第68話:それは隠れていた王としての素質なのではないか?
しばらく歩いてやっと王女の執務室に着いた。
王女はクラウドを座らせてから侍女たちにお茶を依頼した。
用意していたのだろう、すぐにお茶とお茶菓子がクラウドの前にセッティングされた。
「僕の好きなフィナンシェ…。いつもすみません。」
「ふふ、気になさらないで。お好きなものをお出しするのは基本中の基本ですもの。さあ、どんどん召し上がって下さいね。」
フィリアはにっこりと笑った。
最初は雑談をしてお茶と茶菓子を楽しんでいた。しかし、ここへは目的があって呼び出したはず…。
クラウドの視線がチラッとフィリアを見た時
「そうね、そろそろ本題に入りましょうか。」
と言った。
〝凄い洞察力だ。最初に会った時とは全然違う!いや…、元々その素質が充分あったんだ!〟とクラウドは驚いていた。
「ふふ、教育の賜物ってところかしら?もう毎日大変なのですよ。これからお話する事もその一部ってところかしら。」
クラウドは肩の力を抜いた。
逆にフィリアは深呼吸をして、姿勢を正してから語りだした。
「クラウド様。この国を私が継ぐ事が決まって、私の生活全てがガラリと変わりました。」
クラウドは静かにコクンと頷いた。〝そうだろうな…。〟と共感したからだ。
「それはある程度覚悟した事でもあるので、頑張って努力するのみなのですが、」
「……………?」
フィリアは少し話にくそうにした。
そして意を決するかのようにもう一度深呼吸をして
「クラウド様、私と婚約して下さいませんか?」
と言った。
「─────えっつ!?」
クラウドは驚いた。聞き間違い…か?固まっていたクラウドに更にフィリアは言葉を重ねる。
「だから、私と婚約して下さいませんか?」
「え──────────っつ!???!」
クラウドはこれでもかって言う位に大声を出して驚いた。どこをどうしてそうなるのかがわからないのもあったのだ。フィリアをよく見てみると、顔を真っ赤にしながら、
「そっ、そんなに驚かないで下さい。びっくりしますわ。」
「いえいえいえ。驚いたのはこっちですよ?え。急にどうしたんですか!?」
クラウドはこれもきっと何かの作戦なのだろうと思って聞いた。
「正確には、婚約者のふりをお願いしたいんです。」
「ふり…。」
「ええ、先ほども申し上げたように私を取り巻く環境がガラリと変わりまして、今まで見向きもされなかった男性からのアプローチも凄いことになりまして……………。」
「あ、ああ……………。僕にも同じような経験がありますから、わかります。だから偽の婚約者をと考えられたわけですね。」
「はい、その通りです。」
それを聞いて安心したクラウド。
「で、いつまでふりをすれば良いのでしょうか?」
「引き受けて下さいますの?」
「ええ。ここまでくれば自然な流れでそうなったと思ってくれるでしょうね。きっと…。」
「そうなんです。その部分もあって、お願いするならクラウド様しかいないと。適当な時期が来れば婚約破棄ということにしたいと思っております。」
「僕は男性ですから名誉は特に傷付きませんが、王女はそういうわけにはいかないと思うのですが…。」
そう、婚約破棄でも離婚でも、同じ状況であっても男性には一切名誉は傷付かないが、女性は〝一度捨てられた者〟という形で名誉が傷付くのであった。それを冒してまでもすることにクラウドは疑問を抱いた。
フィリアはお茶をお代わりしながら
「かまいません。私は今は誰とも婚約したくないのです。でも、この立場になった以上は周りから婚約を持ち掛けられて、誰を選んでもあまり良い対策にはならなさそうで…。それに私自身、殿方とはあまり…。」
〝それもそうか、ついこの前までろくすっぼ社交界に出ていなかった人だ。〟
「わかりました。そこまで覚悟なさってるのでしたら、僕はあなたに従いますよ。あなたの国が安定すれば僕らの国も安定しますからね。それに乗りかかった舟だしね。」
そう言ってクラウドはニッコリとほほ笑んだ。
「引き受けて下さってありがとうございます!クラウド様!」
フィリアはクラウドの手を握ってとびきりの笑顔を見せた。
クラウドは一瞬、ドキッとした。
〝フィリア王女は本当に掴めない人だ…。大人しくて頼りないかと思ったら時々大胆になる。これはとんでもない人を相手にしてるのではないか?!〟
と思った。
ご覧下さりありがとうございます。フィリアは自分に自信を持つことでどんどん本来の自分になっていき、王としての素質を表してきました。クラウドは彼女に翻弄されてしまうのでしょうか?
次回もお楽しみに!




