竜さん。
旅先のテレビで見た旅行番組で地元の家族の意外な近況を知るなんて、珍しい事もあるもんだよ。
だけどそれも込みで、「旅情」というのかも知れないなぁ。




