第55話:無知で浅はかな者が行った行動に対する代償は大きかった
第三王子のアリアナスが第二王女のフィリアに付いたという話は王城ですぐさま広がった。また、城下にも広まり、そのお陰で国民の支持はフィリアにより一層傾いていった。
もちろん、それが面白くないのは残った三人の王子と王女だった。今までろくに社交界にも出たことのないフィリアが突然支持されたからだ。
第一王子イシスと第二王子カイアスは密かに私兵を率いて医師団を襲おうと計画した。
「よし、今だ!あの診療所を壊し、医師を誘拐して他国へと売り飛ばしてやれ!」
「はっ!」
「突撃────っつ!」
──────────バン!!!
診療所のドアを乱暴に開けて突き進んできた兵士たち。もちろん、中にいた医者や患者たちは驚き
「な…何者だっつ!?」
医者は看護師たちは患者を守ろうとした。
そんな彼らに容赦なく兵士たちは告げた。
「大人しくしろ!さすれば命だけは助けてやる!」
そう言われたが兵士たちの持っている銃を見て患者の一人が恐怖を抱き震えていた。その時、診療所の外から声がした。
「うわ────っ!!助けてくれっつ!!!」
現れたのはアルクレゼ侯爵家率いる護衛軍だった。
護衛軍の指揮をしていたのはルルドの部下であるラミットだった。
「間に合った!すぐそばで待機していてよかったです。先生、お怪我はないですか?」
「ああ、ありがとう…、奴らがいきなり現れて危うく命を脅かされるところだった…。」
そして護衛軍はあっと言う間に私兵たちを捕らえていった。
その報告はすぐさま団長であるクラウドに伝えられ、すぐさまクラウドはその場に駆け付けた。
「これは…、誰の仕業ですか?国際問題になるとおわかりの上での事ですよね?」
クラウドは私兵の頭領に尋ねた。
「し…、知らねえ。」
「……、手荒な真似はしたくはないのですが、仕方ありませんね。」
クラウドが低く重い圧がかかった口調でそう言った。
「?!…なにをする気だ?」
「これは魔物たちが大切にしていた物を借りた〝真実を見る鏡〟なのです。どんな嘘も見抜きます。正直にお話下されば罰はあなた方だけで済みましょう。ですが、隠し通すのなら、あなた方のご家族にも罰を受けて頂くことになります。もちろん、この鏡でご家族の居場所もわかりますので…。さあ、どうしますか?」
クラウドの話を聞いて、頭領は諦めて全てを自白した。
「わかりました。あなた方のご家族には手を出さないようにしましょう。では、今から王城へ一緒に参りましょうか。」
クラウドはニッコリと笑ってそう告げた。
まず、フィリアに会い、〝国王への面会〟を取り付けてもらった。
「お父様が会って下さると言いました。さあ、こちらへ。」
そう言ってフィリアはクラウドの後ろにいる者たちに気付き、「この方たちは?」と尋ねたが、クラウドはニッコリと笑うだけだった。そしてフィリアに告げた。
「フィリア様はお部屋でお待ち下さい。」
それからクラウドは大勢を連れて国王の待つ謁見の間へと向かった。
「陛下、お時間を頂きましてありがとうございます。ポルモア王国アルクレゼ侯爵家のクラウドと申します。医療使節団の団長をしております。」
そう挨拶をして深くお辞儀をした。他の者たちはその場に膝をついて頭を下げて座っている。私兵たちはその場に座らされて同じく頭を下げていた。
「おお、そなたが…。医療使節団の話はよく聞いておる。かなり充実してきたと聞いておるぞ?して、何か問題でもあったのか?その後ろにいる者たちはどうしたのだ?」
「はい、この者たちはその〝医療施設〟を襲った者たちでございます。そしてそれを指示したのが、第一王子イシス様と第二王子カイアス様だと、この者たちから自白を受けました。これは大問題ですので、内密に陛下に面会をお願いした所存です。この内容はフィリア王女様にもお話しておりません。」
「な!なんと…‼我が王子達が襲撃を企て実施しただと?!」
国王は驚いた。上二人の王子達は確かに争いごとを好んで問題ばかり起こすが、このような騒動を起こすとまでは思っていなかったようだ。しかも国際問題になり兼ねないのだ。
「残念ですが…。」
クラウドは容赦なく返事をした。
「それはその者たちの証言のみであるのだから、証拠はないのだろ?」
「陛下…。場合によっては我が国王にも報告が参ります。国際問題に発展します。どうか、慎重になさって下さい。」
クラウドは国王が自分が年端もいかないから何とか誤魔化して丸め込もうとしているのだと察し、逆に国王を諭すことにした。
「そなたはどうしろと?」
自分の思惑通りに進まない目の前の相手に動揺しだす国王…。それでもお構いなしに淡々と言葉を口にするクラウド。
「王子様お二方に王位継承権の永久剥奪を希望します。そして私兵を含む指示及び指揮権の剥奪も共に。」
「それは内政に踏み込み過ぎではないか?!」
国王が声を荒げた。〝王位継承権剥奪〟や〝指示や指揮権〟は他国が口出しする問題ではないからだ。
「陛下、継承権がこのまあるのでしたら、また同じ事が繰り返される可能性があります。ましてや、お二方は好戦者だと聞いております。私は今回の件で王子二人に対しての信頼を無くしました。そのような方との将来は見えません。私が我が陛下に報告すればきっと陛下もそのように答えるでしょう。さすれば陛下は国交断絶を指示されるかもしれません。最悪の場合、今回の件で戦争に繋がるかもしれません。」
クラウドは冷静に今後について、そして現状について国王に話した。
「ふぅむ…。考えよう、証拠があればそのようにしよう。」
まだ国王の中では王子二人に情けを持っていた。
「では、王子様方にこちらの〝魔物たちの真実を見る鏡〟を当てご覧になって下さい。全て映し出されます。」
「よし、王子二人をこちらへ呼べ。」
「ハッ。」
国王の側近が返事をして部下に指示を出し、間もなくして王子たちがやってきた。
ふたりは頭領の顔を見て顔色を変えた。その瞬間をクラウドは見逃さなかった。そして、国王も見逃さなかったのだ。
「そうか…。これを使うまでもなかったようだな。我が息子ながらに残念だ。もうよい、お前たち二人にはあの者たちを知っていると見た!お前たちの行いは全て知っている。ついてはお前たちには王位継承権を剥奪し、いかなる場合であっても、全ての兵たちへの指示権そして指揮権をも剥奪することとなった!よいな?!」
「な、なぜですか?陛下!」
二人の王子は国王に駆け寄って問う。
「お前たちはこの者たちを知っているようだな。私を欺こうとしても無駄だ!全て知ってるといったであろう?!」
「しかし…!ただ…脅すだけでした!それも未遂に終わったことです!それなのにっ!この処罰は重すぎます‼」
「何を申すか?!どこからこの医師団が派遣されたと思っておる?!隣国ぞ?!ポルモア王国からの派遣であるのだぞ?!そちらはそれが何を意味するかわかっておるのか?!ポルモア王国と戦争を始める気であったのかっつ!!!」
二人の王子たちは顔がどんどん青ざめていった。そこまで深く考えていなかったのであろう。それだけこの王子達は無知で次の冠を頂くには相応しくないと自ら証明したのであった。
ご覧下さりありがとうございます。
今回、無知で浅はかな王子二人が見事失脚していきました。それにより、王位争いはフィリアとティアリアの王女二人の争いとなります。
今後の展開もお楽しみに!




