第6話:クラウドお兄ちゃんになる
とうとう赤ちゃんが産まれる日がやって来た!
食後に急にお腹が痛くなり、あれよあれよとその間隔が狭くなってきた。
「それは大変!2人目からは早く産まれるから今の間に移動しましょう。」
義母ラモニアの提案により、早めに移動していたために 今回は痛みの合間に移動には至らなかった。
お産のための部屋に入ったアレクサンドラ。
心配そうにするクラウド。と、ルクセブル。
「大丈夫だよ。きっと元気に産まれてくるから。」
クラウドにそう言ったルクセブル。
「おとうさまこそ、だいじょうぶですか?」
逆にクラウドに心配される。
よく見ると服のボタンが掛け違えていた。
出勤する為に着替えかけていたからだ。
「ハ……、ハハハッ。」
息子に恥ずかしい姿をさらけたルクセブル。
「これはクラウドに1本取られたな、ルクセブルよ。」
グラナスがそう言いながらやってきた。
「おじいさまっ!」
グラナスに飛びつくクラウド。
その様子からはクラウドは祖父にも可愛がられてきたことが伺える。
グラナスは朝の訓練場へ行っていたのだった。
「クラウド、赤ちゃんに会えるまでまだ少しかかるから、座って待とうか。」
「はいっ、おじいさま!」
ルクセブルは父グラナスに羨ましそうに視線を送った。
グラナスはそれに気付いてもっとクラウドを甘やかせた。
そうこうしているうちに中から赤ちゃんの鳴き声が聞こえてきた!
「ほぎゃぁ~~~!」
〝ん?なんだか か弱い鳴き方だな。やはり女の子は鳴き方からして違うのかな。〟
ルクセブルはそう思いながら扉が開くのを待った。
〝バ──────────ン!〟
扉が開いた
そんなに勢いよく開いたわけではないが、待ち望んでいたルクセブルとグラナス、そしてクラウドにとってはそれくらい扉が開いた瞬間が待ち遠しかったのだ。
「おめでとうございます!お嬢様のご誕生でございます!」
侍女のその声を聞いて安堵しつつ、喜びのあまりに歓喜の声ををあげる3人。全くよく似ているのであった。
そして恐る恐る部屋の中へと入る。
「ルク…?」
アレクサンドラの声がした。
「ああ。アレン。大丈夫かい?」
「ええ。私頑張ったわ。ご覧になって。可愛い女の子よ。」
お産の後の疲労感がまだ少し残っていた。
「ああ、子供は父とクラウドが今見ているよ。それよりも君はまだ顔色が戻ってないね。」
「ふふ、わかったの?あのあと早かったでしょ?2人目って早いんですって。驚いたわ。あんなにも違うなんて………!!」
「まだ横になってなさい。子供の事は心配ないから。」
「そうね。お義母様もついてらっしゃるもの。安心ね。私は幸せ者だわ。」
アレクサンドラとルクセブルが話をしていたが、自分の事が話題に出てきたラモニアは
「まあ、嬉しいわ。アレクサンドラ。もっと頼ってくれてもいいのよ。」
「ありがとうございます。お義母様。」
そしてグラナスが赤子を抱っこしてやってきた。
クラウドがまだ赤ちゃんだった頃も、良くこうしてグラナスは抱っこしてくれたから抱っこの手つきもお手の物だった。
「さあ、アレクサンドラ。あなた達の娘だよ。」
アレクサンドラはニッコリ笑って
「ルク…、あなたも抱っこしてあげて?」
そう言うとグラナスはルクセブルにそっと赤子を抱かせた。
「クラウドの時とはまた違う…。こんなにふにゃふにゃなのか…!」
「ふふ。あなたがまた一段と父親の顔になったわね。クラウド、今日からお兄ちゃまね。」
「はい、お母さま!僕がこの子を守りますね!」
「おや?クラウド。私が守るんだが?」
グラナスはわざとそう言った。
「お爺様!その役目は僕に与えて下さい!お願いします。」
7歳とは思えないほどクラウドはしっかりして祖父にお辞儀をしてお願いした。
そんな真面目なクラウドを見て〝ヤラレタ…〟と、心の中で悶絶しているグラナス、しかし表情には一切出さずに、
「わかった。しっかり妹を守りなさい。」
と、クラウドに責任を持たせた。
祖父グラナスの言葉にクラウドはみるみる明るい顔になり、
「ありがとうございます!お爺様!」
大はしゃぎだ!
こうしてアルクレゼ侯爵家にまた一人家族が増えた。
ご覧下さりありがとうございます。
出産はいつもハラハラドキドキします。男性陣が部屋の前でオロオロしている様を想像して頂けると嬉しいです。
また次回をお楽しみに!