第65話:希望に満ちた決意!そして護衛騎士ルルドと共にハンダル王国へと戻る時、真実を打ち明ける!
ラナベルのお陰で元気になったクラウドは父母の元に戻り、派遣先のハンダル王国へすぐに向かうことを宣言した。
ルクセブルもアレクサンドラも二人そろって目を丸くしていた。
それはきっとクラウドが悩んで沈んでいるのではないか、と心配していたからだ。だから、その言葉を聞いても無理をしているんだろうと思ってクラウドに尋ねる。
「そんなに慌てて戻らなくても大丈夫なのよ?もっとゆっくりとしたら?」
母アレクサンドラは心配してそう言うが、クラウドは首を静かに横に振り、
「母上、すみません。もう決めました。僕は僕の思うように生きていきます!それが何なのか、まだわかりませんが、とりあえず、目の前の任務を必死にこなしながら考えてみます!」
そう語ったクラウドの瞳には一瞬の迷いもなかった。それを見てアレクサンドラはもう何も言わなかった。
「わかったわ、どうか無事でいてね。」
アレクサンドラのクラウドを抱き寄せる腕に力が入る。そんな母の愛を全身で感じながら、クラウドは返事をする。
「はい、母上。」
そんな二人のやり取りを見てルクセブルは呟く。
「あと何年だ?3年…か、長いな……………。」
「父上、またハンダル王国を訪ねていらしたらぜひとも会いに来て下さいますか?」
「ああ、必ず行くとも。」
そう言って、ルクセブルもクラウドを抱きしめた。そしてアレクサンドラは静かにクラウドに言う。
「クラウド…、あの子たちには会っていかないの?」
---あの子たちとはクラウドの弟妹のことだ。あれだけ慕っているのだ。きっと会いたいだろ。しかし、逆に言うとそれだけ離れがたくなるのは目に見えている。
「ええ、きっと会うと迷いが生じてしまいます。だから会わずに行きます。それにあと3年経てば任期も来るので戻ってくるつもりですし…。その時までにもっと強くなっていて欲しいとだけ、お伝えください。」
アレクサンドラはコクンと頷いて
「わかったわ。」
そうして護衛騎士と今度は二人で出発をした。今回何故側近としてルドルフを同行させなかったかと言うと、クラウドの話から既に医療充実のためのベースが整っているのであとは見届けるだけだから自分だけでやり遂げたいから必要ないと言われたからだ。
二人を見送ったルクセブルとアレクサンドラは、もう二人の姿が見えないにも関わらずいつまでも見続けていた。
「アレン…、私たちの息子、クラウドはどんどん立派になっていくな。」
「そうね、ルク…。とても誇らしいことなんだけど、どうしてでしょうね、とても寂しいわ。」
「ああ、私もだよ。」
ルクセブルがアレクサンドラの肩をそっと抱きしめた。そんな時、剣術の稽古が済んだのだろう、フランとアランの大きな声が聞こえてきた。どうやらクラウドが既に出発したことに対して我儘を言っているのだろう。
「ふふ。私たちはまだまだゆっくり出来る時がなさそうですわね、」
「ああ、そのようだ。さあ、彼らの元に行こうか。ちゃんと納得させないと、だな。」
ルクセブルが笑いながらそう言った。子供だけれどああ見えて手ごわいのだ。が、そこにアレクサンドラは意味深な言葉を発した。
「あら、彼らだけではありませんよ?お義父さまと、お義母さまのこと、お忘れですか?」
ルクセブルの方を見てそう言った。
「あ─────っつ!忘れてた!ヤバイ、彼らは本当にヤバイ!アレン、そっちは君から頼むよ。」
「何をおっしゃってますの?当主様?ふふっ。」
〝あれは私に丸投げする気だ…、〟
どうやら今でもルクセブルはアレクサンドラには弱いようだ。
◆ ◆ ◆
ハンダル王国へ戻る時、今度はシタレン公爵邸には泊まらない事を護衛騎士にも説明した。
「僕ら二人だからね。どこかで野宿でもしよう!」
「わかりました。シタレン領でしたら夜盗も出ず、安心して野宿出来ます。準備しましょう。」
「ありがとう、ルルド。」
そうしてクラウドとルルドの二人でシタレン領のシダレ山麓で野宿する事にした。
〝そう言えば…、こうして野宿するなんて正直、初めてなんだよね。もう少しあとの日程だったらきっと寒いだろうが、今の次期ならまだこの格好でも充分一晩過ごせるな。〟
クラウドはそう思いながら夜空を静かに見上げていた。
護衛騎士のルルドは傍に座り、ひたすら黙って火を扱っていた。
クラウドはルルドの方を見て考えていた。
〝僕の聖剣の宝飾の件も、跡継ぎ問題もまだ誰も知らない。僕の身を身体を張って守ってくれるルルドには本当の事を話した方がいいんじゃないかな…、それで僕の元を去るならそれでもいいか…。〟
ルルドのくべた火が〝パチパチ〟と時折鳴った。その音はこの静かな空間にとても心地よく響いていた。
「ルルド…、大事な話があるんだけど、聞いてくれるか?」
クラウドは意を決してルルドに話かけた。
「はい?お話…、ですかご主人様。私でよろしければお伺い致します。」
ルルドは何も疑うことなくクラウドの言葉に耳を預ける…。
「うん、今日の朝、君も聞いていたと思うけど、僕の〝聖剣の儀〟が行われたんだ。」
「はい、改めて聖剣の持ち主となられましたこと、お祝い申し上げます。」
「ありがと。だけど、だけど…。僕の聖剣はこのように宝飾が黄色だったんだ。」
クラウドは自身の聖剣をルルドに見せた。
「…?それがどうかなさったのですか?」
「うん、アルクレゼを継ぐ者はこの宝飾が〝青〟なんだって。アランの宝飾は青なんだって。」
「…と、いうことは…。」
ルルドは言葉を必死で探そうとしていた。くべていた火がパチパチと鳴っている。時折ボッと大きな音を鳴らしながらまるで舞うかのように大きな火が揺らめいていた。
「うん、僕はアルクレゼを継がない。後継者ではないんだよ。」
「そうなんですね。それはお辛かったでしょう…。」
「ありがとう、それで僕がこの話を君にしたのは、君は僕の護衛だけど、もう後継者ではないから僕の為に身体を張ってまで守らなくてもいいよって話がしたかったんだ…。」
「クラウド様っ!何をおっしゃるのですか?!例え貴方様が後継者でなくなろうと、私は貴方様を尊敬しているからこそ、護衛騎士になったんです!二度とそのような事をおっしゃらないで下さい!」
クラウドはルルドの反応が想像とは違い過ぎて驚いていた。
「わ…、わかった。…ありがとう。」
クラウドからその言葉が出た時、ルルドは誇らしげにほほ笑んだ。
〝僕だから守りたいって言ってくれたルルド。僕はそんな君をしっかりと守れるようになりたいよ。〟
クラウドはルルドの温かい言葉に励まされ、その夜は野宿だというのにグッスリと眠った。
風がそよそよ吹いていた。
もうすぐ夏がやってくる……………。
ご覧下さりありがとうございます。クラウドは真面目な性格なので護衛騎士のルルドに後継者の資格がないことを伝えました。ルルドは資格がある、なしに関係なくクラウドを尊敬していると言い、クラウドはそんなルルドを守れるような主人になろうと思いました。
次回もお楽しみに!




