第66話:クラウド、ハンダル王国へ到着!クラウドを取り巻く周りの思惑…。
チュンチュンチュン…
山の朝は早い
それだけ鳥たちが沢山いるということだろう。
クラウドはゆっくりと目を開けた。
〝そうだ、昨夜は野宿をしたんだった。しっかり眠ってたな。これもルルドのお陰だな。〟
クラウドが寝ていた場所は決して落ち着いて寝られるような場所でもなかった。が、疲労とルルドの言葉のお陰で安心しきったのだろ。そんなクラウドにルルドは気付いて、
「お目覚めになられましたか?クラウド様。」
「ああ。君は少しは眠れたのかい?ルルド。」
目覚めたての目をこすりながら周りを見回して朝の準備が整っている事に気付いたクラウドはルルドがちゃんと眠れたのか心配になった。騎士の場合、ゆっくり熟睡っていうわけにはいかず、例え寝ていても周りへの気配やらに気を配らないといけない。それでも目をつぶらずに起きて気を張っているのとはまた違うのだ。こういう部分はクラウドはまだ訓練中なのだ。
「ご心配に及びません。眠れる時にちゃんと眠っておりますゆえ。さあ、ささやかですが朝食の準備をしております。お召し上がりください。」
ルルドはそう答えた。クラウドも聞くだけ無駄なことだと改めて思った。本来は自分もルルドのように、交代で寝ずの番をすべきだったのだろう。しかし昨夜は心の重荷がとれたせいか、深く眠ってしまったのだ。
「うん、ルルド、昨夜はすまない、君一人に任せてしまって…。」
「何をおっしゃいます。先程も言いましたが、眠れる時はちゃんと寝ておりますゆえ。慣れておりますよ、私は。」
「ははっ、そうだな。ありがとう。」
そう言ってクラウドはルルドが用意した食事の場のテーブルに着いた。
「わお!おいしそうだ!へぇ、ルルドって案外器用なんだね、〝ささやか〟なんて言うから〝目玉焼き〟だけかと思ったよ。」
「ちゃんとベーコンもウィンナーも準備しておりますよ、野菜もこの山で取れた新鮮なものですからきっとおいしいと思います。」
「ん?ちゃんと食べれるやつを見分けられるのか?」
クラウドは驚いた。確かに騎士になる為の訓練の一環でそういう事もするが…。
「はい、騎士見習いの時に学びますが、私は元々この山の麓で育ちましたので、ここのことは多分誰よりもよく知っております。」
「え~~~~~~~っ!そうなの?なんだ、だから昨夜もすごく安心しきっていたんだね。」
驚くクラウドにルルドは言った。
「さあ、冷めないうちに召し上がってください。そしてハンダル王国へ今夜までに戻られるのでしょう?」
────────そう
クラウドがハンダル王国へ戻るのを急ぐには理由があった。
途中でポルモアの人間に会うと〝聖剣の儀〟について聞かれるからだ。だからシタレン領で大伯父様を頼らなかったのだ。もしかしたら既にご存知だったのかもしれない…。と思うと余計に会うのが気まずかったからだ。
「ルルドは食べたの?」
「はい、クラウド様がお目覚めの前に頂きました。先に頂きまして申し訳ございません。」
「ああ、それは気にしないから、これからもそうしてくれ。」
「承知しました。」
そして二人は野宿のあとを片付けてハンダル王国に向けて出発した。
馬が疲れてしまわないようにゆっくりと進み、途中で休憩を挟んでは進むを繰り返しながらようやくハンダル王国のアテリア伯爵家に到着した。予定よりも早く到着したのでまだ陽が沈む前だった。
「これはこれは…!クラウド様、ようこそ、お帰り下さいました。早くのご帰還ありがとうございます!」
クラウドが戻ったと聞き、アテリア伯爵家当主のポンドが馬屋まで慌てて飛び出してきた。
「ああ、アテリア伯爵。只今戻りました。今しばらくお世話になります。」
そうクラウドは挨拶をしてお辞儀をした。
「これだけお早いお戻りでしたらご実家ではゆっくりと出来なかったのではございませんか?」
アテリア伯爵はオロオロしていた。
「いえ、これは僕の意思ですので。それから大方目途が付いてきましたので側近として連れて来ておりましたルドルフはアルクレゼに置いてきましたので護衛騎士のルルドと二人でお世話になります。」
「そうでしたか。どうぞ、ご存分に、我が家だと思ってお使い下さいませ。」
「ありがとうございます。」
クラウド達は話をしながら邸に戻ってきた。
「早速、お食事になさいますか?一度休憩なさりますか?」
「そうですね、部屋に行って、風呂に入って落ち着いてから食事に伺います。」
「わかりました。ぜひそうなさってください。それではまた後程お待ちしております。」
アテリア伯爵がお辞儀をしてクラウド達を見送った。食事をしたり、伯爵が執務をこなす部屋のある階とクラウド達が使っている階が違うためだ。
アテリア伯爵はクラウド達と別れてから執務室に戻り、秘書に王宮にいる姪のフィリア王女宛に早急に手紙を送らせた。
そう、クラウドが戻って来たという知らせだった。
実はフィリアが元気がないと母のキャロル(アテリア伯の妹)を通じて連絡があったからだ。キャロルはフィリアはクラウドを気にいっていると見抜いており、兄であるアテリア伯爵へもその話をしていたのだった。戻ったらすぐに連絡を、と。
〝フィリアよ、喜ぶがよい、クラウド様が戻ってきたぞ。〟
アテリア伯爵にとってもクラウドはとてもスマートな対応をする好青年なので彼が邸にいる事は大歓迎なのだ。邸で働く人間に対して貴族特融の偉そうにするような人ではなく、逆に皆を気遣うほどだ。娘がいれば喉から手が出る程欲しくなる。伯爵は内心では姪のフィリアとうまくまとまればよいと思っていた。
鈍感なクラウドは手厚いもてなしにいつも感動していたのだった。
◆ ◆ ◆
ここ、王城で
アテリア伯爵からの手紙を受け取ったフィリアは大喜び!傍で一緒に教育を受けていたアリアナス兄さまも驚いた程だ。
「なあ、フィリア。それって例の協力者のことか?そいつが去ってからお前、誰が見ても落ち込んでたよな。」
「まあ、アリアナスお兄様。そんな風に思ってらしたの?ちょっと疲れてただけですわよ?」
「そういう事にしておいてやるが……………。まあ、あいつなら、お前とギリギリ格が釣り合うって感じか。ふぅ……………。」
〝ドキッツ‼ 〟
「なんてことを言うのよ、お兄様ったら!そんな事を言われたら変に意識してしまうじゃないですか?!」
フィリアは精一杯の反論をした。
が、相手はフィリアよりも何倍も〝学がたつ〟のだ。
「お前、自分で気付いてないのか?アイツが来たらいつも顔が緩んでるぞ?バレバレだって!」
「も…、もうお部屋に戻りますっ!」
フィリアは顔を真っ赤にして部屋を出た。
「あ…王太女様っ!」
教育係は慌てて止めようとしたがフィリアの逃げ足は速かった。
「アハハ!逃げるのって認めるってことなんだけどなぁ~!フィリアはわかりやすいよ。だから私が補佐してあげないと危なっかしい。先生、悪かったね。今日はお終いにしてまた次、授業を頼むよ。」
「はい、王子様!失礼します。」
一人教室に残るアリアナス。
「ふぅ~~~ん、一人だとこの部屋ってこんなに静かだったんだな。ふっ、今までだって一人だったのに、今の環境に慣れて来たってことかな。ま、悪くない感じだね。」
と、ひとりで呟いていた。
ご覧下さりありがとうございます。みな、それぞれ思うことがあって、それが叶うようにと努力します。クラウドはこの先、どうするのでしょうか?
次回もお楽しみに!




