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【完結】シラユリシリーズ②片影のシラユリ-あの日の君へ-  作者: 慧依琉:えいる


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第80話:ふたりだけの時間…。悲しみは突然やってくる。そしてその瞬間、気付くものも…。



フランたちから話を聞いたジャポスカはフランたちと別れたあと、その思い当たる場所に寄ることにした。






が、いくらその場所に行こうとしても辿り着かない。大きな森がそこに存在するだけだ。あの綺麗な百合の花々が咲き誇った場所にはどうしても辿り着けない。






「………………おかしいな、こんなことは初めてなんだけど…。間違いなくここなんだけど…。」






どんなにその場所を探そうとしても探すことが出来ない。まるで何かがその場所を守っているかのように…。








「まさかラナベルの身に何かあった?!」




ジャポスカはラナベルの身を案じた。が、百合の園に辿り着かない限り、誰も彼女の存在を知らないのだ。確認仕様がない。






〝全く…。クラウドといい、ラナベルといい、連絡一つとれないなんて…。旅に出るなんて言ったって、それが嘘だって、私にはわかるんだから!一体何があったのよ?!〟




ジャポスカはかなりお怒りモード。






〝そう言えば今日、デートの約束してたんだった…。クラウドとラナベルの事は気になるけど、デートをすっぽかしたらダメだよね。いつかちゃんと理由を教えてくれるかな。〟




ジャポスカは二人に隠し事をされてるようでシュンとした。だが、それも確実なことではないので気持ちを持ち直して相手の所に向かうことにした。










そう、ジャポスカが感じた通り、それはラナベルの意思によって百合の園の周辺に結界を張っており、誰も辿り着けないようになっているのだった。全てはクラウドを守る為に……………。












◆  ◆  ◆












そんな外のことは全く知らずにゆったりとラナベルと二人の世界を満喫するクラウド。


みんなが心配してるのに、不謹慎な程、彼は幸せだったのだ。ただ、この百合の園の中にいると何も変化がないから毒の進行状況がわからないのだ。なにかのきっかけで突然…てこともあるかもしれない。


だからクラウドは一日一日…いや、その瞬間、一瞬を大切にしようと思っていた。






〝ラナベルの心に父がいるのは仕方がない。そんな彼女を好きになったのだから。


それでも側にいてくれるラナベルを沢山愛そうと思った。例え彼女に触れる事が出来なくても彼女の笑顔を見るだけで幸せだ。


僕は僕らしくいて、そんな僕をいつか何かの拍子に思い出してくれたらそれだけで僕は満足出来る…。


それは僕の強がりかもしれないけど…。〟




クラウドは幼い頃から侯爵家を継ぐ為に必死でそれに向かって努力を重ねてきた。


今、それらが全て無駄になったが、それを悔やむことなくいられるのは、全てラナベルが側にいるからだ。


何にも縛られることなく、ずっと彼女のそばにいられるからだった。




ただ一つ、先行き短いという事を除いて








クラウドは幸せであり、悲しみの中にいた。








ラナベルは時折見せるその顔にどこか見覚えがありつつも、彼とはまた違った青年が目の前にいたのだった。






〝ずっと…クラウドの中に彼の姿を追ってきたけど、彼とクラウドは別なのね…。彼が時折見せていたあの表情は彼の奥さんへの思いだけど、今クラウドが見せる表情は……………わたし…?〟




少しずつ揺れ動くラナベルの気持ち。


それはクラウドに対しての同情なのか?彼女自身が一番わかっていなかった。










そしてクラウドは手紙を沢山書いて、封をして、その封筒にいつ頃届けるのかを書いたメモを付けた。


こうする事でクラウドがこの世を去ったあとでも届けることが出来る。




〝遠い…もの凄く遠い地で好きな人が出来て結婚したとしたら、きっと両親も諦めるだろう〟




そう思ったからだ。一生懸命地図を広げてその地域の特性を調べて手紙に書いた。クラウドはやはり完璧だった。






「なぁに、その完璧な手紙は…?くすくす。」




ラナベルに時々笑われながら…。












そうして2年位たった頃だろうか…。クラウドがどんどん目に見えて弱ってきた。






「おかしいな…、最近は何だかよく息切れがするし、立っているのも辛くなってきたよ、ハハ…、」




「クラウド…。」




ラナベルはそんなクラウドが心配だった。そしてクラウドがいない時に初代管理人のルルに状況を聞いた。






「ああ…、これは、1年で10年分魂は歳を重ねたようだ。多分、もう80歳を超えて90に近い。残念だが、そろそろ覚悟した方がいい。ここまでもっただけでも充分奇跡なのだ…。」




初代ルルからそう告げられたラナベル。


ブワッと涙が込み上げてきたが、そこはグッと我慢した。クラウドの前で泣かずに見送る決意をしていたからだ。








本来であれば毒に値する自分が咲かせてしまった花々。だが、今は皮肉にもその花々がクラウドの命を繋ぎとめていたのだった。だからラナベルはクラウドのそばにいつも花を飾った。


この前、立っているのも辛いと吐露して以来、クラウドはほとんど寝たきりになった。百合の園では雨は降らない。まるで時が止まったかのような世界観だ。


弱った身体を休める時、ラナベルの家のベットを選ばずに、ラナベルが懸命に向き合った花々に囲まれていたいとクラウドは願ってそこに横になることにしていた。




「ラナベル…。ごめんね。最近はずっと寝てばかりで苦労を掛けたね。君にはそんな事する必要がないのに…。」




「何を言ってるの?気にしないで!辛いんでしょ?ゆっくりと休んでいいの。目が覚めて楽になってたら一緒に何か食べましょう。」




「ああ…、ありがとう。そうだね、少し眠いから…ちょっと寝るね。今までありがと…。」




「もうっ、何をお礼なんて言ってるのよ!?」






「………………。」






「クラウド?もう寝ちゃったの?」




「………………。」




返事がなく、やけに部屋中が静かだ。元々静かではあったが、そういう静かさではない。目の前に人がいるのに、人の気配が一切しないのだ……………。それはまるで──────────






「え…。」






ラナベルはクラウドの口元に耳を充てる。


静かに息をしている……………はず…。






「…………………………………………。」






はず……………。








「クラウド─────────ッツ!!!!」




ラナベルはクラウドに抱き寄った!


覚悟をしてはいたけど、まさかこんな突然だとは思っていなかったからだ。今ならまだ呼び戻せる!と信じて疑わないかのようにクラウドの身体を揺さぶった。






しかし




クラウドの身体は一切 身体に力が入っておらず、体温もどんどん下がっていくばかりだった。






「クラウド、クラウド!起きて?ねえ!起きてよ!!!! 嘘でしょ?早すぎじゃないの、こんなのっつ!」






嘆き悲しむラナベル。息の仕方すら忘れてしまいそうに胸が鷲掴みにされてるかのように苦しい…。


あの日、ルクセブルがこの地を去ったあの日の悲しみよりも何倍も哀しくて辛いことにこの時気付いたのだった。








「あぁ……………。嘘よ、私……………。何で今更……………。いいえ、何で今になって……………。遅すぎるわよ……………。」








この2年、彼の苦しみや悲しみ、そして喜ぶ姿をずっとそばで見てきたのだ。


長く長く思い続けていたルクセブルへの思いよりもクラウドへの思いの方が遥に上回っていたのだった。






「こんな……………。今頃になって気付くのなら、ずっと気付かないままでいたかった、あぁ……………。クラウド。」






そうしてクラウドの身体を抱きしめていた時、クラウドの身体が突然サラサラ……………と消えていこうとした。






「………………!!!! 待って!クラウド!まだ私、あなたに伝えられていない事があるの!行かないでっ!」




ラナベルの言葉を裏切るかのようにクラウドの身体は空気にキラキラと舞いながら消えていった……………。








ラナベルはその場に立ち尽くして身動きが取れなかった。


クラウドの身体は光の粒になって消えてしまったからだ。何一つ、残っていない。クラウドの持っていたはずの聖剣も消えていた。ただ彼が書いた家族宛の手紙だけがそこに残っていた。ラナベルが育てたシラユリたちと共に─────






ご覧下さりありがとうございます。とうとうクラウドは永眠という形になります。実際には毒が回ってしまって身体を維持出来ずに光の粒となって消えてしまったのですが…。クラウドを失って初めてラナベルは自身の本当の気持ちに気付きます。

次回、最終話となります。


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