第72話:……………そして、間もなく約束の5年が経過しようとしていた
フランの何気ない一言でその場が凍りつくような、何とも言えない居たたまれない気持ちになるクラウド。
そんなドタバタした、とんでもないお茶会となった。
「さてと、沢山お菓子も頂いてお腹も一杯になってしまったし、そろそろ帰りましょうか。フラン、アラン。領地まで帰るわよ。」
そう言ってジャポスカはスクっと立ち上がってクラウドの方を見た。
「クラウド、会えて嬉しかったわ。また今度ね!」
クラウドもジャポスカに弟妹たちを連れて来てくらた事に感謝して
「ああ、フランたちを連れてきてくれてありがとう!帰りもよろしく頼むよ。」
と言った。
ジャポスカは勘がいいので、ニッコリ笑って答えた。
「任せてっ!今ね、合間を見つけて色んな領地にこっそり遊びに連れてってるの!」
「え?!父上にはそのこと…?」
「もちろん、言ってあるから安心して!じゃあね!」
そう言ってジャポスカは王女の部屋の窓から飛び降りた…!
「キャ─────ッツ‼」
クラウドとフラン、アラン以外の人間は皆、その行動に驚いた!通常なら窓から出る事もしないし、そんな所から飛び降りると大怪我どころではすまないからだ。
皆が悲鳴を挙げて目を瞑っていたそのあとすぐにジャポスカ本来の自分の姿に戻って、〝ブゥゥン…。〟という羽音と共に窓に近づいて来た。
アランとフランはジャポスカに倣って窓からジャポスカに飛び乗った。
恐る恐る目を開けた王女たち……………。
「えっ、…?」
王女や侍女、アテリア伯爵までがその様子を見て固まっていた。
「彼女…魔物?」
そう呟いて急に怖くなったのか、怯えていた。
「ああ、大丈夫ですよ。彼女はちゃんと理性あふれる魔物ですから。」
「でも、魔物は魔物でしょう?」フィリア王女はまだ怯えている。
「ジャポスカのように人間以上に人間らしい魔物はいませんよ。曲がったことが大嫌いで、それでいてとても純真なんだ。」
「クラウド様はあの魔物が好きなのですか?」
フィリアは怯えながらも聞いた。
「へ?好き…とかって、友達として最高だよ!物凄く信頼してるんだ!」
〝友達…、魔物と…友達?ありえない…、〟
そんなやり取りをしてるうちにジャポスカはフラン達がちゃんと乗ったのを確認すると王城を後にした。クラウドと王女の話が聞えていたのか、いないのかわからないが、ひたすらポルモア王国のアルクレゼ領を目指して飛んで行った。
〝ジャポスカなら2時間もあれば着くな…。〟
そしてクラウドは王女の方を向くとまだ怯えて座り込んだままだった。
〝ま、これが普通の人間の反応だよな。父上から聞いていたが、母上はよっぽど肝が据わっていたというか、よくすぐに受け入れたよな、〟
そう思いつつクラウドは王女に近づいてそっと手を差し伸べた。
「大丈夫ですか?初めて見たので驚いたでしょう。ですが、ご安心下さい。人間には絶対に害をなさないヤツなんで…。」
「どうして言い切れるのですか?」
王女の顔は怯えてはいるが、クラウドが軽くそう言葉を発した事が気になったようだ。
「それは、彼女の母親が魔物のボスで、10年以上前に僕の父がボスに魔石を投入したからです。」
クラウドがそう話すと安心したのか、
「ああ、あの伝説の魔石投入事件があなたのお父様のお陰でしたか。」とフィリアが答えながらクラウドの手を取った。
「ええ、その時に中継ぎをしたのが、あのジャポスカだったそうですよ、今もボスの統制が効かないハグレモノを捕獲するのがアイツの役目なんだって言ってました。彼女は人間には無害です。」
「そうでしたが、それを聞いて安心しましたわ。クラウド様、これからもどうか、私を支えて下さいね。」
「僕に出来ることなら…。」
こうしてクラウドは益々フィリア王女の婚約者としてハンダル王国で様々な式典などにエスコートしたりして王女の婚約者として振舞っていた。
クラウドは正直、婚約者のふりとは、どう振舞えばよいのかわかってなかったが、時々王女のいる部屋にお茶を飲みに訪れては他愛のない話をして帰るといった感じだ。医療使節団の業務が終われば、それ以外はほとんどフィリア王女のいる王城で仕事をするか、王女とお茶をするかといった生活を送っていた。
その時に王女の兄にあたるアリアナスに呼び止められて医療状況を問われることもあった。が、アリアナスはどうやらこの婚約は本物だと思っているように感じた。が、それを問う事も出来ず、日々の忙しさに没頭しているクラウドだった。
◆ ◆ ◆
そして
クラウドは18歳になっていた。
その間もずっと派遣任務でハンダル王国で過ごしていた。クラウドにとってはここでは〝聖剣の真実〟を忘れて気楽に過ごせるからだ。だからここでは誰もが〝侯爵家アルクレゼのクラウド〟ではなく、ただのクラウド、医療使節団の団長として見てくれる。
そしてハンダルのフィリア王女の婚約者のふりをすることで、必然的に王室業務を手伝う事も増えてきた。そして医療も充実してきたという事だった。
「そろそろ、約束の5年になるのか…。」
ふと、クラウドは呟いた。ここでの暮らしぶりが余りにも自然で心地いいからだ。ただ、余りにも遠すぎてラナベルに会えない事を除いて…。
〝もう3年もまともにラナベルに会っていないな…。会いたいな。会いに行こうかな。そうだな、もう約束の5年になるんだ。婚約者のふりも終わりにして帰国しよう。そしてラナベルにプロポーズしよう!〟
クラウドは一世一代の覚悟を決めた。
ご覧下さりありがとうございます。ジャポスカがフランとアランを連れて来てくれたお陰でクラウドはほんのひと時の兄弟妹の時間を持つ事が出来ました。そして弟妹達にはクラウドの宝飾の件は知られていません。そして月日が流れ、約束の5年が近付いてきました。
次回もお楽しみに!




