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【プロローグ ― 色が世界となる前の物語 ―】

 まだ、世界が世界と呼ばれるよりもっと昔。

 天も地も風もなく、光も影も存在しなかった。


 その虚無に、ただ一つだけ意志があった。

 ノア。

 物語を始めるために生まれた存在。


 ノアは七度、息を放った。


 一息目は赤。

 二息目は橙。

 三息目は黄。

 四息目は緑。

 五息目は青。

 六息目は藍。

 七息目は紫。


 七つの色は弧を描き、虹のように虚無へ広がり、

 世界は“色”として形を得た。


 色が触れた場所に大地が芽吹き、

 色が重なった空間に風が生まれ、

 色が混ざったところで生命が目を覚ました。


 ――こうして、世界は“色で満たされた”。


 しかし虹が満ちたあと、ただ一つだけ“染まらぬ影”が残った。


 七色のどれでもない“黒”。


 ノアはその一点を見下ろし、そっと手を伸ばした。

 黒は、どの色にも属さず、祝福を受けられない――

 本来生まれるはずのなかった色だ。


 それでもノアは丁寧に黒を抱きしめた。

 七色の子ら以上に。

 黒は、ノアにとって“見捨てられるべきではない子”だった。


 だがこの世界の理は、黒を正しく扱えなかった。


 七色は祝福であり、器であり、世界そのもの。

 その外側に生まれた黒は、

 どこにも居場所を持てず、

 世界中の負の感情――憎しみ、嫉妬、絶望、恐怖を受け止めていった。


 黒は静かに膨れ続け、

 やがて七色の世界を揺るがすほどの“災い”へと変貌した。


 七人の子らは悟った。


 ――黒には勝てない。


 世界が崩れる前に、彼らはノアへ助けを求めた。


 ノアは迷い、そして決断した。

 だが、直接手を下すことはできない。

 世界の“色の均衡”を壊さないために。


 ノアは外界へと祈りを投げた。


 すると――遥か彼方から、七つの光が降りてきた。


 それは“天使”の意志。

 しかしこの世界では天使は肉体を維持できず、

 その力は七つの“器”に宿って地上へ落ちた。


 赤には、焔を抱く剣。

 橙には、大地を砕く槌。

 黄には、光を集める聖杯。

 緑には、生命を育む杖。

 青には、潮と流れを統べる宝玉。

 藍には、理を刻む書板。

 紫には、秘術を映す鏡。


 七色の子らは、その宝具と完全に適合し、

 天使の力を受け継いだ。


 これが “虹の制約” と呼ばれる契約である。


 だが、“誤算”があった。


 天使が来れば、天使を喰う“影”もまた来る。

 悪魔である。


 悪魔たちも実体を保てず、

 “悪魔の宝具”として地上に落ちた。


 黒はその力に触れ、

 さらに深い闇へと沈み――そして“分かれ”た。


 黒の影から生まれたのは、

 七色にも黒にも属さない曖昧な色。


 灰。


 世界はこうして、

 黒と灰 VS 七色の虹

 という構図へ変わっていく。


 長く激しい戦いの果てに、

 黒は滅ぼされ、存在そのものが消し去られた。


 灰は世界中へ散り、影となった。


 そして――戦いが終わったあとも。

 天使も悪魔も元の世界へ帰ることはできなかった。


 肉体を持てぬ彼らの“力の残滓”は大地に沈み、

 周囲の地形を歪ませ、

 “宝物殿ダンジョン”として根付いた。


 さらに――

 今もなお、遥か彼方から天使が光となって降り、

 闇の底から悪魔が引き寄せられる。


 彼らは実体を持てぬまま、

 宝具として落ち、

 新たな宝物殿が世界のどこかで生まれ続けている。


 こうして七色の世界に、

 “宝具”と“宝物殿”という宿命が刻まれた。


 そして、黒が滅んだ大地に――

 もう一つの“外れ色”が静かに生まれていた。


 七色にも黒にも染まらぬ、

 白い光。


 まだ誰も知らない。

 その白が、いつか七色を繋ぐ。



 ――これは、

 色の世界が生まれる前夜の物語であり、

 後に語られる“白の伝説”の始まりである。

Iris Hora Tertia

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