第77話:老化の原因がわかったが目を覚まさないクラウド。今、彼は深層心理の意識下で彷徨っていた。
クラウドは百合の園から帰宅する為に馬に乗って帰ろうと、百合の園を出てからすぐ外で馬から落馬して意識を失っていた。そしてその姿は老年の姿だった。さっきまで普通に元気な青年だったはずなのに……………。
驚きつつも他に怪我もなく、すぐに気が付くだろうと思ってラナベルはクラウドを頑張って背負って百合の園の中に入れた。
するとクラウドに変化が訪れた。
手の皺はみるみる無くなって元の若々しい手になり、顔を見ると、顔の皺も無くなり、元の若々しい姿に戻った。
その姿を見てとりあえず安堵するラナベルだったが、原因がわからず、もしかしたらこの百合の園を出たらまた老年の姿になるのではないかと不安になった。
「初代さま!初代さま!お願いです。出て来て下さい!」
ラナベルが百合の園で空を見上げて叫んだ。
すると ほわりと女性が現れた。初代百合の園の番人ルルだ。精霊化して百合の園にいる。
「初代さま…。」
ホッとするラナベル。初代、ルルはラナベルとその腕に抱えていた気を失ったままのクラウドを見て言葉を発した。
「─────その者、百合の毒にやられてるな。」
「百合の毒?」
「ああ、普通の人間にとって、この百合の園は毒そのもの。幼い頃から出入りしていたのだ、徐々に毒が身体の中に入り込んでいたんだろう。前回来たあとここに来なければ発症はもっと先だったか、発症せずに済んだかもしれないが、今日来たが為に発症したのだろう。」
淡々と話す初代ルル。反対にラナベルの顔からは血色が引いていく。
「こうなると、人間の生活は無理だな、先ほどの姿が今のこやつの本当の年齢じゃよ。この百合の園でだとこの姿でいられるが、それでも魂自体は年齢を重ねていくからの。通常の何倍もの速さだ。数年ももたんじゃろ。しかし、こやつには聖剣があるのだろう?何故そうなる前に気付かなかった?」
そう言ってルルは聖剣に目をやった。
「なるほど。16歳に聖剣の儀を受けるが、こやつの本来の魂年齢から換算すると15歳で聖剣の儀を受けなければその恩恵の加護を受けられなかったのか。つまり、こやつの剣は飾りと言っても過言はないくらいに加護を授けられていないのだな。それがわかっていたから宝飾が黄色だったのか。あの時点で受けておれば青に変わっていたやもしれんな。残念だが、そやつの運命だ。受け入れろ。」
ラナベルはルルが言ったことの内容が理解出来ないでいた。
〝ゆりの毒でクラウドの魂年齢が加速したということ?16歳で聖剣の儀をしたと言ってたけど、あの時はすでに16じゃなくて…。受けられるはずの加護を受けられなかったからこの毒から身を護ることが出来ない?!〟
「ああ、簡単に言うとそういうことだ。」
ルルがラナベルの考えを読み取って答えた。
「もう…。家族の元には帰せんな。ここで命尽きるまで過ごすしかない。」
「そう…ですね。」
「仕方ないことだよ、ラナベル。自分を責めるな。こやつはきっとその方が幸せだと言うだろう。」
そう言って初代ルルは消えていった…。
ラナベルは自分の力が及ぶ百合の園でクラウドを隠して彼を生かすことを決意する。だが、彼が消えて周りは混乱するだろう。そのことについて懸命に考えた。
「ねぇ…。クラウド。目を覚まして。あなたに話があるのよ。あなたの人生なの、あなたが決めなくちゃならないのよ。早く目を覚まして…。」
ラナベルは今までこれ以上ないくらいに不安に駆られていた。
その頃意識を無くしていたクラウドは深層心理の中にいた。
「お前はアルクレゼの人間失格だ!」
「お前は王女を泣かせた。お前は周りの人間を不幸にする」
果てしなく自分で自分を責めている夢だ。責められていたクラウドはどんどん小さく子供に戻っていく。
「なんで?どうして僕のことをそんなに責めるの???」泣きながらクラウドは必至に自分を守っていた。
「子供に戻って逃げるのか?」「お前は無責任だ!」
「違う!違う!!違うんだ!!!」責め続ける声に抗う小さなクラウド。そんなクラウドにそっと手が差し伸べられた。
「大丈夫よ。あなたはよくやっているわ。それはあなた自身が一番わかっているはずよ?さあ、思い出して。」
「あなたは……………。」
クラウドの心の暗闇に差し込んだ光……………。
それまでクラウドを責めてばかりいた存在がその光が広がると共に消えていった……………。
「あぁ……………。君か……………。」
クラウドはその温かな優しい光を身体に感じて安心したら小さな子供の姿からゆっくりと今の青年の姿に戻っていった。
そして差し出された手を取るとクラウド自身の目の前に光が全体に広がっていった─────
ご覧下さりありがとうございます。クラウドにとってラナベルは希望の光の存在となるのでしょうか。
間もなく最終話を迎えます。もう少しだけお付き合いくださいね!
次回もお楽しみに!




