第53話:第一王女、ティアリアの思惑。膨れ上がるフィリアへの対抗心!
ここはお城の中。王妃宮の隣には側妃宮があり、成人した王子や王女たちはそれぞれの離宮に住んでいる。
王位継承権を持つ5人にはそれぞれ側妃宮に比べると少し小さいが、それでも一つの宮殿だ。
国民は貧しい暮らしをしているのに比べるとその離宮でさえ立派な一つの城なのだ。
特に長男、長女にはその離宮の中でも広い建物が与えられている。宮の大きさで使用人たちの人数にも多少増減がある。
クラウドとフィリアが予測していた通り、フィリアの姉ティアリア王女がクラウドの事を調べさせていた。
その報告を受け取ったティアリアは報告書を持つ手がブルブルと震えながら言った。
「隣国ポルモアの人間?しかも侯爵家…、アルクレゼというと剣で有名な家門じゃない。そんな人間がどうしてフィリアと一緒に行動しているの?!」
「それが…、まだそこまでは掴めていないようでして…。」
報告者のその言葉に一気にカッとなるティアリア。
「ハッ!役に立たないわね!名前だけだなんて‼すぐに何をしているのか、もっと詳しく調べてきなさい!」
ティアリアは苛立っていた。それは今まで内気で人の顔色しか見てこなかった腹違いの妹が王位を狙って行動を起こしたからだ。
〝フィリアのことだから何も見つけられずオロオロするだけで王位争奪戦から離脱すると思っていたのに…。〟
自分が思っていたのと違う行動を示したことに苛立っていた。
「お兄様たちなんてライバルでも何でもないわ。あんな脳筋バカなんて…!それよりもこれからはフィリアを注視しなくちゃならないなんて…‼」
見下して馬鹿にしていたフィリアが一番のライバルになるなんて思ってもいなかったティアリアは唇をキュッと噛み、
「明日からもっと私財を投入して頂戴!足りなければお母様の実家の公爵家からも協力を得るのよ!?国民からの評判は私が頂くわ!選挙が終わるまでの間だけ今の倍投入して頂戴!終わったら教会に少し寄付して全部依頼するわ。今だけよ。選挙が済むまでね。」
そう言って侍女たちに明日からの予定を告げて準備させた。
〝公爵家出身の第一側妃の娘の私があんな伯爵家出身の第三側妃の娘になんて負けるわけにいかないわ!〟
ティアリアは見た目に対して性格は真逆のようだった。-------そう、華やかで美しく、センスもよい。いかに自分を綺麗に見せるかに努力してきただけあって、外面だけはいいのだ。だから誰もがこの裏の顔を想像すら出来ない、侍女たちだけが知っており、給金が高い分、守秘義務が敷かれている。
まだ苛立ちが治まらないティアリアは侍女たちに向かって告げた。
「気分転換にドレスを新調するわ!ミセスマリアナを呼んで頂戴!」
「はいっ、王女様」
こうして苛立つティアリアはそのたびにドレスやアクセサリーを新調して無駄遣いをするのだった。
◆ ◆ ◆
ティアリア王女の離宮は華やかである反面、フィリア王女の離宮は質素である。庭園に植えられた花々もティアリアに比べるとその華やかさはない。が、どこか安らぎを感じるような庭園だった。
クラウドは今日も報告の為にフィリア王女と会っていた。王女の部屋は女性にしては珍しく〝かわいらしいもの〟が少ない。どちらかというと機能的?な感じなのだ。その証拠に
「王女、毎回こんなに豪勢にお茶菓子を準備して頂かなくても…。」
と言った具合なのだ。しかもクラウドが席に着いた途端に出て来る程の徹底ぶりだ。
「あら、クラウド様。それは気になさらないで。私の侍女たちがあなた様に腕を奮いたいだけですのよ。」
「はぁ…。」
「ところで、クラウド様。我が国の若者たちの体験状態はどんな感じでしょうか。」
クラウドは手に持っていたフィナンシェを取り皿に置いて(遠慮したわりにはしっかりと食べていた)
「そうですね、やはり個人差がかなりありましたので、グループ分けをして、そのグループ単位でスケジュールを作りました。早い者たちのグループでは来週あたりから外での実践にはいりますよ。」
「そうですか。それは頼もしいですね。ふふ。」
「………………?ふふ?」
クラウドはなぜそこでフィリアがほほ笑んだのかわからなかった。
フィリアはクラウドが、遠慮しつつもしっかりと食べていることに気付いて、嬉しく思ったのだった。
◆ ◆ ◆
数日後、ティアリア王女の元にその後の調査報告が届く。
「なんですって?!医療使節団?!!」
報告書を見てティアリアは驚き、思わず大声を出してしまった。
ティアリアは内気なフィリアのことだから大がかりな事はどうせ出来ないだろうと思っていたのだ。ところが「使節団」まで派遣させるということは国を挙げてのプロジェクトなのだろうか…。と苛立ちと不安が押し寄せてきた。
「これは…、隣国が王位継承争いに加担したことになるのでは?」
そう思ったティアリア王女はすぐさま国王に連絡を取って面会の許可をもらった。
「お父様‼」
父王の執務室に入るなり、物凄い勢いで攻めよった。そう、ティアリア王女はフィリア王女よりも父王には好まれていたのだった。それはティアリア王女自身がよく気付いていた。
「そんなに大声を出さなくても聞こえておるぞ?で、どうした、急に。」
「そんな冷静になんていられるものですか!酷いじゃないですか?!王位争いに隣国を巻き込むなんて…‼」
「ふむ、そのことか。」
「そのことかって…‼ご存知でしたの?!」
ティアリア王女の怒りは収まらない。しかし父王は落ち着いた声でティアリアに言った。
「ティアリアよ、よくお聞き。この件に関しては私や国は隣国は関係ないのだよ。」
「どういう事ですか?!医療使節団は隣国のアルクレゼ侯爵家の者が団長として滞在してますよね?しかもかなりフィリアと親しげに…‼」
「確かに団長はその者であると私も聞いてはおるが、あれはフィリアとは契約を結んでおらず、フィリアの母方の実家との契約になっておる。力なき姪の為に実家が隣国に精一杯泣きついたのだろう。」
「ハッ!そんな手が通じますか?!それは明らかに〝逃げ〟の口実でしょう!?」
国王は黙ってティアリアを見た。
〝ティアリアは確かに頭の回転も速く、対外的にも受けがいい。しかし財政にはからきし興味もなく、無駄遣いばかりしおる。国の運営を任すには民への関心がなさすぎだ。自分の関心事以外はどうでもいいと考えるところがネックだな。〟
そう冷静にティアリアを分析していると、ティアリアが返事のない父王に苛立ちをぶつけてきた。
「お父様!何とかおっしゃって!」
「ティアリアよ、例えそのようであっても、対外的には〝そう〟なのだよ。だからこれは正当なフィリアの母方実家の支援なのだよ。お前も母の実家からの支援を受けているであろう?同じなのだよ。」
「…………っつ‼」
そう、あの配給品の出所を辿れば母と母の実家からなのだ。つまり、今回のフィリアと同じなのだ。
「それよりもティアリア。お前はもう少し寛大になりなさい。視野を広く持ち、もっと民に向けなさい。お前にはそれが足りぬ。」
「そんなの私が王位継承権を獲得するまでで充分ですわ。あとは私の周りがしますから。」
「それでもだよ、知っているのと知らないのとでは違うのだよ。」
「お父様はずっと私の味方をして下さると思ってましたのに…!」
いくら王が説得しても聞く耳を持たなかった。流石に王もその件に関しては譲れなかった。
〝それに気付けばティアリアのもの。気付かずに今のままであればティアリアの継承権はなくなるだろう…。〟
そう考えていた。
ご覧下さりありがとうございます。今回、第一王女ティアリアを中心にお話を進めました。この様子では幼い頃から自己中心的な我儘少女だったことが伺えます。フィリアが内気になったのも頷けます。
自分の興味のないことには一切感心を持ちません。兄二人と一緒によく授業をサボったようです。
今後の展開をお楽しみに!




