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【完結】シラユリシリーズ②片影のシラユリ-あの日の君へ-  作者: 慧依琉:えいる


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第79話:クラウド行方不明時の話。



クラウドが帰国早々にどこかに飛び出して行ったその後のアルクレゼ侯爵家の話






ルルドから夜遅くに帰宅すると伝言を聞いて待っていたが、帰ってこなかった。


心配するルクセブルとアレクサンドラだったが、慌ててどこかに行ったと聞いていたので、ひょっとして好きな女性でもいるのかと思ってその日は納得した。




しかし、翌日も帰ってこない。行先も不明だということで、とうとうルクセブルはクラウドを探すための捜索隊を出すことを決意した。




〝どこに行ったんだ?クラウド。何か事件にでも巻き込まれたのか?無事でいてくれ!そう言えば僕が遭難した時も父上はこんな気持ちで僕を待っていてくれたのか…‼〟




ルクセブルは申し訳ない気持ちと共にクラウドの無事を願っていた。






そんなある日手紙が届いた。




その手紙は不思議とどこからきたのかわからなかった。途中で経由する場所の消印がなかったのだ。


しかし、そんな事は今は関係ない、クラウドからの手紙だ、どこにいるか書いているのだろう。そう思ってルクセブルは手紙を開封して読み上げた。






「父上、母上、勝手をして申し訳ございません。大変ご心配をおかけしていると思います。親不孝をして申し訳ございません。


急に、僕は自分の実力不足を感じて旅をする決意を致しました。僕は自分の意思で旅立ちます。時々、生存確認の為の手紙を送ります。どうかこれ以上心配なさらずに僕のことを遠くから見守っていて下さい。


追伸:僕はずっと追及したいことが出来ましたので、今後アルクレゼに戻るつもりはありませんので、アルクレゼ侯爵家の爵位継承について、放棄し、弟のアドルフに継承を譲ります。―クラウド―」






ルクセブルの手は震えていた…。そして共に手紙を見ていたアレクサンドラは号泣した。


最期の一文はきっと聖剣の秘密を知った上で自分から放棄した事にしてアランの気持ちを軽減させるつもりなのだろう。


クラウドがどんな気持ちでこの手紙を書いたのか…!そしてクラウドは旅に出ると書いてはいるが、それは本当に本心なのか?聖剣の判断で自分に爵位を受けられない事からの判断なのか…。


ルクセブル達には理解出来なかった。




〝クラウド…。もっと私たちを頼ってくれていいんだよ。そんな風に一人で抱え込まずに…。〟




悲痛な思いで蹲って泣いているアレクサンドラの肩を抱き寄せて、ルクセブルも肩を震わせて泣いていた…。


こんな風に二人で泣いたのは、あの聖剣の宝飾が黄色だと知ってアランの宝飾が青だったとアレクサンドラに打ち明けたあの日以来だった。ずっとクラウドをどんなことがあっても支えていこうと二人で決めていたのに…。




「私たちは…無力でしたね…。」




アレクサンドラが零した。




彼女の肩をより一層きつく抱き寄せて




「無力なもんか!ずっと…ずっと頑張ってきたじゃないか!きっとまだ大丈夫だ!」




「でも…あの子のあまりにもたくましい姿に惑わされて本当の心の奥を見てあげれなかった…。ずっと悩んでいたんじゃないかしら…。ハンダルに行ったあともずっと…。」




「それはわからない。中々心を打ち明けない子だったからな。あの子ほど当主の資格のある子はいないと思っていた。今も変わらない。あんなに立派なのに…。剣のお告げに負けずに進んで欲しかった…。」




「だけど、あの子はもう遠い所へ行ってしまったのよね、誰にも行先を告げずに…。」




「ああ、だが、いつでもクラウドが帰って来ても困らないようにしておいてあげよう。それがせめてもの出来ることだ。」




アレクサンドラは静かに頷いた。








そしてアルクレゼ侯爵家は正式にクラウドの意思を尊重してこの手紙にあった爵位継承について、国王に報告し、国内にも発表した。




国王もクラウドの優秀さを知っていた為、どうして急に旅に出ることになったのか不思議ではあったが、本人の意思が強い為、認めることにした。




そしてその発表が隣国のハンダル王国にも届いた。








「--------え?それは本当のことなの?」




「はい、フィリア様。ポルモア王国ではかなり騒然としておりました。そして未だにクラウド様の行方が掴めていないご様子でした。」




側近の侍女からその報告を受けてフィリアは愕然とする。


いつかきっと戻って来てくれるかもしれない。もし、そうでなければ迎えに、国王経由で申し込みをすればいいと思っていたからだ。だからまだクラウドとの婚約解消の話を国王や国民にしていなかったのだ。




「その噂が国内に広まるのも時間の問題ね。きっと私との婚約についても皆が不安に思うでしょう。そうなると収拾が難しくなるわね、残念だけど、一旦破棄したことを告げる必要がありそうね。破棄したあとで行方不明になったとしても何も問題はないでしょうが、このまま婚約中だとすると後処理が大変だわね。」




この時のフィリアはもう一人の女性の顔ではなく、王としての顔をしていた。




〝クラウド様…、どうか、ご無事で…。〟




今の私に出来ることは彼の無事を祈るだけ。そして、彼の名誉の為にも婚約を破棄していることを早く国民に告げなければ彼が無責任であると国民に周知されてしまうわ。それだけは避けたい…。




そして間もなく、フィリアは国王に婚約を破棄したことを伝え、そして国民にもその内容を告知した。


婚約破棄の理由については特に触れなかった。そして彼が自国に戻る前に婚約破棄の話をしていたが、発表が何故か遅れてしまったという説明だけをした。




もちろん、納得しない国民もいたが、王女が決めたことに誰も不満を言えなかった。民のほとんどがクラウドの事を知っていたが故に残念がる国民が多かった。








「これでそのうち落ち着くわね。さあ、私のすべきことは済んだわ。いつまでも戻ってくるのを待ってるわ。それまでに私は女王になる為にもっと励むわよ。」






将来の女王には悲しむ暇はなさそうだった。












◆  ◆  ◆










そしてクラウドが行方不明なのはジャポスカの耳にも届いた。


それはいつも冒険に出るからフランやアランからの情報だった。




「それ…。本当なの?」




「うん、ジャポスカも知らないの?一体どこに行っちゃったのよ、お兄様は!せっかく一緒に剣術出来ると思ってたのに!」




フランもアランお落ち込んでいる。元気に振舞っているが、自分たちに会わずに旅に出たということが、かなりショックだったようだ。それは聖剣の儀が終わった後もそうだったし、今回もそうだったからだ。自分たちのことをあんなに大切にしてくれていたからこそ、信じられないのだった。




「わかった、フラン。私も情報を集めてみるよ。」




そう返事をしたジャポスカは思い当たる所があった。




「きっとあそこしかない!」




ご覧下さりありがとうございます。危うく捜索隊の出動でした。クラウドの手紙でみんなが納得するわけがないとは思いつつも、クラウドにはそれしか選択肢がありませんでした。百合の園を出ると老年の姿になってしまいます。その姿を誰にも見られたくないでしょう。

次回もお楽しみに!


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